ディーワーン

ディーワーン：イスラム世界の行政機関

ディーワーン（アラビア語: ديوان, Diwan/Dewan）は、イスラム国家における行政機関を指す言葉で、「庁」あるいは「局」と訳されます。トルコ語ではディーヴァーンと発音されます。

起源と発展

ディーワーンの起源は、正統カリフ時代に遡ります。第2代カリフ・ウマルは、640年に戦士（ムカーティラ）への俸給（アター）を支払うため、給付のための登録簿、つまり帳面（ディーワーン）を作成しました。ウマル1世の時代には、メディナ、クーファ、バスラにディーワーンが設置されました。

ウマイヤ朝の時代になると、国家の業務が複雑化し、ディーワーンは「庁」あるいは「局」としての意味合いを強めました。ムアーウィヤ1世は「ディーワーン体制」の確立を進め、勅令管理、文書、軍事、徴税、司法、駅逓に関する庁が整備されました。

各王朝におけるディーワーン

アッバース朝、ティムール朝、オスマン帝国といったイスラム王朝においても、ディーワーンは重要な行政機関として機能しました。それぞれの王朝において、ディーワーンの具体的な役割や組織は異なりましたが、国家運営の中枢を担っていたことは共通しています。

ムガル帝国におけるディーワーン

ムガル帝国およびムガル朝継承国家では、ディーワーンは財務大臣（あるいは長官）を意味しました。ムガル帝国では、ディーワーンは財務大臣（財務長官）、あるいは州の太守のもとに属する州財務長官を指しました。地方のディーワーンは、徴税・支出の権利のみならず、民事・刑事の司法権を行使しました。

イギリス東インド会社との関わり

1765年8月、イギリス東インド会社は、ブクサールの戦いの講和条約であるアラーハーバード条約により、ベンガル、ビハール、オリッサの3州のディーワーニーを獲得しました。ディーワーニーはムガル帝国の州財務長官（ディーワーン）の権利であり、これを得たことでイギリスは形式的にはムガル帝国の家臣としてこの3州の州財務長官となりました。

しかし、イギリス東インド会社はディーワーニーの権利を拡大解釈し、この3州で行政権まで行使するようになり、事実上この地域を領有するに至りました。

参考文献

「ディーワーン」国際大百科事典
小谷汪之 編『世界歴史大系　南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年8月。ISBN 978-4-634-46209-0。

関連項目

イスラム帝国
ディヴァン (詩集)
ディヴァン (家具)

外部リンク

『ディーワーン』 - コトバンク
* イスラム国家のディーワーンについて

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