ドリームランド (クトゥルフ神話)

夢幻の異次元：クトゥルフ神話のドリームランド

クトゥルフ神話において、ドリームランドはハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創作した、現実世界とは異なる異次元空間です。邦訳では「幻夢郷」「幻夢境」「夢の国」など、様々な呼び名があります。夢を通してアクセスできるこの世界は、ダンセイニ卿のペガーナ神話に影響を受け、ラヴクラフトによって生み出され、その後ブライアン・ラムレイを始めとする多くの作家によって設定が豊かに彩られてきました。

ドリームランドへの旅路

ドリームランドは、ファンタジー的な異世界であり、人間の夢の深層に存在するとされています。現実世界とドリームランドでは時間の流れが異なり、両世界を自由に往来できる者を「夢見人」と呼びます。しかし、単に眠るだけではドリームランドへは到達できません。夢見人は、まず通常の夢の中で特定の「階段」を70段降り、「炎の神殿」へたどり着きます。そこで神官ナシュトとカマン＝ターに出会い、さらに700段の階段を降りることで、ドリームランドへの「門」へと至るのです。

ラヴクラフトの作品『白い帆船』ではじめてドリームランドが描かれましたが、当時は夢の世界であるという説明はありませんでした。その後、多くの作品を通してその設定が徐々に明らかになり、『未知なるカダスを夢に求めて』において、ドリームランドの全貌が初めて明らかになります。

ドリームランドの地理と特徴

ラヴクラフトの作品では、ドリームランドは固有名詞ではなく、地球のみならず、フォーマルハウトやアルデバランなど他の恒星系にも存在するとされています。しかし、それらへ到達することは非常に困難です。地球のドリームランドは、おおむね東西南北の四つの地域に分けられます。

東方: クラネスという偉大な夢見人が創造した地域であり、セレファイスという都市が存在します。その先には危険な禁断の地が広がっています。
西方: ドリームランドへの入り口である「深き眠りの門」があり、ダイラス＝リーンやウルタール、フラニス、イラーネクといった都市が存在します。また、旧神の印に使われる灰白色の石が産出される伝説の地ムナールもこの地域にあります。
南方: オリアブ島があり、『白い帆船』に登場する楽園のような場所があるとされています。
北方: 恐るべきレン高原があり、角と蹄を持つ亜人や紫色の蜘蛛が生息しています。高原の彼方にはカダスがあり、神族「大いなるものども」の居城が山頂に築かれています。

ドリームランドの地下には広大な空間が広がり、様々な怪物が潜んでいます。また、船でドリームランドの月へ行くことができ、そこにはヒキガエルのような月棲獣が棲息し、ナイアーラトテップに仕えているとされています。さらに、ドリームランドの姿は夢見人によって異なるという点も興味深いです。

ドリームランドの神々と生物

ドリームランドには、様々な神々と生物が存在します。

主な神々:

大いなるもの: ドリームランドの都市の神殿に祀られる神々。
蕃神: 外宇宙から来た異形の盲目白痴の神々。
ナス＝ホルタース: セレファイスの主神。
ボクルグ: 水蜥蜴の姿をした神。
ノーデンス: 大いなる深淵に君臨する神。
ナイアーラトテップ: 蕃神の一柱。
アザトース: 外宇宙にいる古神。

主な生物:

食屍鬼: ドリームランドと現実世界を行き来する。
夜鬼: ノーデンスの奉仕種族。
ガグ: 四腕の毛むくじゃらの巨人。
ガスト: 地下世界に生息する人型の生物。
シャンタク鳥: ナイアーラトテップの奉仕種族。
レン人: レン高原の亜人。
ムーンビースト: 月棲獣。
* 猫: ウルタールでは神聖視されている。

ブライアン・ラムレイの作品では、ラヴクラフトの作品には登場しない新たな生物や設定が追加されています。例えば、知性を持つ巨樹「大樹」などが登場します。

ドリームランドとクトゥルフ神話

ラヴクラフトが創造した邪神クトゥルフは夢に干渉する能力を持っていますが、ドリームランドとの直接的な関係は作品内で詳しく描写されていません。一方、ダーレス神話ではドリームランドへの言及は少ないものの、「五芒星形の石」という重要なアイテムの産地が古代ムナールであるとされています。ドリームランドは、クトゥルフ神話における重要な舞台の一つであり、その神秘的な世界観は多くの作家やファンを魅了し続けています。ドリームランドを舞台にした小説やTRPG『クトゥルフの呼び声』など、様々な作品が発表されており、今後もその魅力は色褪せることはないでしょう。

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