ダエーワ

ダエーワ：ゾロアスター教における悪神

ダエーワ（daēva）は、ゾロアスター教の神話に登場する悪神の総称です。アヴェスター語で「輝ける者」を意味しますが、ゾロアスター教ではアンラ・マンユに仕える悪魔とされています。彼らは地獄で亡者を苦しめる役割を担い、様々な姿で描かれます。

デーヴァとの対比

ダエーワは、インドのサンスクリット語におけるデーヴァ（天部）と共通の語源を持ちます。しかし、インドではデーヴァが善神として崇拝される一方、イランではダエーワは「悪神」「悪魔」という正反対の意味を持つようになりました。この変化は、ザラスシュトラの宗教改革によってもたらされたと考えられています。古い時代の神々、特に戦士の役割を担っていたインドラやサウルウァなどがダエーワとされました。一方で、インドのアスラが敵対する存在となる以前から知られていた神ヴァルナは、イランではアフラ・マズダーに対応する存在となりました。

その他の地域への影響

「ダエーワ」という言葉は、スラヴ語にも借用され、古代教会スラヴ語で「divu（悪魔）」という意味になりました。しかし、ソグド語やアラム語の一部では、善性の存在として使われることもありました。

ヴェンディダードの7大魔王

ダエーワの中でも特に重要な存在として、ヴェンディダード（ウィーデーウ・ダート）に記載されている7大魔王が挙げられます。ヴェンディダードは「悪魔に対抗する法」を意味する宗教法の書で、清めの儀式や魔除けについて記されています。また、聖王イマとその黄金時代に関する神話も含まれています。

7大魔王一覧

これらの魔王は、それぞれが善神に対抗する存在として描かれています。アンラ・マンユは、アフラ・マズダーに対抗するために、冬、病気、悪などの16の災難を世に振りまくとされていますが、実際に災難を振りまくのは彼ら7大魔王を含むダエーワ達です。

アカ・マナフ (Aka Manah) - アムシャ・スプンタのウォフ・マナフと対抗する魔王
ドゥルジ (Druj) - アシャ・ワヒシュタと対抗する「不義と偽り」の魔王
サルワ（サウルウァ） (Saurva) - フシャスラ・ワルヤと対抗する「無秩序」の魔王。インド[[神話]]の暴風神ルドラ（シヴァ）のゾロアスター教での姿
タローマティ (Tarōmaiti) - スプンター・アールマティと対抗する「背教」の魔王
タルウィ (Taurvi) - ハルワタートと対抗する「熱」の魔王
ザリチュ (Zairic) - アムルタートと対抗する「渇き」の魔王
アンラ・マンユ (Angra Mainyu) - 最高神アフラ・マズダーに対抗する、魔王の中の魔王

アンラ・マンユは、魔王の中の魔王として、他の魔王とは別格として扱われるため、6大魔王と表現される場合もあります。

その他の悪魔

ヴェンディダードには、以下の悪魔も記載されています。

ナース (Nasu)
インドラ (Indar) - アシャ・ワヒシュタと対抗する悪魔。インド[[神話]]の武勇神インドラのゾロアスター教での姿
サルワ
ノーンハスヤ (Naonghaithya) - インド[[神話]]のアシュヴィン双神のゾロアスター教での姿
タルウィ
ザリチュ
アンリ・マンユ - アンラ・マンユと同じ

まとめ

ダエーワは、ゾロアスター教における悪の勢力を代表する存在です。彼らは善神に対抗し、世界に災厄をもたらすとされています。特に7大魔王は、その中でも重要な役割を担い、ゾロアスター教の神話において重要な位置を占めています。彼らの存在は、ゾロアスター教における善と悪の対立というテーマを象徴的に表しています。

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