ターミナルアダプタ

ターミナルアダプタ：通信回線と機器を繋ぐ変換装置

ターミナルアダプタ（TA、Terminal Adapter）は、通信回線と通信機器を接続するためのインタフェース変換装置です。一般的にはISDN回線に接続し、アナログ電話機やコンピュータなどを接続するための機器として広く知られていますが、実際にはATM回線とイーサネットの相互変換、SDH回線とシリアルインタフェースの変換など、多様な用途で使用されています。

ISDN時代の主役：家庭への普及とブロードバンド化

1990年代後半、インターネット接続手段としてダイヤルアップ接続が主流であった時代には、ISDN回線とアナログ機器を繋ぐターミナルアダプタは家庭でも広く普及しました。しかし、2000年代に入るとADSL、CATV、光ファイバーなどの高速ブロードバンド接続が一般化し、ISDN回線の利用が減少しました。これに伴い、家庭向けのターミナルアダプタの種類も減少し、現在では専門的な用途を除き、あまり見かけることはなくなっています。

ターミナルアダプタの主要機能

多くのターミナルアダプタは、商用電源（100V）を必要とします。これは、電話局からの給電（局給電）に対応していない機器が多いことに起因します。停電対策として、充電池を内蔵するモデルや、外部の無停電電源装置（UPS）を使用するモデルも存在します。局給電に対応する機器であっても、停電時の動作は接続機器によって制限される場合があるため注意が必要です。

ポートごとの機能

ターミナルアダプタは、複数のポートを備え、それぞれ異なる機能を提供します。

加入者線インターフェース: 電話回線に直接接続するためのインターフェースです。多くの機種は、DSU（デジタルサービスユニット）を内蔵し、加入者線の極性自動検出機能なども備えています。また、DSUを切り離してS点に接続することも可能です。アナログ加入者線とISDN基本速度インターフェースの自動判別機能を備え、アナログ回線接続時には内線交換機として動作する機種もあります。

S/T点インターフェース: ISDN機器を接続するためのインターフェースです。他のISDN機器（G4ファクシミリや他のTAなど）のS点、またはDSUのT点に接続できます。PBX（構内交換機）を使用する場合は、DSU側をT点、ISDN端末側をS点と呼びますが、PBXを使用しない場合は、便宜上S/T点と呼びます。

データポート: コンピュータなどを接続し、ISDN回線交換モードによるデータ通信を行います。シリアルポート、USB、イーサネットなどのインターフェースが提供されます。ルーター、スイッチングハブ、無線LANアクセスポイントなどの機能を内蔵する機種もあります。DチャネルやBチャネルでのISDNパケット通信が可能なものもあります。

アナログ電話ポート: アナログ電話機やG3ファクシミリを接続するためのポートです。複数ポートを備え、ブランチ接続（1つのポートに複数の電話端末接続）に対応する機種もあります。プッシュ式（DTMF）ダイヤルのみ対応の機種と、ダイヤル式（パルス）にも対応する機種があり、後者はダイヤル回線契約なしに黒電話を使用できます。ただし、現在NTTではダイヤル回線の新規契約は受け付けていません。

一部のターミナルアダプタには、内線電話交換機機能（外線・内線通信、保留、内線転送など）、iナンバー、ダイヤルイン電話番号割り当て機能なども搭載されています。さらに、留守番電話、ナンバーディスプレイ、ネームディスプレイ、PHS自営基地局などの機能が付加された機種もありました。

特殊なターミナルアダプタ

ピンク電話接続用ターミナルアダプタ: 硬貨収納機能を持つピンク電話をISDN回線に接続するためのターミナルアダプタです。NTTとの特殊契約が不要で、通話料金の倍率を任意設定できます。

ISDNターミナルアダプタ内蔵IP電話ゲートウェイ付きブロードバンドルーター: ヤマハが製造していた機種で、ブロードバンド接続の迂回としてISDNを使用する目的で使用されました。

* ターミナルアダプタ内蔵デジタル電話機: パソコン接続のためにRS-232CやPIAFS通信機能を備えたターミナルアダプタと電話機を一体化した製品です。

RVS-COM：高度な通信ソフトウェア

RVS-COMは、対応するターミナルアダプタと連携し、Bチャネル回線交換通信の生データをパソコンに送受信するWindows用通信ソフトウェアです。G4/G3ファクシミリ、電話回線モデムエミュレーション、音声通信、留守番電話、ファイル転送、コンピュータ遠隔操作など、幅広い機能を提供していました。インターネットを経由しないため安全なファイル転送や遠隔操作が可能でしたが、IP電話の普及により新規導入は減少しています。

まとめ

ターミナルアダプタは、通信回線の進化とともにその役割を変えながら、長年にわたって通信環境を支えてきました。ISDN回線の衰退とともに需要は減少傾向にあるものの、様々な機能を備えた製品が存在し、特殊な用途では依然として重要な役割を担っていると言えるでしょう。

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