チョコプロ レスリング

「チョコプロ レスリング」は、日本の女子プロレス団体です。そのルーツは、プロレスラーのさくらえみがタイでプロレス普及を目指して2012年に設立した「プロレスリング我闘雲舞」にあります。団体名には、「私たちは雲よりも高く舞いたい」という願いに加え、フランス語で「お菓子」を意味する「GATOH」と英語で「行動する」を意味する「MOVE」を組み合わせ、「お菓子のように甘い女の子たちが夢に向かって行動する」といったニュアンスが込められています。

タイ国内には過去にも日本や海外団体の興行が開催され、一定のファンが存在していましたが、プロレス団体や選手育成組織は存在しませんでした。この状況を打開し、タイ出身の選手がプロレスラーになる機会を創出すべく、さくらえみはアイスリボン退団後、タイへの移住を決意し、団体設立に奔走します。渡航資金を捻出しつつ、偶然のきっかけから米山香織と共にタイへ渡ったというエピソードも残っています。タイを選んだ理由は明確ではないとしつつも、かつてアイスリボンの番組が放送されていた影響もあったようです。異国の地で団体を立ち上げた点は、師匠であるビクター・キニョネスに通じる挑戦と言えます。

タイでの活動は、ムエタイイベントでの提供試合や、元吉本女子プロレスJd'広報が主宰する空手道場「桜道場」での旗揚げ戦（マット使用）から始まりました。タイでリングを使用する団体TWFが一時活動しましたが短期間で解散し、我闘雲舞が再びタイで唯一のプロレス団体となりました。設立当初からの目標であった、タイで育成した選手の日本派遣、そして日本での練習生募集・育成・デビューは実現しています。将来的には、アジアツアーやタイ国内の巡業、テレビ中継、プロレスラー志望者の増加を目指しています。

日本での活動は、タイでの旗揚げに先立つ2012年6月、市ヶ谷南海記念診療所（現在の市ヶ谷チョコレート広場）でのファンミーティング形式「Gatoh-meet」としてスタートしました。これが後に「Gatoh-Move Japan Tour」として定期興行化され、当初はさくらえみの帰国に合わせて不定期で開催されていましたが、現在は週1回を基本としています。土曜日開催が主体ですが、他団体との客層重複を考慮し、開始時間をずらすなどしてハシゴ観戦に対応しています。タイでの収入が限られるため、この日本での定期興行が重要な運営資金源の一つとなっています。また、ホール使用料などの経費がかかるため当初は予定していなかったリング使用興行を、里歩選手の高校受験によるタイでの活動困難を機に、比較的安価な板橋グリーンホールで月1回開催するようになります。資金確保のため、さくらえみが出稼ぎや自主制作CD販売を行うなど、手作りでの運営が特徴です。リング練習はLLPW-Xの道場を借りて行われています。レフェリーやリングアナウンサー、さらにはライブ配信のカメラマンや実況まで、大会出場選手が兼任することが多く、アットホームな雰囲気を醸し出しています。

日本とタイだけでなく、国際的な活動も積極的に展開しています。イギリスの女子プロレス団体「プロレスリングEVE」とは定期的に相互参戦を行い、さくらえみはEVE王座を獲得し日本での防衛戦も行いました。イギリスでのスカウト活動や、タイ興行へのヨーロッパ男子選手の参戦も実現しています。

コロナ禍により観客を入れた興行が困難となった状況を逆手に取り、2020年からはYouTube Liveを活用した新たな配信ブランド「チョコレートプロレス（通称：チョコプロ）」をスタートさせました。これは我闘雲舞の別ブランドとして位置づけられ、基本的には無観客での配信が行われます。主に土日祝日の午前10時（日本時間）という開始時間は、海外、特に北米の視聴者層を意識したものです。誰でもYouTubeで無料で観戦でき、運営はライブ配信中のスーパーチャットやスポンサー収入で賄われています。市ヶ谷チョコレート広場でのマットプロレスが主ですが、新木場1stRINGでのリング使用大会も開催されます。大会のない日も、出場選手によるトーク、料理、英会話レッスン、ダンスなど多岐にわたるYouTube Live配信が毎日行われており、プロレス団体としては異色の活動でファンを獲得しています。

「誰でも女子プロレス（通称：ダレジョ）」は、女性限定のプロレス教室です。「女子プロレスなんて誰でもできるよ」という意味ではなく、「誰でもプロレスができるようにした」という理念に基づいています。参加者の目的や年齢は問わず、我闘雲舞所属の現役選手（現在は駿河メイが中心、さくらえみも講師を務める場合あり）から指導を受けられます。市ヶ谷チョコレート広場でのマット練習に加え、HEAT-UP稲田堤道場ではリングを使った練習も可能です。準備運動、受身、ロックアップ、技の体験、ドロップキックなど、基礎から丁寧に指導が行われます。当初はレスラー育成目的でしたが、現在はプロを目指す人だけでなく、プロレスラーにならなくてもプロレスを楽しみたい、運動したいといった多様なニーズに応える場となっています。ここからは駿河メイをはじめとする我闘雲舞所属選手の多くに加え、梅咲遥、杏ちゃむ、Himikoなど他団体で活躍する選手も輩出しています。

団体の歴史は、2012年のタイ・日本での旗揚げから始まり、定期興行の確立、板橋グリーンホールでのリング使用、タイ支部の独立とSET UPへの移行、そしてコロナ禍での「チョコプロ」開始と完全移行、有観客興行の再開、2024年8月の8年ぶりの後楽園ホール進出、そして「チョコプロ レスリング」への団体名改称と、常に変化と挑戦を続けてきました。マットプロレス、アットホームな雰囲気、選手による多才な運営、そしてオンライン配信やプロレス教室といった独自の取り組みは、他の団体にはない唯一無二のカラーを確立しています。現在もさくらえみを筆頭に、帯広さやか、駿河メイらが所属し、フリーのバリヤン・アッキらがレギュラー参戦。現場監督の高梨将弘、ゼネラルマネージャーの希月あおいらのサポートのもと、新たな時代のプロレス団体として活動を続けています。

（主なタイトルホルダー、所属選手、スタッフ、歴代所属選手、テーマ曲、我闘音楽の作品リストなどは、活動の幅広さを示すものとして別途参照ください。）

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