ドダイ・チェルビ

ドダイ・チェルビ：モンゴル帝国を支えたスニト部出身の将軍

ドダイ・チェルビ（Dodai Čerbi）は、13世紀前半のモンゴル帝国において重要な役割を果たした将軍の一人です。彼はスニト部出身であり、モンゴル帝国の創始者であるチンギス・カンに仕えました。

生涯と功績

ドダイ・チェルビに関する詳細な出自や、チンギス・カンに仕えるようになった経緯は、残念ながら史料にはほとんど残されていません。しかし、彼の名前は『元朝秘史』や『元史』などの漢文史料、そして『五族譜』などのペルシア語史料に記録されています。

1203年、チンギス・カンはケレイト部を征服し、モンゴル軍の軍制を再編成しました。この時、後の千人隊（ミンガン）制度や親衛隊（ケシクテイ）制度の原型が作られ、ドダイはドゴルク、オゲレ、トルン、ブチャラン、スイケトゥらと共にチェルビ（侍従）に任ぜられ、ケシクテイ（親衛隊）の長官となりました。

1206年、チンギス・カンはナイマン部を征服し、モンゴル高原の統一を達成。モンゴル帝国を建国すると同時に、国家体制の整備を進めました。この際、ケシクテイは大幅に規模が拡大され、定員1万の組織となり、ドダイはその中で1千の侍衛軍の長官を務めました。また、ケシクテイの衛士は4班に分かれることになり、ドゴルク、ブカ、イルチダイ、ドダイの4名が各班の隊長に任命されました。

史料における記述

モンゴル帝国に仕えた御家人（ノコル）について詳細な記録を残しているペルシア語史料の『集史』には、ドダイ・チェルビに関する記述がありません。しかし、『集史』を増補するために編纂されたと考えられている『五族譜』の「チンギス・カンの御家人一覧」には、「中軍の長、スニト部出身、万人隊長」として名前が挙げられています。

興味深いことに、『五族譜』の「チンギス・カンの御家人一覧」で中軍に挙げられている10名のうち、ドダイを除く全員が『集史』において「チンギス・カンの親衛千人隊（御帳前首千戸）」に属する百人隊長（ジャウン）として記録されています。

結論

ドダイ・チェルビは、記録こそ少ないものの、モンゴル帝国の初期においてチンギス・カンを支え、国家体制の確立に貢献した重要な人物であったと考えられます。特に、親衛隊長としての彼の役割は、帝国の安定と拡大に大きく寄与したことでしょう。



参考文献
志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
本田實信『モンゴル時代史研究』東京大学出版会、1991年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年

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