チェロ協奏曲 (三善晃)

三善晃の「チェロ協奏曲」は、日本の現代音楽を代表する作曲家、三善晃が1974年に完成させた、独奏チェロとオーケストラのための楽曲です。この作品は、前年の1973年にニッポン放送からの委嘱を受けて作曲されました。三善の作品の中でも特に高く評価されており、日本におけるチェロ協奏曲の重要なレパートリーの一つに位置づけられています。

演奏時間は約20分程度です。作品全体の形式は単一楽章として扱われますが、内部的にはいくつかのセクションに明確に分かれており、具体的には前奏、主部、後奏を含む四つの部分で構成されています。この構造により、単一楽章でありながらも多様な音楽的展開が可能です。

このチェロ協奏曲は、その質の高さから作曲された年の1974年度に早くも顕著な評価を得ました。具体的には、第29回文化庁芸術祭のラジオ部門（音楽の部）において大賞を受賞し、さらに日本の管弦楽作品に贈られる権威ある賞である第23回尾高賞も受賞しています。これらの受賞は、作品が当時の日本の音楽界においていかに注目され、高く評価されたかを示しています。

作品の初演は二段階で行われました。まず放送初演が、作曲された年の1974年11月15日に行われました。これはニッポン放送の委嘱作品であったことから、放送での初演という形が取られました。演奏は、若杉弘の指揮、読売日本交響楽団の演奏、そして当時日本のチェロ界を牽引していた堤剛の独奏という、最高の布陣によって行われました。続く公開初演は、放送初演から約二ヶ月後の1975年1月14日に、東京都の東京厚生年金会館にて行われました。こちらも放送初演と全く同じ、若杉弘指揮、読売日本交響楽団、堤剛の独奏という顔ぶれで行われました。

この協奏曲のために三善晃が指定したオーケストラ編成は、独奏チェロに加えて、かなり大規模かつ多様な楽器を含んでいます。木管楽器は、フルート2（うち1奏者はピッコロとアルトフルートに持ち替え）、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2という標準的な二管編成ですが、持ち替えにより音色の幅が広がります。金管楽器は、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3（うち1奏者はバストロンボーンに持ち替え）です。

特筆すべきは、その非常に豊富な打楽器群です。ティンパニだけでも6台を使用するほか、バスドラム、スレイベル（2種類）、カウベル（3種類）、竹の鳴子、懸垂シンバル、タムタム（3種類）、アンティークシンバル、スネアドラム、木魚（3種類）、木鐘（3種類）、ボンゴ（3種類）、コンガ、テノールドラム（3種類）、鳴子、むちといった、通常のオーケストラではあまり見られないような特殊な楽器や、同じ種類の楽器を複数使用する指定が多く含まれています。これらの打楽器は、作品に独特のリズムとテクスチャをもたらしています。

さらに、鍵盤楽器としてヴィブラフォン、グロッケンシュピール、チューブラーベル、木琴、マリンバ、チェレスタ、そしてハープが加わります。これに弦五部（ヴァイオリン第一、ヴァイオリン第二、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）が加わることで、独奏チェロを取り巻く響きは非常に色彩豊かで複雑なものとなっています。この多様な楽器編成は、三善晃がこの作品において探求した音響世界を具現化するために不可欠な要素と言えるでしょう。

この作品に関する解説や研究は、音楽之友社から出版されている「最新名曲解説全集10 協奏曲III」などに見ることができます。

三善晃のチェロ協奏曲は、革新的な形式、色彩豊かなオーケストレーション、そして独奏チェロの技巧的な書法が融合した傑作です。発表当時の高い評価はもとより、現在でも日本の現代音楽史において重要な位置を占める作品として、演奏機会も少なくありません。

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