チャールズ1世 (イングランド王)

チャールズ1世の生涯：王権と議会の激突

チャールズ1世（1600年11月19日 - 1649年1月30日）は、ステュアート朝のイングランド、スコットランド、アイルランドの王として、激動の時代を生きました。父であるジェームズ1世の跡を継ぎ、王権神授説を信奉して絶対王政を推し進めた結果、議会との対立を深め、最終的には清教徒革命（イングランド内戦）で敗れ、処刑されるという悲劇的な結末を迎えました。

幼年期と王太子時代

チャールズはスコットランドのダンファームリンで生まれましたが、幼少期には発語や歩行が遅く、発達に課題が見られました。しかし、乳母の辛抱強い教育によって克服し、10歳頃には普通の子どもと同様に動いたり話したりできるようになりました。兄のヘンリー・フレデリックの死去に伴い、コーンウォール公やロスシー公に叙位され、1616年にはプリンス・オブ・ウェールズ（王太子）となりました。

王太子時代には、政治に関与し始め、1621年にはイングランド議会の貴族院議員になりました。父王の意向により、ヨーロッパ大陸の宗教対立の仲裁を目指し、姉のエリザベスがプロテスタントのプファルツ選帝侯フリードリヒ5世と結婚した一方、チャールズ自身はカトリックのスペイン王女マリア・アナとの結婚が計画されました。しかし、この結婚計画は、スペインの外交的策略やイングランド議会の反対によって実現しませんでした。1623年には、寵臣バッキンガム公の勧めによりスペインへ渡航し結婚交渉を試みましたが、スペイン側の思惑により失敗に終わりました。その後、フランス王女ヘンリエッタ・マリアとの結婚が成立しましたが、ここでもカトリックへの寛容を求める条件が付き、国民との間に亀裂を生じさせました。

即位と議会との対立

1625年、父王の死去によりチャールズ1世として即位しました。しかし、即位当初から、王権神授説を信じ、議会を軽視する姿勢が目立ちました。寵臣バッキンガム公の権力独占と失策も重なり、議会との対立は深刻化しました。議会は、バッキンガム公の外交失敗を非難し、国王の財政政策にも反対しました。チャールズ1世は、議会を解散して対抗しようとしましたが、事態は悪化するばかりでした。スペインとの戦争、フランスとの同盟破綻など外交的な失策が重なり、議会との溝は深まる一方でした。

1628年、議会は「権利の請願」を提出し、国王の課税権を制限しようとしました。チャールズ1世は一旦は請願を受託しましたが、議会との対立は解消されず、再び議会を解散しました。この後、無議会政治（個人支配）を強行し、課税を強行したり、反対派を弾圧したりするなど、専制政治を推し進めました。宗教面でも、カンタベリー大主教ロードの政策により、イングランド国教会の統一化を進めましたが、これがスコットランドでの反乱を招き、事態をさらに悪化させました。

清教徒革命と処刑

1639年、スコットランドで主教戦争が勃発すると、チャールズ1世は戦費調達のため議会を召集せざるを得なくなりました。しかし、議会は国王の専制政治を厳しく批判し、対立は決定的となりました。1642年、国王は反国王派の議員を逮捕しようと試みましたが失敗。これがきっかけでイングランド内戦が勃発しました。内戦は当初、王党派が優勢でしたが、議会派がスコットランドと連携し、オリバー・クロムウェル率いる鉄騎隊が活躍すると、戦況は議会派に傾いていきました。1645年のネイズビーの戦いで王党派は決定的な敗北を喫し、1646年にチャールズ1世はスコットランド軍に降伏しました。

その後、チャールズ1世は議会軍に引き渡され、ワイト島に幽閉されました。しかし、チャールズ1世は諦めず、スコットランド王党派と和解し、第二次内戦を起こしましたが、これも失敗に終わりました。1649年、チャールズ1世は裁判によって処刑が宣告され、ホワイトホール宮殿前で斬首されました。

チャールズ1世の処刑は、イングランド史上における大きな転換点となり、王政は一時的に廃止され、イングランド共和国が誕生しました。その後、王政復古により、チャールズ2世が王位を継承しましたが、チャールズ1世の治世は、王権と議会の対立、宗教対立など、複雑な要因が絡み合い、英国史における重要な転換期となりました。彼の処刑は、王権神授説が否定される契機となり、後の議会政治発展の礎となったと言えるでしょう。

チャールズ1世は、ヘンリエッタ・マリアとの間に9人の子どもをもうけました。チャールズ2世やジェームズ2世など、後の歴史に名を残す人物も多くいます。

チャールズ1世の生涯は、王権と議会の対立、宗教対立、そして内戦という激動の時代を象徴しており、後の英国史に大きな影響を与えた人物として、歴史に深く刻まれています。

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