チェロソナタ第2番 (フォーレ)

ガブリエル・フォーレ（1845年 - 1924年）が1921年に作曲したチェロとピアノのためのソナタ、チェロソナタ第2番ト短調作品117は、彼の創作活動における第三期、すなわち晩年に生み出された傑作です。フォーレは生涯に2曲のチェロソナタを書いており、第1番作品109は第2番の4年前にあたる1917年に完成しています。この第2番は、3つの楽章で構成されています。

作曲の背景

このソナタは、1921年の2月から11月にかけて作曲が進められました。興味深いことに、楽章は通常の順序ではなく、第2楽章、第1楽章、そして第3楽章の順に書かれています。中でも中心となる第2楽章は、同年5月5日にパリの廃兵院で行われたナポレオン1世没後100年記念式典のために、フランス政府から委嘱されてフォーレが作曲した『葬送歌』（作品番号なし）を編曲したものです。

『葬送歌』の作曲依頼を受けたのは、フォーレがピアノ五重奏曲第2番を完成させた直後の1921年初頭でした。これは作曲家としての名誉ある仕事でしたが、内面的な音楽表現を追求する晩年のフォーレにとっては、やや困惑させられる種類の依頼でもあったようです。それでも彼はわずか2週間足らずで作品を書き上げました。次男フィリップによれば、この『葬送歌』はオペラ『プロメテ』と同様に3部構成で書かれていたといいます。式典では軍楽隊によって演奏されるため、吹奏楽編成に不慣れだったフォーレは、パリ憲兵隊の音楽隊長であったギヨーム・バレーに編曲を託しました。

『葬送歌』はフォーレ作品の中でも特に感動的な楽曲の一つとなりました。この仕事を通して自身の創造的なインスピレーションが刺激されたこと、そして吹奏楽編成のままでは演奏機会が限られると考えたことから、フォーレはこの作品をチェロとピアノのために編曲し、それを核とする新しいソナタの構想を練り始めました。1921年3月19日付の妻マリーへの手紙で、彼は「二つ目のチェロとピアノのためのソナタ」に着手したことを報告しており、『葬送歌』が新たな装いでチェロソナタのアンダンテ楽章として生まれ変わった経緯がうかがえます。

しかし、作曲は順調に進みませんでした。8月には病に倒れ、医師の指示で作業を中断せざるを得なくなったのです。妻への手紙には、病状や療養生活について切実に綴られています（「私は気管支と腸、それに肝臓と腰をやられました。床から離れられずに、食事療法をしており、薬やミルクを飲んでいます。」1921年8月19日付）。病状が快方に向かっていることを報告する手紙の中でも、音楽活動については「私の音楽ですか？眠っています……。」と記しています。約1ヶ月の中断を経て、作曲を再開できたのは9月にパリへ戻ってからでした。

両端楽章は、パリのアパルトマンとアリエージュ県のアクス＝レ＝テルムにおいて、この年の春から秋にかけて作曲されました。フランスのフォーレ研究家ジャン＝ミシェル・ネクトゥーは、チェロソナタ第2番に続き、歌曲集『幻想の水平線』（作品118）や最後の夜想曲となった夜想曲第13番（作品119）が生み出されたこの秋を、「創造性溢れる秋」と評しています。

初演と出版

作品は1922年5月13日、国民音楽協会の演奏会で初演されました。チェロをジェラール・エッキング、ピアノをアルフレッド・コルトーが担当しました。同年、デュラン社より出版されています。この初演が行われた演奏会では、チェロソナタに続いて秋に書かれた歌曲集『幻想の水平線』も、シャルル・パンゼラの独唱で初演されています。

初演前日には76歳の誕生日を迎えていたフォーレですが、この演奏会でのチェロソナタは大きな驚きと称賛をもって迎えられました。翌日、長年の友人であった作曲家のヴァンサン・ダンディは感嘆の言葉を記しています。

