タフォニ

タフォニとは

タフォニ（Tafoni）とは、岩盤や岩塊の表面に形成される、独特な風化穴のことです。その形状は円形や楕円形を基本としますが、これらが拡大し、互いに連結することで複雑な形状を形成します。さらに、横に連なっていくと、棚状の大きな窪みとなることもあります。

タフォニが形成される場所

タフォニは、花崗岩、砂岩、凝灰岩、安山岩、礫岩、石灰岩など、様々な種類の岩石に形成されます。特に、砂漠などの乾燥地域や、海水の飛沫を受けやすい海岸地域でよく見られますが、内陸の山岳地域でも広く確認されています。

タフォニの形成メカニズム

タフォニの形成メカニズムは、一般的に、岩体内部から析出した塩類が、その結晶圧によって岩石の表層部を破壊することによるものと考えられています。そのため、海水の飛沫を常に受ける海岸付近では、タフォニが発生しやすくなります。山間部に見られるタフォニについては、過去の海進時に形成されたとする説、台風時に海塩が供給されているとする説、岩石中に含まれる黄鉄鉱が溶解し、石膏を析出することによる説などが提唱されています。

タフォニの語源

タフォニの語源は明確には分かっていませんが、古代ギリシア語で「墓碑」を意味する"Taphos"や、コルシカ語、シチリア語で「穴」を意味する"Taffoni"、「穴を開ける」という意味の"Tafonare"などが由来として考えられています。「タフォニ」という言葉が印刷物上で初めて使用されたのは1882年のことです。

タフォニがもたらす影響

急崖の表面に凹凸を形成するタフォニは、落石発生の重要な要因となることがあります。2002年には、和歌山県でタフォニが形成された急崖から約720トンもの岩塊が落下し、ロックシェッドを直撃するという事故が発生しました。また、インドのエローラ石窟群のカイラーサナータ石窟寺院や、マハーバリプラムの海岸寺院、アンコール遺跡のタ・プロームやバイヨンなどでは、タフォニの形成による深刻な損傷が見られます。一方、和歌山県東牟婁郡古座川町の高池の虫喰岩や、岡山県倉敷市下津井六口島の象岩は、タフォニの特異な景観を活かした景勝地として知られています。

ギャラリー

参考文献

池田碩 (2002), “インドの石造寺院に生じているTafoni風化と遺跡の破壊”, 奈良大学紀要 (奈良大学) (30): pp. 83-96, 2002年3月, ISSN 03892204, https://cir.nii.ac.jp/crid/1050582008179177856#article
西山 賢一; 横田 修一郎 (2010), “熊本県, 天草上島の古第三系砂岩に分布するタフォニの形状”, 応用地質 (一般社団法人 日本応用地質学会) 51 (3): pp. 122-129, 2010年8月10日, ISSN 02867737, https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204096226816#article
池田 碩 (2006), “カンボジア・アンコール石造寺院遺跡の風化破壊”, 奈良大学紀要 (奈良大学) (34): pp. 65-78, 2006年3月, ISSN 0389-2204, https://cir.nii.ac.jp/crid/1050019058225695744#article
内田 悦生 (2003), “[アンコール遺跡]における砂岩材の劣化現象”, 地質学雑誌 (The Geological Society of Japan) 109 (6): pp. XI-XII, 2003年, ISSN 0016-7630, https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282681215230592#article
西山 賢一; 横田 修一郎; 横山 勝三 (2004), “22.砂岩急崖におけるタフォニの成長と岩盤崩落(一般研究発表)(口頭発表)(2004年度春季研究発表会)”, 地形 (日本地形学連合) 25 (3), 2004年7月25日, ISSN 03891755, https://cir.nii.ac.jp/crid/1543105995156027904#article
坂田 聖二; 横田 修一郎 (2005), “島根県大田市の岩石海岸におけるタフォニの発達と岩盤崩落(27.応用地質学一般)”, 日本地質学会学術大会講演要旨 (日本地質学会) 112, 2005年9月10日, https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680510991360#article

関連項目

* 蜂の巣風化 ‐ 類似する風化の類型。

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