トマス・ハワード (第21代アランデル伯爵)

第21代アランデル伯爵トマス・ハワード

第21代アランデル伯爵トマス・ハワード（1586年7月7日 - 1646年10月4日）は、イングランドの貴族であり、ステュアート朝初期に官職を歴任しました。第20代アランデル伯爵フィリップ・ハワードを父に持ち、マルトレイヴァース卿の儀礼称号でも知られています。美術品収集家としても名を馳せ、その収集のために多大な財産を費やしたことでも知られています。

生涯

1586年、トマス・ハワードは第20代アランデル伯爵フィリップ・ハワードとその妻アンの間に生まれました。父が反逆罪で私権を剥奪されたため、爵位と土地の継承権は一時失われました。しかし、ジェームズ1世の即位後、1604年に血統が回復され、アランデル伯爵位などを継承することが認められました。その後、病気療養のため、低地諸国、フランス、イタリアなどを旅しました。

当初、母の影響でローマ・カトリック教徒として育てられましたが、1615年に国教会に改宗。この改宗は政治的動機によるものと批判されましたが、ハワード自身はプロテスタントの質素な儀式に惹かれていたとされています。

1615年以降、ノーフォーク州統監、枢密顧問官など、数々の要職を歴任。1621年には大法官フランシス・ベーコンの弾劾に関わる貴族院委員会を主宰し、ベーコンを擁護しました。また、同年のイェルバートン事件では、貴族院での証人喚問に反対したことから、ロバート・スペンサーと激しい口論になり、一時ロンドン塔に投獄される事態となりました。

1621年に軍務伯に就任。チャールズ1世の即位後、国王寵臣であるバッキンガム公との対立から、ロンドン塔に軟禁されるなど、政治的な苦境に立たされました。その後、国王との和解を経て、枢密顧問官に復帰。1632年には、ボヘミア王妃エリザベスを迎えにハーグへ派遣されましたが、彼女は帰国を拒否しました。1633年から1635年までフリーメイソンのグランドマスターを務めました。また、ノーサンバランド、ウェストモーランド、カンバーランドの統監も兼任しました。

1636年にはプファルツ問題を協議するためにウィーンへ派遣。1640年から1641年には王室家政長官を務め、ストラフォード伯爵の裁判では大家令を務めました。1644年には、祖父の保有していたノーフォーク公爵位の復権を請願しましたが、認められず、代わりにノーフォーク伯爵位を与えられました。清教徒革命の混乱の中、1642年にイングランドを離れ、フランスを経てイタリアへ。1646年、パドヴァにて生涯を閉じました。

人物

ハワードは、美術品収集を趣味とし、そのために莫大な財産を費やしました。また、哲学者フランシス・ベーコンと親交が深く、ベーコンは病気療養のためにハワードの屋敷に身を寄せ、そこで亡くなっています。ベーコンが残した最後の手紙は、ハワード宛であり、その世話に対する感謝の言葉が綴られています。

爵位

1604年、父と祖父が剥奪されていた爵位の継承が認められ、以下の爵位を継承しました。

第21代アランデル伯爵
第4代サリー伯爵
第14代モウブレー男爵
第15代セグレイブ男爵

1627年には、以下の爵位がアランデル伯爵に恒久的に付随する爵位として認められました。

第11代マルトレイヴァース男爵
初代フィッツアラン＝クラン＝オズワルデスタ男爵

1644年には、新たに以下の爵位が与えられました。

初代ノーフォーク伯爵

勲章

ガーター騎士団ナイト（1611年）

家族

1606年、第7代シュルーズベリー伯爵ギルバート・タルボットの娘アレシアと結婚。彼女はシュルーズベリー伯爵家の財産の相続人であり、ハワード家の財政を支えました。夫妻の間には、以下の3人の男子が誕生しました。

ジェイムズ・ハワード（1607-1624）マルトレイヴァース卿
ヘンリー・ハワード（1608-1652）第22代アランデル伯爵
ウィリアム・ハワード（1612-1680）初代スタッフォード子爵、カトリック陰謀事件で処刑

脚注

海保眞夫『イギリスの大貴族』平凡社、1999年

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズ

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