このソナタは、フォーレの友人であり、経済的な支援者の一人であったアメリカの作曲家・ヴァイオリニスト、チャールズ・マーティン・レフラーに献呈されました。レフラーは、画家ジョン・シンガー・サージェントらと共に、フォーレを経済的に援助するための集いを設けていました。フォーレは感謝の意を示すため、このチェロソナタ第2番と歌曲『九月の森で』の自筆譜をレフラーに、ピアノ五重奏曲第2番の自筆譜をサージェントに贈っています。

作品の特徴

フォーレの創作期間は一般的に三期に区分されますが、2曲のチェロソナタはいずれも円熟期の第三期（1906年-1924年）に位置づけられます。チェロソナタ第2番は、その溌剌とした躍動感が際立っており、フォーレのチェロソナタの中では、明るさと穏やかさの点で第1番よりも好まれる傾向があります。

ジャン＝ミシェル・ネクトゥーはこの作品について、「病に苦しむ75歳の老音楽家の手によるものとは思えないほど、喜びとゆとり、そして抒情的な力が溢れている」と述べています。

各楽章は以下の特徴を持っています。

第1楽章：アレグロ、ト短調、3/4拍子。 自由なソナタ形式で書かれています。一息に書かれたような中心素材から構成され、決して旋律の流動性を失いません。冒頭、ピアノで提示された第1主題はチェロに引き継がれます。楽章を形作る主要な二つの主題は、いずれも豊かな抑揚を持ち、16小節という共通の長さを持っています。異なる性格を持つこれらの主題は、副次的な動機によって有機的に結びつけられており、主題間の対立よりも流れの継続性が重視されています。展開部は1小節の休止を挟んだカノンで始まり、再現部では提示部とは逆にチェロが第1主題を奏でます。再現部は短縮されており、コーダではト長調に転じ、再びカノンを用いた新しい展開へと発展し終結します。

第2楽章：アンダンテ、ハ短調、4/4拍子。 『葬送歌』を基にした、深い瞑想に満ちた楽章です。ハ短調による葬送行進曲風の性格は、約40年前に書かれた『エレジー』（作品24）を彷彿とさせますが、かつてのような情熱や感傷は控えめです。憂いを帯びた響きの中に気品が漂います。第1主題は悲しみの中にも高貴さを含んでいます。変イ長調の第2主題は、ささやくようなコラール風のフレーズで、変ホ音（上中音）の周りを巡ります。このコラール旋律を基に進むうちに、ピアノによって突然遠隔調であるロ短調へと転調し、一気に激しさを増します。二つの主題がフォルティッシモで重ねられる再現部の後、第2主題がハ長調で再現され、穏やかな光の中で楽章を閉じます。ここで用いられるコラール様式は、その崇高な響きからバッハの作品を想起させます。

* 第3楽章：アレグロ・ヴィーヴォ、ト短調、2/4拍子。 活発なスケルツォであり、自由なソナタ形式で書かれています。冒頭は頻繁な転調と躍動的なリズムが印象的です。第1主題が提示されるたびに転調が起こるため、主題の終結が遅れ、56小節目でようやく主題が安定して示されます。その直後、ピアノに突然変ホ長調の第2主題が現れます。この主題は「テンポを落とさずに」と指示されており、楽章の中間部を形成します。4声で書かれたこの主題に見られる掛留音の効果は、やや先行するラヴェルの『クープランの墓』や、フォーレ自身の『9つの前奏曲』第4番を思わせ、17世紀から18世紀のフランス鍵盤音楽に息づく優美さへのフォーレの鋭敏な感覚を示しています。スケルツォ主題の反復後、冒頭の音型を用いた展開部に入ります。ネクトゥーが「オーバード」（朝の歌）にも例えるこの部分は、快活さとチェロのピチカートによる少し皮肉な調子、若々しい響きが特徴で、ドビュッシーのチェロソナタの「セレナード」を連想させます。このようなドビュッシーへの接近は、フォーレにおいては比較的珍しい例です。コーダはト長調となり、チェロの反復音とリズム動機の繰り返しによって、全曲を力強く輝かしく締めくくります。

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