ダニエレ・ダ・ヴォルテッラ
ダニエレ・ダ・ヴォルテッラ（Daniele da Volterra）、本名ダニエレ・リッチャレッリ（Daniele Ricciarelli）は、16世紀イタリアのマニエリスムを代表する画家であり、彫刻家でもありました。1509年頃に生まれ、1566年4月4日にこの世を去りました。彼は、良くも悪くもミケランジェロとの関係においてその名を知られています。彼の代表的な作品のいくつかは、ミケランジェロのデザインに基づいて制作されており、その影響は色濃く見られます。
ダニエレは、現在のトスカーナ州にあるヴォルテッラで生まれました。若い頃、シエナ派の画家ソドマとバルダッサーレ・ペルッツィに師事しましたが、その影響は限定的でした。1535年、ペルッツィと共にローマに移り、マッシモ・アレ・コロンネ宮殿のフレスコ画制作に携わったとされています。その後、ペリーノ・デル・ヴァーガの弟子となり、1538年から1541年にかけて、トリブルツィオ枢機卿の別荘やトリニタ・デイ・モンティ教会、サン・マルチェロ・アル・コルソ教会などのフレスコ画制作でペリーノを補佐しました。
ローマでの活動を通じて、ダニエレはミケランジェロのサークルに加わり、彼自身とも親交を深めました。ミケランジェロは、ダニエレがバチカンで仕事を得られるよう、また指導的立場に就けるように教皇パウルス3世に働きかけ、それはパウルス3世の死まで続きました。ミケランジェロは、ダニエレに絵画の元となるスケッチも提供しており、その関係の深さが伺えます。例えば、1541年12月にダニエレが依頼されたトリニタ・デイ・モンティ教会のオルシーニ礼拝堂の連作フレスコ画は、ミケランジェロのスケッチに基づいています。
ダニエレは、パウルス3世からバチカンの王宮の間の装飾の完成を依頼されました。しかし、1549年にパウルス3世が亡くなると、ダニエレは指導的立場と年金を失い、以後は彫刻に力を注ぐようになりました。ダニエレの遺言によると、ミケランジェロ作『フィレンツェのピエタ』のキリスト像の失われた足の大理石の膝が、彼の死後、所持品の中にあったことが判明しています。
ダニエレの最も有名な絵画は、ミケランジェロの素描に基づいたトリニタ・デイ・モンティ教会の『キリスト降架』（1545年頃）です。この作品は、当時、ローマで最も著名な絵画の一つとして、ラファエロの『キリストの変容』やドメニキーノの『聖ヒエロニムスの聖体拝領』と肩を並べると評されました。また、ルーヴル美術館に所蔵されている『ゴリアスを殺すダビデ』（1555年頃）の両面絵も、ミケランジェロのデザインに基づいていると考えられており、長らくミケランジェロの作品とされていました。
その他、特筆すべき作品として、フィレンツェのウフィツィ美術館にある『嬰児虐殺』（1557年）、ミケランジェロを描いたスケッチ画、そしてミケランジェロのデスマスクから作成された像などがあります。ダニエレの彫刻作品では、ベルヴェデーレにある『クレオパトラ』像が有名です。フランスからの依頼で制作されたアンリ2世のブロンズ騎馬像は、馬のみが完成し、後にパリのヴォージュ広場にあるルイ13世の像に使用されましたが、フランス革命時に溶かされてしまいました。
1913年の『カトリック百科事典』では、ダニエレの画風を次のように評しています。「ダニエレは、ミケランジェロの強い影響を受け、その様式を巧みに模倣しましたが、独自の個性も持ち合わせていました。彼の作品は、構成の堅牢さ、人物の力強さ、色彩の調和が特徴です。」
ダニエレは、システィーナ礼拝堂のミケランジェロ作のフレスコ画『最後の審判』に描かれた多くの性器や臀部を、外衣やイチジクの葉で覆い隠したことで悪評を招きました。この作業は、トリエント公会議が宗教画の中のヌードを非難した直後の1565年に開始されました。彼は、フレスコ画の一部を削り、アレクサンドリアのカタリナと、その後ろの聖ブラシウス（ブレーズ）の絵を描き直しました。これは、元の絵の聖ブラシウスがカタリナの裸の背中（尻）を見ているように、また一部の人々には性行為をしているように見えたためです。
しかし、フレスコ画の下部の腰布や織物はダニエレが描いたものではありません。ダニエレの作業は、1565年末にピウス4世の死によって中断されました。礼拝堂が新教皇選挙のために必要となったため、ダニエレが使用していた足場が速やかに撤去されました。この出来事から、ダニエレは「Il Braghettone」（ふんどし画家）という不名誉なあだ名で呼ばれるようになりました。
（ギャラリーの画像は省略）
（脚注は省略）
Fabrizio Mancinelli, "The Painting of the Last Judgment: History, Technique and Restoration". In Loren Partridge, Michelangelo : The Last Judgment - A Glorious Restoration. New York: en:Harry N. Abrams, Inc. 2000. ISBN 0-8109-8190-4.
この記事にはパブリックドメインである次の百科事典本文を含む: Herbermann, Charles, ed. (1913). "Daniele da Volterra". Catholic Encyclopedia. New York: Robert Appleton Company. (Daniele da Volterra. Written by George Charles Williamson.)
