テオフィロス

テオフィロスは、813年頃に生まれ、842年1月20日に没した東ローマ帝国アモリア王朝の第2代皇帝です。父は初代皇帝ミカエル2世で、テオフィロスは「神に愛されし者」を意味します。中世ギリシア語では「セオフィロス」と発音されました。

生涯

821年、父ミカエル2世によって共同皇帝とされたテオフィロスは、829年にミカエル2世が亡くなると、一時的に継母のエウフロシュネが摂政を務めました。しかし、間もなくテオフィロスは自ら政務を執り始め、エウフロシュネは修道院へ引退しました。テオフィロスの妃には、パフラゴニア地方出身のテオドラが選ばれました。

テオフィロスは、公正を重んじる人物として知られており、毎週コンスタンティノポリスの街に出て、市民の意見を直接聞いていたと伝えられています。また、学問や演劇、建築活動にも深い関心を示し、数学者レオーンを抜擢して高等教育機関を設立したり、イスラーム風の意匠を取り入れたブリュアス離宮を建設したりしました。これらの活動は、後の「マケドニア朝ルネサンス」の先駆けとなりました。経済面では、地中海交易の活性化に伴い、7世紀以来初めて銅貨が大量発行されるなど、経済活動も活発化しました。

テオフィロスは、黒海・カスピ海方面のハザールとの関係を強化しました。これは、ノルマン系の人々の活動が活発化していたことへの対応策の一つでした。また、イスラーム勢力への対策も講じましたが、その多くは成果を挙げられませんでした。アッバース朝に対しては何度か遠征を試みましたが、838年にはカリフのムウタスィムによる小アジア遠征によって、故郷であるアモリオンやアンキュラ（現アンカラ）を破壊されるという敗北を喫しました。この戦いの混乱の中で、テオフィロスの消息が一時不明となり、宮廷内に混乱が生じました。

また、テオフィロスは、父の代から続いていたシチリア島やクレタ島へのイスラーム勢力の侵攻に対し、有効な対策を講じることができませんでした。シチリア島ではアグラブ朝がパレルモを制圧し、クレタ島はほぼイスラーム勢力の手に落ちました。テオフィロスは艦隊を再編し、エーゲ海域にテマを設置しましたが、大きな成果を上げることはできませんでした。

一方で、テオフィロスはレオーン5世時代から続くイコノクラスム（イコン破壊政策）を継承し、コンスタンティノポリスを中心に修道士への弾圧を行いました。これは、師であり総主教のヨハネスの影響によるもので、妃のテオドラもイコンを所持していたことを咎められたと伝えられています。しかし、彼のイコノクラスムは全国的な広がりを見せず、むしろ根強い反対に遭遇しました。

テオフィロスとテオドラの間にはなかなか男子が生まれず、一時アレクシオス・ムセレをカイサル（副皇帝）に任じていましたが、840年に次男ミカエル3世が誕生し、彼が後継者となりました。テオフィロスは、息子の成長を見ることなく、842年に亡くなりました。臨終の際には、多くの側近や高官たちに後事を託したとされています。テオフィロスの死後、妃のテオドラが摂政となり、イコノクラスム政策を転換しました。

テオフィロスは、公正な政治を志し、文化や学問を奨励しましたが、対外戦争や宗教政策においては課題を残しました。しかし、彼の時代に始まった文化活動は、後のマケドニア朝ルネサンスへと繋がっていきました。

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