ニノス

ニノス：伝説のアッシリア王

ニノスは、古代アッシリアの伝説的な王であり、ヘレニズム時代以降の古代ギリシアの歴史家によって、首都ニネヴェの神話上の創建者とされています。妻はセミラミス。

ギリシアの歴史におけるニノス

ニノス王とセミラミス女王の人物像は、紀元前400年頃のクニドスのクテシアスの『ペルシア誌』に初めて登場しました。クテシアスの記述は後にシケリアのディオドロスによって拡張され、ニノスは19世紀半ば以降まで、ヨーロッパの歴史家に言及され続けました。

彼はベーロスまたはベルの息子であったと言われています。クテシアスによると、ニノスの治世は紀元前2189年に始まり、52年間続きました。ニノスはアラビアの王アリアイオスの助けを借りて17年間で西アジア全体を征服し、最初の帝国を建国しました。アルメニアの伝説の王バルザネスを降伏させ、さらにメディアの王パルノスを打ち負かして、王とその妻および7人の子供をことごとく磔刑に処しました。

インドとバクトリアを除くすべての近隣アジア諸国を征服し、王都ニネヴェを建設したニノスは、約200万の遠征軍を率いてバクトリアの王オクシュアルテスと戦い、ほとんどすべての諸都市を征服しましたが、要害堅固な首都バクトラだけは陥落できませんでした。

バクトラの包囲が長引く間に、ニノスは武将の1人オンネスの妻セミラミスに会いました。ニノスはこの女性の献策を受けてバクトルを陥落させました。セミラミスの才覚に感嘆し、その美貌に惚れこんだニノスは彼女を夫から奪って結婚しました。2人の間にはニノスおよびセミラミスの王権を引き継いだとされるニニュアースが生まれました。

クテシアスはまた、ニノスの死後に未亡人セミラミスが女王となって、夫を王宮内に埋葬し、それとは別に大墳墓を築いたと述べています。セミラミスはさらに、アジアに残った最後の独立した君主であるインドのスタブロバテース王と戦争をしましたが、多くの兵を失い、自身も負傷したため休戦しました。その後、息子のニニュアースが謀反を企てましたがセミラミスは処罰することなく、むしろ息子を支持して退位しました。

ニノスの同定

ローマ時代のケパリーオーンをはじめとする多くの歴史家は、ニノスと戦ったバクトリア王は実際にはオクシュアルテースではなく、ゾロアスターであると主張しました。

『偽クレメンス文書』の一部はニノスを最初に『旧約聖書』のニムロドと同一視しており、著者はニムロドがペルシア人に火を崇拝することを教えたと述べています。「創世記」10章の現代的な解釈の多くは、ニネヴェの創建者はクッシュの息子ニムロドとしています。

ニノスの史実性

膨大な量の楔形文字の解読は現代のアッシリア学者にシュメール、アッカド、バビロニア、アッシリア、カルデアのより正確な歴史をつなぎ合わせることを可能にしました。ニノスはメソポタミアで編集された広範な王名のリストのいずれにおいても存在が証明されておらず、メソポタミアの文献でも言及されていません。この古代ギリシアの創作された人物は、アッシリアの1人または複数の実在した王の功業、またはアッシリア＝バビロニアの神話に触発された可能性が高いです。

同様に、ニムロドの聖書的性格は、アッシリア、バビロニア、アッカド、シュメールの文学や王名表のどこにも証明されていませんが、多くの研究者は1人または複数の実在した王に触発されたと信じています。最も可能性が高いのは、紀元前13世紀に中アッシリア帝国を統治したトゥクルティ・ニヌルタ1世、あるいはアッシリアの戦争の神ニヌルタです。アッシリアの女王サンムラマートは実在したことが知られ、シャムシ・アダド5世の妃であり、紀元前811年から5年間、息子のアダド・ニラリ3世の摂政として新アッシリア帝国を統治しました。女王セミラミスを取り巻く後代のギリシア神話は、そうした帝国を支配した女性の目新しさに触発されたと考察する者もいます。

ニノスの文化的な影響

ニノスとセミラミスの物語は、1世紀頃のヘレニズムのロマンスの中で取り上げられています。それらに由来する場面はおそらくオロンテス川流域の都市アンティオキアのモザイクで描かれています。

セビリアのイシドールスは、偶像崇拝は彼の父ベーロスが作った金の像を崇拝したニノスの発明であると主張しました。この主張は中世から近世にかけて非常に影響力がありました。

シェイクスピアの『真夏の夜の夢』では、劇中劇としてピューラモスとティスベーの物語が語られていますが、劇中で俳優たちは「ナイナス（ニノス）の墓」を常に「マイナスの墓」と誤って発音します。エドマンド・スペンサーは『妖精の女王』でニノスの誇りに触れています。

このように、ニノスは伝説上の人物でありながら、古代から現代に至るまで、様々な文化や芸術作品に影響を与え続けています。

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