黒田清輝 : 1901年に公開された全裸の『裸体婦人像』が風紀を乱すとして警察に睨まれ、下半身をカーテンのようなもので覆うことで展示を続けたことがある。
Biography at the Wayback Machine (archived 2006-05-07), Museo Nazionale del Bargello, Florence.
生涯
ダニエレは、現在のトスカーナ州にあるヴォルテッラで生まれました。若い頃、シエナ派の画家ソドマとバルダッサーレ・ペルッツィに師事しましたが、その影響は限定的でした。1535年、ペルッツィと共にローマに移り、マッシモ・アレ・コロンネ宮殿のフレスコ画制作に携わったとされています。その後、ペリーノ・デル・ヴァーガの弟子となり、1538年から1541年にかけて、トリブルツィオ枢機卿の別荘やトリニタ・デイ・モンティ教会、サン・マルチェロ・アル・コルソ教会などのフレスコ画制作でペリーノを補佐しました。
ローマでの活動を通じて、ダニエレはミケランジェロのサークルに加わり、彼自身とも親交を深めました。ミケランジェロは、ダニエレがバチカンで仕事を得られるよう、また指導的立場に就けるように教皇パウルス3世に働きかけ、それはパウルス3世の死まで続きました。ミケランジェロは、ダニエレに絵画の元となるスケッチも提供しており、その関係の深さが伺えます。例えば、1541年12月にダニエレが依頼されたトリニタ・デイ・モンティ教会のオルシーニ礼拝堂の連作フレスコ画は、ミケランジェロのスケッチに基づいています。
ダニエレは、パウルス3世からバチカンの王宮の間の装飾の完成を依頼されました。しかし、1549年にパウルス3世が亡くなると、ダニエレは指導的立場と年金を失い、以後は彫刻に力を注ぐようになりました。ダニエレの遺言によると、ミケランジェロ作『フィレンツェのピエタ』のキリスト像の失われた足の大理石の膝が、彼の死後、所持品の中にあったことが判明しています。
作品
ダニエレの最も有名な絵画は、ミケランジェロの素描に基づいたトリニタ・デイ・モンティ教会の『キリスト降架』（1545年頃）です。この作品は、当時、ローマで最も著名な絵画の一つとして、ラファエロの『キリストの変容』やドメニキーノの『聖ヒエロニムスの聖体拝領』と肩を並べると評されました。また、ルーヴル美術館に所蔵されている『ゴリアスを殺すダビデ』（1555年頃）の両面絵も、ミケランジェロのデザインに基づいていると考えられており、長らくミケランジェロの作品とされていました。
その他、特筆すべき作品として、フィレンツェのウフィツィ美術館にある『嬰児虐殺』（1557年）、ミケランジェロを描いたスケッチ画、そしてミケランジェロのデスマスクから作成された像などがあります。ダニエレの彫刻作品では、ベルヴェデーレにある『クレオパトラ』像が有名です。フランスからの依頼で制作されたアンリ2世のブロンズ騎馬像は、馬のみが完成し、後にパリのヴォージュ広場にあるルイ13世の像に使用されましたが、フランス革命時に溶かされてしまいました。
作風
1913年の『カトリック百科事典』では、ダニエレの画風を次のように評しています。「ダニエレは、ミケランジェロの強い影響を受け、その様式を巧みに模倣しましたが、独自の個性も持ち合わせていました。彼の作品は、構成の堅牢さ、人物の力強さ、色彩の調和が特徴です。」
ミケランジェロ『最後の審判』の腰布
ダニエレは、システィーナ礼拝堂のミケランジェロ作のフレスコ画『最後の審判』に描かれた多くの性器や臀部を、外衣やイチジクの葉で覆い隠したことで悪評を招きました。この作業は、トリエント公会議が宗教画の中のヌードを非難した直後の1565年に開始されました。彼は、フレスコ画の一部を削り、アレクサンドリアのカタリナと、その後ろの聖ブラシウス（ブレーズ）の絵を描き直しました。これは、元の絵の聖ブラシウスがカタリナの裸の背中（尻）を見ているように、また一部の人々には性行為をしているように見えたためです。
しかし、フレスコ画の下部の腰布や織物はダニエレが描いたものではありません。ダニエレの作業は、1565年末にピウス4世の死によって中断されました。礼拝堂が新教皇選挙のために必要となったため、ダニエレが使用していた足場が速やかに撤去されました。この出来事から、ダニエレは「Il Braghettone」（ふんどし画家）という不名誉なあだ名で呼ばれるようになりました。
ギャラリー
（ギャラリーの画像は省略）
脚注
（脚注は省略）
参考文献
Fabrizio Mancinelli, "The Painting of the Last Judgment: History, Technique and Restoration". In Loren Partridge, Michelangelo : The Last Judgment - A Glorious Restoration. New York: en:Harry N. Abrams, Inc. 2000. ISBN 0-8109-8190-4.
この記事にはパブリックドメインである次の百科事典本文を含む: Herbermann, Charles, ed. (1913). "Daniele da Volterra". Catholic Encyclopedia. New York: Robert Appleton Company. (Daniele da Volterra. Written by George Charles Williamson.)
関連項目
黒田清輝 : 1901年に公開された全裸の『裸体婦人像』が風紀を乱すとして警察に睨まれ、下半身をカーテンのようなもので覆うことで展示を続けたことがある。
外部リンク
Biography at the Wayback Machine (archived 2006-05-07), Museo Nazionale del Bargello, Florence.
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。