ネオプラン

ネオプラン（Neoplan）

ネオプランは、ドイツの主要な商用車製造企業であるMAN Truck & Bus SEが展開するバスブランドです。MAN Truck & Bus自体は、欧州を代表する総合機械企業集団であるMAN SEの一員として活動しています。

歴史

ネオプランの歴史は1935年に遡ります。ドイツ南部の都市シュトゥットガルトで、ゴットロープ・アウヴェルター氏によってバスおよびトラックの車体製造会社として創業されました。長い歴史を持つネオプラン社でしたが、2000年には親会社であるゴットロープ・アウヴェルター社と共に、MANグループの傘下に入ることとなります。グループ参入後、2001年にMAN Nutzfahrzeug（当時のMANの商用車製造部門）はネオプランを基盤として、自社のバス製造部門であるネオマン・バスを設立。「ネオプラン」は、この新会社が製造するバスのブランドとして引き続き存続しました。

その後、組織再編が進み、2008年にはネオマン・バスがMAN Nutzfahrzeugeに吸収統合されますが、「ネオプラン」ブランドでのバス製造はMAN Nutzfahrzeugeによって継承されました。さらに2011年には、MAN Nutzfahrzeugeが現在の社名であるMAN Truck & Bus AGに変更され、現在に至ります。

国際的な動向としては、2009年には中華人民共和国のバスメーカーが製造する「A9シリーズ」がネオプランの「スターライナー」のコピーであるとして提訴していた裁判で、北京市の裁判所がネオプラン側の訴えを認める判決を下しています。

特徴

ネオプランのバスは、主に自社製またはメルセデス・ベンツ製のエンジン、トランスミッション、サスペンションといった主要コンポーネントを車体に架装しています。一方で、車体のボディやサスペンションの一部は自社で開発・生産を行っている点が特徴です。

かつて日本市場向けに製造された車両の中には、日産ディーゼル工業（現在のUDトラックス）製のエンジンを搭載したモデルも存在しました。これは、導入事業者（特に広交観光）の要望やメンテナンス体制などを考慮した、日本独自の仕様でした。また、トロリーバスについても、電気機器メーカーであるフォスロ社と共同で製造を手掛けています。

日本における展開

ネオプランのバスが初めて日本に輸入されたのは1977年、中央交通によるものでした。しかし、その名を日本全国に知らしめたのは、1979年に輸入された2階建てバス「スカイライナー」です。これは日本国内における本格的な2階建て観光バスの先駆けとなり、当時の日本で2階建てバスブームを巻き起こしました。この成功を受けて、ドイツやベルギーの競合メーカーも日本市場への参入を加速させ、日本のバスメーカー各社も2階建てバス市場に参入するなど、日本のバス業界に大きな影響を与えました。

その後、2階部分の居住性に関する課題などから、2階建てバスの観光用途での需要は一時的に縮小しました。しかし、1990年代に入ると、一度に多くの乗客を輸送できる点に着目され、夜行高速バスとして再び脚光を浴びるようになり、スカイライナーも再び輸入されることになりました。

2000年代に入ると、2002年には全長15mという圧倒的な長さを誇る2階建てバス「メガライナー」が登場し、注目を集めました。しかし、運行中に相次いで発生した車両火災事故の影響を受け、導入された車両は現在、国内では運行されておらず、多くは除籍されるか本国へ返却されています。

ネオプラン製品の日本国内における総代理店は、初めてネオプランを輸入した中央交通を親会社とする「日本ネオプラン」が担っていました。過去には、中央観光バス（当時）も「バウルC.S.B商事」という子会社を設立して、一時的に輸入代理店を務めていたことがあります。

日本でのネオプラン輸入の動きは、2005年3月に神奈川中央交通が連節バス「ツインライナー」（セントロライナーの連節モデル）を導入したのを最後に事実上停止しました。これにより、ネオプランは日本市場から撤退した形となり、かつて輸入を手掛けた中央交通グループなども現在は国産バスのみを保有しています。

