ナブー (メソポタミア神話)

ナブー：知恵と書記を司るメソポタミアの神

ナブー（Nabu）は、古代メソポタミアにおいて、知恵、書記、そして草木を司る重要な神でした。アッシリアとバビロニアで広く信仰され、特に書記官や知識階級からの崇敬を集めました。

起源と発展

ナブーは元々、西部セム族の神であり、アムル人によって紀元前2000年頃にメソポタミアへ導入されたと考えられています。マルドゥクがバビロニアの主神となると、ナブーはマルドゥクの書記官、あるいは息子として位置づけられるようになりました。彼はボルシッパのエジダ神殿に祀られ、バビロニアの新年祭では、ボルシッパからバビロンへ父マルドゥクに会いに来るという重要な役割を担いました。

時が経つにつれ、ナブーはアッシリアでも主要な神としての地位を確立し、彼に捧げられた碑文が数多く作られました。また、ナブーにちなんで名付けられた子供たちも多く存在しました。彼は単なる書記官の神としてだけでなく、人類の運命が記された「運命の石板」の保持者として、人々の生活に深く関わる存在となっていきました。さらに、繁殖や水を司る神としても信仰される側面も持ち合わせていました。

象徴と役割

ナブーは、書記官の神として、シュメールの女神ニサバの後継者と見なされています。彼の象徴は、尖筆と粘土板であり、知識と記録を象徴しています。 изображен 角のある帽子を被り、手を握った姿で表現されることが多く、これは古代の司祭職のジェスチャーを表しています。また、彼はムシュフシュと呼ばれる翼のあるドラゴンに乗っている姿でも知られており、このドラゴンは元々マルドゥクの象徴でした。

ナブーの名前の由来については、「知らせる」という意味を持つセム語の語根nbに由来するという説が有力です。これは、彼が知識を伝え、人々に啓示を与える神であることを示唆しています。

ナブーの力は、人々の運命を左右する「運命の石板」に個人の運命を刻むことができる点にあります。彼は人間の寿命を伸ばしたり、短くしたりする力を持つと信じられており、その影響力は絶大でした。

歴史的記述と関連性

旧約聖書のイザヤ書46章1節には、ナブーがネボ（Nebo）として言及されています。また、ティグラト・ピレセル3世の時代にニムルドに建てられたナブーの像は、現在大英博物館に展示されています。

バビロニア末期の占星術では、ナブーは水星と関連付けられていました。知恵と書記の神として、ギリシア人からはアポローンやヘルメースと同一視され、ヘルメースは後にローマ神話のメルクリウス（水星の語源）と同一視されるようになりました。

現代文化への影響

ナブーは、現代文化にもその名を残しています。DCコミックスのキャラクター、ドクター・フェイトは、ナブーと名乗る神のような存在から力を与えられています。また、映画「スター・ウォーズ」に登場する惑星ナブーの名前も、この古代の神に由来しています。

ナブーは、古代メソポタミアにおける知恵と知識の象徴であり、その影響は現代にも及んでいます。彼の物語は、知識の重要性、運命の力、そして神話が文化に与える影響を私たちに教えてくれます。

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