トロース

トロースは、ギリシア神話において重要な人物の一人であり、トロイアという都市の創始者として知られています。彼の物語は、神話世界の複雑な人間関係と神々の介入を象徴しています。

出自と家族
トロースは、トロイア王エリクトニオスと河神シモエイスの娘アステュオケーの間に生まれました。彼は、河神スカマンドロスの娘カリロエーと結婚し、間にイーロス、アッサラコス、ガニュメーデース、クレオパトラーという4人の子供をもうけました。この子供たちは、それぞれがトロイアの歴史において重要な役割を果たすことになります。

ガニュメーデースの誘拐と報償
トロースの息子であるガニュメーデースは、その美しさゆえにゼウスにさらわれ、神々の給仕役として天界に連れて行かれました。この出来事に対し、ゼウスはトロースに、世界に二つとない優れた名馬を贈ることで償いました。この名馬は、トロースの家系において重要な役割を果たし、その後の物語にも登場します。

馬を巡る争い
ヘーラクレースは、後にトロイア王となるラーオメドーンの時代に、トロースの名馬を手に入れようとしましたが、それは叶いませんでした。また、アンキーセースはラーオメドーンの目を盗み、密かに自分の牝馬とトロースの馬を番わせて6頭の仔馬を産ませました。アンキーセースは、そのうち4頭を自分のものとし、残りの2頭を息子のアイネイアースに与えました。アイネイアースは、これらの馬をトロイア戦争で使用し、戦車を引かせましたが、最終的にはディオメーデースによって奪われてしまいます。

トロイアの祖
トロースは、トロイアの地名の由来となった人物として、トロイアの歴史において重要な位置を占めています。彼の子供たちや孫たちが、トロイア王家を形成し、後のトロイア戦争へとつながる物語が展開されていきます。トロースの物語は、ギリシア神話における人間と神々との複雑な関係、そして家族や血筋の重要性を物語る上で、非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

系図
トロース：エリクトニオスとアステュオケーの子
配偶者：カリロエー（スカマンドロスの娘）
子供：
イーロス
アッサラコス
ガニュメーデース
クレオパトラー

参考文献
アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
ホメロス『イリアス（上・下）』松平千秋訳、岩波文庫（1992年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

トロースの物語は、ギリシア神話における数多くの出来事や人物と深く関わっており、その複雑な系図と神々との関わりは、後の物語に大きな影響を与えました。

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