ドイツ帝国銀行

ドイツ帝国銀行（ライヒスバンク）とは

ドイツ帝国銀行（ライヒスバンク）は、1876年から1948年までベルリンに存在したドイツの中央銀行です。1871年のドイツ帝国成立に伴い、それまでのプロイセン王国銀行を発展させる形で設立され、通貨マルク（後に金マルク）を発行しました。

ライヒスバンク設立までの経緯

ドイツ統一以前は、各領邦国家がそれぞれ中央銀行を構え、独自の通貨を発行していました。その数は全部で31行にものぼりました。しかし、国家および通貨統一にあたり、1870年に発券銀行の増加を禁止する措置が取られました。帝国成立後、中央銀行創設までは金本位制導入に向けた動きがあり、1875年に帝国銀行（ライヒスバンク）を創設する法律が帝国議会を通過し、1876年1月1日にプロイセン王国銀行を改組する形で帝国銀行が誕生しました。

ライヒスバンクの活動

ライヒスバンクは、1882年4月に手形交換所を設けました。同年、ドイツは三国同盟を締結しています。

ロスチャイルド家は、ライヒスバンクへ最低預け金として100万ポンドを預け、ライヒスバンクの広大な支店網を活用した口座振替を利用しました。この口座振替サービスは、ライヒスポストが少額の最低預け金でも利用できるようにし、ライヒスバンクとネットワークを提携しました。

ライヒスバンクには、総裁（終身職）と取締役会が置かれ、国内外の投資家に株券が販売されました。しかし、帝国宰相が総裁を任命することになっており、その金融政策は政府の影響下にありました。ライヒスバンク以外の発券銀行の数は次第に減少し、1906年の段階ではバイエルン王国、ヴュルテンベルク王国、ザクセン王国、バーデン大公国という4つの有力領邦国家だけが発券銀行を持っていました。これらの銀行は、ナチス・ドイツの経済に組み込まれる1935年まで独自の通貨を発行し続けました。

第一次世界大戦とハイパーインフレーション

第一次世界大戦が始まると、ライヒスバンクはパピエルマルクという紙幣を増刷しました。総力戦は列強の中央銀行を駆り立てました。敗戦後のヴァイマル共和政が莫大な賠償金を請求されると、パピエルマルクを大量に印刷し、総裁職の帝国宰相任命制・終身制も災いして1922年から1923年にかけてのハイパーインフレーションを引き起こしました。そこで、ライヒ通貨委員で銀行家のヒャルマル・シャハト（1923年末から帝国銀行総裁）がレンテンマルクやライヒスマルクを導入し、インフレの沈静化を図りました。

1922年、連合国の圧力で成立した新ライヒスバンク法により、帝国銀行の総裁人事は帝国宰相ではなく取締役会が掌握しました。さらに1924年のドーズ案によって、総裁は14人のメンバーからなる「監理会（Generalrat）」が選出するようになりました。監理会のメンバーのうち、半数の7人はイギリス、フランス、イタリア、アメリカ合衆国、ベルギー、オランダ、スイスという外国からの金融専門家や政府関係者が占めました。この多国籍人脈は国際決済銀行との連絡に使われました。

1931年6月11日、ベアリング家の融資を受けていたハンブルクの輸出商がデフォルトし、これをきっかけにロンドン資本が引き上げだしました。17日、羊毛業ノルト・ヴォレの損失額が公となりました。20日、フーヴァーモラトリアムが出て外資流出が緩やかとなりました。6月1日から23日の間に、帝国銀行は12.69億マルクの金外貨を喪失しました。

同年11月、帝国銀行はヴェーラ（Wära）という自由貨幣を全面禁止しました。

ナチス政権下と戦後

ナチ党の権力掌握後は監理会が廃止され、総裁は総統兼帝国宰相たるアドルフ・ヒトラーの任命下に再び置かれることになりました。1937年からは再び政府の一部となり、1939年からはヒトラーが帝国銀行の最高責任者となり、ドイツ帝国銀行（Deutsche Reichsbank）に改名しました。この銀行は、ドイツ資本が連邦準備制度に利権を築いてから第二次世界大戦まで、ニューヨークでの資金決済に国際決済銀行（BIS）を利用していました。

1943年2月にドイツ国防軍がスターリングラードで敗北してからは、親ナチスのルーマニア王国の独裁者であったイオン・アントネスクが石油の輸出代金をライヒスマルクでは受け取らなくなりました。彼をつなぎとめるため帝国銀行はルーマニア国立銀行へ十数回にわたり金塊を送り続けました。

戦後、ドイツ帝国銀行は表向き廃止されました。本店はソ連軍に閉鎖されました。それでも帝国銀行に対する債権国は債務を履行してくれる中央銀行を必要としました。そこでイギリスはドイツ銀行のヘルマン・ヨーゼフ・アプスの提案により、1945年秋に英軍占領地域のハンブルクへ帝国銀行運営本部を設置しました。

1948年には通貨改革にあたり西側占領地区にドイチェ・レンダー銀行（ドイツ連邦諸州銀行）が誕生しました。ドイツが東西に分割されると、西ドイツではドイツ連邦銀行がドイチェ・レンダー銀行を継承し、東ドイツではドイツ発券銀行 (Deutsche Notenbank)（1968年に東ドイツ国立銀行 (Staatsbank der DDR)に改称）が中央銀行としての業務を引き継ぎました。

帝国銀行ビル

帝国銀行本店は1891年にベルリンに置かれ、1899年に拡張しています。現在の建物はナチス時代の1934年から1940年にかけて建設されたものです。

1945年のベルリン市街戦で大破しましたが、戦後しばらくはベルリン市政府が、1949年からはドイツ民主共和国財務省が庁舎として利用しました。現在はドイツ連邦共和国外務省本庁舎となっています。

歴代総裁

1876年 – 1890年 ヘルマン・フォン・デヘント
1890年 – 1908年 リヒャルト・コッホ
1908年 – 1923年 ルドルフ・ハーフェンシュタイン
1923年 – 1930年 ヒャルマル・シャハト
1930年 – 1933年 ハンス・ルター
[1933年]] – 1939年 [[ヒャルマル・シャハト]
* 1939年 – 1945年 ヴァルター・フンク

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