タレントゥム攻城戦 (紀元前209年)

第二次タレントゥム攻城戦：ローマによるタレントゥム奪還

第二次タレントゥム攻城戦は、第二次ポエニ戦争中の紀元前209年に発生しました。この戦いは、ローマが以前に裏切りによってカルタゴの手に落ちたタレントゥム（現在のターラント）を奪還した重要な戦いです。

背景：持久戦略と多方面作戦

クィントゥス・ファビウス・マクシムスが採用した持久戦略により、ハンニバルはローマ軍とその同盟国軍に対して決定的な勝利を得ることが困難になっていました。ハンニバルは占領地の維持のために小規模な戦闘を継続し、ローマ軍もまた、各地で軍事作戦を展開していました。紀元前212年のシュラクサイ包囲戦や紀元前211年のカプア包囲戦では、カルタゴ軍は十分な兵力を投入できず、敗北を喫しています。また、イベリア半島ではハスドルバルがスキピオ兄弟を破りましたが、若きスキピオ・アフリカヌスが登場し、新たな局面を迎えていました。

紀元前212年にハンニバルはタレントゥムを占領しましたが、港のローマ軍要塞を攻略できず、ローマ軍は海からの補給を維持していました。しかし、紀元前211年のカプア陥落後、カルタゴ艦隊がタレントゥムに移動し、ローマ艦隊の補給を阻止しようとしました。しかし、封鎖の長期化により、カルタゴ側も物資不足に陥り、封鎖を解いてタレントゥムを離れることになりました。

紀元前210年、ローマ元老院はタレントゥムを重視し、マルクス・オグリニウスとプブリウス・アクィリウスを派遣して大量の穀物を買い入れ、兵士と共にタレントゥム要塞に送り込みました。紀元前209年には、クィントゥス・フルウィウス・フラックスとクィントゥス・ファビウス・マクシムスが執政官に選出されました。ファビウスはハンニバルに対抗できる数少ないローマ軍人であり、5回目の執政官就任となりました。

ファビウスはタレントゥム奪還のため軍を組織し、南イタリア各地で陽動作戦を展開してカルタゴ軍を分散させる計画を立てました。マルケッルスに傭兵部隊を率いさせ、ブルティウムで軍事行動を起こさせ、マンドゥーリアを奪取させることで、タレントゥムとブリンディジ間の連絡を確保しました。

包囲戦：戦略と裏切り

ポリュビオスによれば、レギオンからタレントゥムまでは1,000スタディオン以上の距離があり、その間に港はほとんどありませんでした。そのため、シチリアやギリシャからの船はタレントゥムに寄港せざるを得ず、タレントゥムは貿易・商業の中心地として繁栄していました。ファビウスはこの戦略的重要性を認識し、タレントゥムの奪回を計画しました。

ハンニバルはマルケッルスとの戦闘のためカヌシウムに出撃し、その隙にファビウスはタレントゥムを海陸から攻撃する準備を進めました。この時、タレントゥムの防衛を担当していたブルジオ・フィリメノ率いる傭兵隊がローマ側に寝返ることを密かに決定しました。プルタルコスによれば、裏切ったのは司令官のカルタロであるとされています。

ローマ軍がタレントゥムを包囲する中、カルタゴ海軍のボミルカルが艦隊を率いて封鎖突破を試みましたが、封鎖は厳重であり、食料も不足したためタレントゥムを離れざるを得ませんでした。

包囲開始から6日後、ローマ軍は総攻撃を開始しました。陽動部隊が市の北西から攻撃を仕掛け、主力はフィリメノの兵士が守る城壁の東側から攻撃しました。ローマ軍は城壁と城門を制圧し、市内に突入しました。戦闘は短時間で終わり、カルタゴ軍の司令官カルタロも戦死しました。その後、市内は略奪されました。

ハンニバルはローマ軍の攻撃を警戒してタレントゥムに戻りましたが、既に街は陥落しており、ローマ兵が守備についていました。ハンニバルはメタポントゥムに撤退しました。

その後：街の荒廃とローマの勝利

カルタゴ軍兵士は全員殺害され、ローマに降伏した傭兵も殺されました。タレントゥムが保有していた艦船は全て沈められ、ファビウスはローマに戻り、凱旋式を実施する栄誉を受けました。

タレントゥムはその後も自治都市として存続しましたが、市民の多くは奴隷として売られました。ローマは多くの戦利品を得て、カルタゴはアプリアにおける実質的な支配権を失いました。第二次タレントゥム攻城戦は、ローマがイタリア半島におけるカルタゴの勢力を削ぎ、最終的な勝利に繋がる重要な一歩となりました。

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