ネフライト

ネフライトについての詳細

ネフライト（英: nephrite）は、透閃石-緑閃石系の角閃石からなる緻密な鉱物で、日本では軟玉として知られています。軟玉という名称は、その堅さがヒスイや硬玉（ジェダイト）よりも若干低いことが理由で、硬度は約6.5程度です。特に中国においては、ネフライトは貴重な宝石として古くから珍重されており、古代には「玉」と呼ばれました。

18世紀にミャンマーのカチン州で硬玉のジェダイトが発見されるまで、ネフライトは中国での主たる玉の種類でした。その後、この2つの鉱物は軟玉と硬玉として区別されるようになりました。日本では、ネフライトとジェダイトをともに翡翠（ひすい）と総称していましたが、実際には化学的性質には違いがあります。特に、ネフライトの高級品は中国では和田玉と称されており、その中でも特に品質が高いとされるのが「羊脂玉」です。この名称は、玉の色合いが羊脂のような柔らかな白色に見えることからきています。

「翡翠」という言葉は元々カワセミを指す言葉で、最高級品であった白と緑の混合した軟玉の色が、カワセミの羽根に似ていることに由来しています。

ネフライトの名前は、古代ギリシャ語の「nephrós」（腎臓）と英語の「-ite」（鉱物を示す接尾辞）から派生しています。「腎臓の石」という意味を持ち、これは中南米で腎臓の疾患の治療に使用されていたことに由来すると言われています。古代の人々は、ネフライトの治癒力に対する信仰を持っていました。

性質・特徴

ネフライトの化学組成は、主に以下の二つの鉱物の固溶体です：

• - 透閃石（Mg 90～100%、Fe 0～10%）
• - 緑閃石（Mg 50～90%、Fe 10～50%）
• - 鉄緑閃石（Mg 0～50%、Fe 50～100%）

これにより、ネフライトの性質や色合いが異なります。このような変化は、石の硬度や色、透明度にも影響を与え、さまざまな美しい製品が生み出されます。

特に、ネフライトは研磨や加工がしやすい特性を持っているため、彫刻や装飾品に広く利用されています。中国やその他の国々では、ネフライトを用いた工芸品が多く、これらは芸術的価値が高く評価されています。

さらに、ネフライトはその美しさや価値から、さまざまな文化において象徴的な存在でもあります。古くから、ネフライトは権威や富の象徴とされ、特別な儀式や贈り物として重用されてきました。

参考文献

• - 木下亀城・小川留太郎『標準原色図鑑全集6 岩石鉱物』保育社、1967年
• - 都城秋穂・久城育夫『岩石学I - 偏光顕微鏡と造岩鉱物』共立出版、1972年
• - 堀秀道『楽しい鉱物学 - 基礎知識から鑑定まで』草思社、1990年
• - 松原聰・宮脇律郎『国立科学博物館叢書5 日本産鉱物型録』東海大学出版会、2006年

このように、ネフライトはその美しさだけでなく、豊かな歴史と文化的な背景を持つ特別な鉱物です。

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