チリ共産党

チリ共産党：激動の歴史を歩むチリの共産主義政党

チリ共産党（Partido Comunista de Chile, PCCh）は、チリ共和国における共産主義政党です。その歴史は、20世紀初頭に遡り、幾多の変遷を経て現代に至ります。

結党から人民戦線時代へ

1912年、ルイス・エミリオ・レカバーレンらによってチリ社会主義労働党として結成されたのが、チリ共産党の始まりです。1922年にはチリ共産党に改称し、1920年代にはイバーニェス大統領の下で非合法化を経験します。しかし、1930年代にはチリ社会党や急進党と共闘する人民戦線戦術によって勢力を拡大。1938年には、人民戦線が推す急進党のペドロ・アギーレ・セルダが大統領に当選し、チリ共産党はこれに閣外協力しました。1946年には、ガブリエル・ゴンサレス・ビデラ大統領の下で初めて閣僚ポストを獲得するなど、政治的な影響力を増していきます。

冷戦下の苦難と社会党との共闘

しかし、東西冷戦の激化とともに、ビデラ大統領は右傾化し、1948年に共産党を非合法化。その後10年間、非合法活動を余儀なくされます。1958年に再び合法化されますが、皮肉にも、このとき共産党の合法化を行ったのは、かつて共産党を非合法化したイバーニェス大統領でした。

1958年以降、1973年までは一貫してチリ社会党と共闘関係を結び、1958年、1964年、1970年と社会党のサルバドール・アジェンデを大統領候補として推しました。1970年には、従来の社会党との共闘に加えて、急進党および左派諸政党を加えた政党連合「人民連合」を組織し、アジェンデを大統領に当選させるという大きな成果を上げました。アジェンデ政権成立当時、チリ共産党は得票率約15%で、社会党や急進党に匹敵する党勢を誇り、アジェンデ政権には3名の閣僚を送り込みました。

ピノチェト軍政下の弾圧と抵抗

アジェンデ政権下では、武力闘争路線を否定し、議会主義を採ったため、武装路線を辞さない左翼革命運動や社会党左派などの急進派と対立することもあったチリ共産党。しかし、1973年のチリ・クーデター後、ピノチェトの軍事独裁政権下で非合法化され、所属議員や党員が逮捕、拷問、殺害されるなど、激しい弾圧を受けました（コンドル作戦）。

この過程で、かつて対立した左翼革命運動と連携し、武力闘争へと路線を変更。党の指導の下で武力組織「マヌエル・ロドリゲス愛国戦線」(FPMR)を創設し、1986年にはピノチェトに対する襲撃を試みましたが、失敗に終わりました。

民政復帰後の模索と新たな展開

1989年の民政復帰時には再び武装闘争を放棄し、パトリシオ・エイルウィンを支持して当選に貢献しましたが、議員選挙では議席を獲得できませんでした。その後、ウマニスタ党や左翼革命運動などと「フント・ポデーモス・マス」という連合を結成し、一定の得票を得るものの、議席獲得には至らない状況が続きました。しかし、2009年の国会議員選挙では、コンセルタシオンと選挙協力したことで、36年ぶりに下院で3議席を獲得しました。

2013年には、中道左派連合の大統領候補に指名されたミシェル・バチェレを支持し、バチェレ政権誕生に貢献。同年の上下両院選挙では、下院で6議席を獲得し、勢力を拡大しました。2021年の総選挙では、ガブリエル・ボリッチを大統領候補として擁立し、ボリッチ政権を支える一翼を担っています。

チリ共産党は、激動のチリ現代史の中で、常に重要な役割を果たしてきました。その活動は、チリの政治、社会に大きな影響を与え続けています。

著名な党員

パブロ・ネルーダ：詩人、外交官。1971年にノーベル文学賞を受賞
ビクトル・ハラ：フォルクローレのシンガーソングライター。クーデター後、軍によって虐殺
* ビオレータ・パラ：フォルクローレ歌手、作曲家、民俗研究家

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