チミペロン

チミペロンについて

チミペロン（timiperone）は、ブチロフェノン系の定型抗[[精神病薬]]であり、ハロペリドールを基に日本で開発されました。第一三共株式会社からは「トロペロン」、共和薬品工業株式会社からは「セルマニル」などの商品名で販売されています。処方箋医薬品であり、薬機法上では劇薬に指定されています。

作用機序

チミペロンは、中枢神経系に直接作用し、統合失調症などの精神疾患に伴う幻覚や妄想といった症状を緩和します。また、自発性の低下といった症状にも効果があるとされています。主な作用機序は、脳内のドーパミンD2受容体を遮断することによるドパミン作動性の抑制です。また、セロトニン受容体にも弱い親和性があり、この作用が自発性低下などの症状に関与すると考えられています。

チミペロンは、定型抗[[精神病薬]]の代表格であるハロペリドールと同様の作用を持ちますが、その向精神作用は非常に強力です。内服薬としての効果は、クロルプロマジン（フェノチアジン系）の300倍以上、ハロペリドール（ブチロフェノン系）の9倍以上とも言われています。ドパミン受容体への選択性が高いため、抗コリン作用、抗ムスカリン作用、抗ヒスタミン作用といった副作用は比較的少ないものの、錐体外路症状を引き起こしやすいという特徴があります。

適応

主な適応は、統合失調症に伴う幻覚や妄想などの精神病症状です。また、強い精神興奮抑制作用があるため、躁病の治療や、薬物中毒、更年期障害に伴う精神症状の対症療法にも使用されます。

しかし、近年では、錐体外路症状などの副作用を軽減した非定型抗[[精神病薬]]の開発が進み、臨床現場での使用頻度は減少傾向にあります。

副作用

チミペロンの作用機序であるドパミンD2受容体の遮断は、本来遮断する必要のない受容体にも影響を及ぼすため、様々な副作用を引き起こします。

錐体外路症状: 黒質線条体のドパミン低下によるパーキンソン症候群や、脳下垂体漏斗系のドパミン低下による症状が現れます。具体的には、手足の震え、筋肉のこわばり、動作の緩慢さなどがみられます。
過鎮静: 鎮静作用が強く現れると、感情の麻痺、抑うつ症状、睡眠障害などを引き起こすことがあります。
アカシジア: そわそわして落ち着かない、じっとしていられないといった症状が現れることがあります。
遅発性ジスキネジア: 長期服用によって、口や舌が勝手に動く、顔をしかめるといった不随意運動が現れることがあります。この症状は、一度発症すると治療が困難なため、特に注意が必要です。

これらの症状は、服薬開始後早期に現れることもあり、必要に応じて減薬や副交感神経抑制薬の投与などの対処が行われます。また、定型抗[[精神病薬]]に共通する副作用もみられます。

重大な副作用として、悪性症候群があります。これは、投与後間もなく高熱、動悸、発汗、悪寒、筋硬直などの症状が現れるもので、直ちに治療が必要となります。そのため、服薬開始後は特に注意が必要です。

妊娠中の女性への投与は、胎児への影響を考慮し、避けることが望ましいとされています。

禁忌

以下に該当する患者には、チミペロンの投与は禁忌とされています。

心臓病、パーキンソン病の患者：症状を悪化させるおそれがあるため
チミペロン製剤、またはブチロフェノン系薬剤に対し過敏症のある患者：ショック症状を引き起こすおそれがあるため
降圧剤を投与中の患者：急激な血圧低下を引き起こすおそれがあるため
アドレナリン（ボスミン）を投与中の患者：アドレナリンの作用を逆転させ、急激な血圧低下を引き起こすおそれがあるため

剤形

チミペロンは、常温では結晶性の固体として存在します。錠剤、細粒、注射剤（pH3～4）などの剤形があります。酢酸に溶けやすい性質を持っています。

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