ドナルド・オブライエン

ドナル "ドナルド" オブライエン（Donal "Donald" O'Brien）は、1930年9月15日に生まれ、2003年に生涯を閉じた、アイルランド系の才能ある映画およびテレビ俳優です。およそ40年に及ぶそのキャリアの中で、彼は数十の舞台に立ち、60本を超える映像作品に出演し、多岐にわたる役柄を演じました。

初期キャリアと国際的な舞台

アイルランド系フランス人としての背景を持つ彼は、1950年代後半から映画界で活動を開始しました。キャリア初期には、アンリ・ヴェルヌイユ監督の戦争大作『ダンケルク』（1963年）、ジョン・フランケンハイマー監督の『大列車作戦』（1964年）や『グラン・プリ』（1966年）、そしてアナトール・リトヴァク監督の『将軍たちの夜』（1967年）といった、国際的に評価の高い大作にもキャスティングされました。しかし、その多くは小さな役柄にとどまりましたが、ジャン＝ポール・ベルモンド、イヴ・モンタン、ジェームズ・ガーナー、バート・ランカスター、ピーター・オトゥール、ドナルド・プレザンスといった錚々たるスター俳優たちと同じ現場で経験を積む機会を得ました。

イタリア映画界への転身とマカロニ・ウエスタンでの活躍

その後、当時隆盛を極めていたイタリアの映画界に活躍の場を見出したドナルド・オブライエンは、マカロニ・ウエスタンというジャンルの恩恵を受けた俳優の一人となります。イタリアが主導で製作されたこの西部劇は、1960年代中頃から隆盛を迎えました。彼はそれ以前にも、1961年のフランス映画『ダイナマイト・ジャック』のような欧州製西部劇に端役で出演した経験があります。

日本では、彼の出演するマカロニ・ウエスタンの多くは劇場公開されませんでしたが、トーマス・ミリアン主演の『続・復讐のガンマン/走れ・男・走れ！』（1967年）がDVD化された際に、主人公を執拗に追う賞金稼ぎ役で、マカロニ・ウエスタンの熱心なファンの間ではその名が知られるようになりました。母国アイルランドやフランス以外で未公開となった作品の中には主演作もいくつか確認できますが、残念ながら低予算ゆえに質の高いとは言えない作品も少なくなかったようです。

マカロニ・ウエスタンが下火になりつつあった1970年代末には、このジャンルの終焉期とも言える時期の、ルチオ・フルチ監督の『荒野の処刑』（1975年）や『新・復讐の用心棒』（1978年）、エンツォ・G・カステッラーリ監督の『ケオマ/ザ・リベンジャー』（1976年）、セルジオ・マルティーノ監督の『ハチェット無頼』（1977年）といった名作群にも、脇役や端役として続けて出演しました。これらの作品では特に悪役での登場が多く、元々個性的だったその風貌は、歳を重ねるにつれて一層の凄みを増していきました。彼はまた、ジュリアーノ・ジェンマやフランコ・ネロといったイタリア映画界のスター俳優たちの存在感を引き立てる役回りも多く務めました。他にも、香港との合作による異色のカンフー西部劇『荒野のドラゴン兄弟』（1973年）や、ジャック・ロンドン原作の「狼犬物」である『白い牙の救出』（1975年）など、様々なジャンルの作品にも出演し続けました。また、マカロニ・ウエスタン全盛期に製作されたドキュメンタリー映画『ウエスタン・イタリアン・スタイル』（1968年）には、『続・復讐のガンマン～』の撮影現場の様子と共に、彼の姿が捉えられています。

その後のキャリアと晩年

マカロニ・ウエスタン時代以降も、彼は数多くのアクション映画やホラー映画を中心に脇役として出演を続けました。代表的なホラー作品としては、ジョー・ダマート監督の『猟奇！変態地獄』（1977年）や、ゾンビ映画のヒットに触発された『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』（1981年）でのマッド・サイエンティスト役などが挙げられます。彼と同時代の多くの欧州俳優と同様に、その英語力が国際的なプロジェクトへの参加を可能にしたケースも少なくありませんでした。ホラーや低予算のアクション作品だけでなく、ジャン・ジャック・アノー監督の国際的ヒット作『薔薇の名前』（1986年）のような大作にも顔を見せています。

晩年は、便所での転倒事故による後遺症から身体の自由が利かなくなり、徐々に出演機会が減少。事実上の半引退状態となりました。時には、DVDの特典映像などに登場し、現役時代のキャリアについて語ることもあったといいます。

ドナルド・オブライエンは、その独特な容姿と、特に悪役としての強い印象で、数々の作品に深みを与えました。マカロニ・ウエスタンを中心に、アクション、ホラー、そしてアート系の作品まで、多岐にわたるジャンルで活躍した個性派俳優として、今なお映画ファンに記憶されています。

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