主な車種

ネオプランは様々な用途やスタイルのバスを製造しています。代表的な車種には以下のようなものがあります。

スカイライナー: 2階建てバスの代名詞。日本の2階建てバスブームの火付け役。
クラブライナー: 全長9mクラスのコンパクトな2階建てバス。
メガライナー: 全長15mの超大型2階建てバス。
ジャンボクルーザー: 全長18mクラスの連節2階建てバス。ユニークな構造を持つ。
スペースライナー: アンダーフロアコックピット構造を持つスーパーハイデッカー。
スターライナー: スタイリッシュなデザインが特徴のスーパーハイデッカー。中国でのコピー問題の対象となった。
シティライナー: スーパーハイデッカーモデルの一つで、日本でも多くの事業者に導入された。
セントロライナー: 路線バスシリーズ。連節バス「ツインライナー」はこのシリーズに属する。

この他にも、ハイデッカーのジェットライナーやメトロライナー、連節スーパーハイデッカーのハイライナーやスペースロングライナー、路線バスのレジオライナー、ランプバスのエアライナーやサンライナーなどが製造されました。海外ではトロリーバス仕様の「エレクトロライナー」も販売されています。

日本での導入事例

日本国内では、多くのバス事業者によってネオプランのバスが導入されました。現在も一部の事業者で使用されていますが、多くは過去の導入事例となります。

現在の主なユーザー

日の丸自動車興業: スカイライナーなどの貸切車の他、スカイライナーやスペースライナーを改造したオープンバス「スカイバス東京」で有名。
道南バス: 高速バスや貸切バスとしてシティライナー、スペースライナー、スターライナーなどを導入。
二葉観光運輸: スカイライナー、スターライナー、シティライナーなどを貸切用として保有。

過去の主なユーザー（一部）

中央交通・中央交通バス: 日本へのネオプラン初導入を手掛けた事業者。多様な車種を保有した。
東京都交通局、京成バス: 台東区や江戸川区の委託を受け、2階建てバスによる循環路線を運行。車両は後に日の丸自動車興業や大阪の中央交通へ移籍した。
神奈川中央交通: 連節バス「ツインライナー」（セントロライナー）を路線バスとして導入。
JRバス関東、関東鉄道、西日本JRバス: 夜行高速バス「ドリーム号」や「つくば号」、「青春メガドリーム号」などでスカイライナーやメガライナーを運行。JRバス関東は日本で初めてダブルデッカーをワンマン運行した実績を持つ（ファンタジア号）。
中央観光バス: 日本におけるネオプランの代表的なユーザーの一つ。豪華な内装に特化した貸切サロンバス「エンパイアステートサルーン」「オリエントエクスプレス」「ジパング・ハーレーエクスプレス」などを多数導入し、日本の観光バスの概念を変えた。アート引越センターの「ドリームサルーン・ナイス21」（荷物・乗客同時輸送）や、姫路セントラルパークの園内バスとして使用された連節2階建てバス「ジャンボクルーザー」も、同社が輸入した車両である。
広交観光、京福電気鉄道（現・京福バス）: 日産ディーゼル製エンジンを搭載した特注車両を導入した事業者。
宮城野観光バス: スカイライナーやシティライナーの他、ガラス面積の広い「ガラスライナー」を導入し、「ウィンドウデッカー・カイザー」の愛称で運行した。
* 常磐交通自動車: いわき～会津若松間の路線「スワン号」にスカイライナーを投入。路線バスにおける2階建てバス導入の初期事例となった。

この他にも、多くの事業者でネオプランのバスが活躍し、日本のバス史に大きな足跡を残しました。革新的な技術やデザインは、今なお多くのバスファンに記憶されています。

この他にも、越後交通、新潟交通、富山地方鉄道、琴平バス、西日本鉄道、九州産交バス、北都交通、庄内交通、中鉄観光、上武大学、グレース観光、さやま交通など、日本各地の様々な事業者でネオプランのバスが導入され、それぞれの地で活躍の歴史を刻みました。特に中央観光バスによる豪華サロンバスの展開や、アート引越センターによるユニークな引越しバス「ドリームサルーン・ナイス21」など、日本のバスの利用形態やサービスに新たな提案をもたらした事例も存在します。これらの車両が日本のバス史に残した革新的なデザインや豪華な仕様は、今なお多くの人々に記憶されています。

もう一度検索