ハトホル (小惑星)

小惑星（2340）ハトホルは、太陽系の小天体の一つで、1976年にその存在が確認された地球近傍小惑星です。これは、地球の軌道に近い領域を公転する天体を指します。ハトホルは、地球近傍小惑星の中でも特に、軌道長半径が1天文単位（AU）より短いアテン群に分類されています。

この小惑星は、1976年10月22日、アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるパロマー天文台において、天文学者のチャールズ・トーマス・コワル氏によって発見されました。その後、この天体は独立して発見され、1981年に再び観測された際に確認されたエレノア・ヘリン氏によって命名されました。ハトホルが命名された時点で、アテン群に属する小惑星としては、3番目に正式な名前が与えられた天体となりました。

ハトホルという名称は、古代エジプト神話に登場する重要な女神に由来します。この女神は、空の神として、また太陽神ラーの娘としても広く知られています。エジプト神話のハトホル女神は、しばしばギリシャ神話における愛と美の女神アプロディーテーと同一視される存在です。アテン群の小惑星には、しばしばエジプト神話の神々の名前が用いられる傾向があります。

ハトホルの軌道は、地球近傍小惑星であるというだけでなく、さらに二つの惑星の軌道を横断するという特徴を持っています。具体的には、ハトホルの軌道は金星の軌道と水星の軌道をも交差しています。この軌道特性により、ハトホルはこれらの惑星とも接近する可能性があります。

地球への接近は、ハトホルの重要な特徴の一つです。発見のわずか2日前、1976年10月20日には、地球から約0.007752 AU（天文単位）の距離を通過しました。これは約116万キロメートルに相当し、月までの平均距離の約3倍程度の近さです。

21世紀に入ってからも、ハトホルはたびたび地球に接近することが予測されています。計算によると、この世紀の間に、ハトホルが地球から300億メートル（3千万キロメートル）以内の距離に接近する機会は、合計で17回に上ると見込まれています。このように、ハトホルは比較的頻繁に地球に近づく軌道を持つ天体です。

近年では、2014年10月の地球接近時に、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用するゴールドストーン深宇宙通信施設のレーダー観測設備を用いて、ハトホルの観測が行われました。このようなレーダー観測は、小惑星の正確なサイズや形状、自転、そして軌道要素を詳細に決定するために非常に有効な手段です。

将来の顕著な接近としては、2069年10月21日に、ハトホルが地球から約0.00658 AU（約98.4万キロメートル）の距離まで近づくと予測されています。これは1976年の接近時よりもさらに近く、月までの距離の約2.6倍程度の距離となります。

このように、小惑星ハトホルは、地球近傍のアテン群に属し、エジプト神話の女神にちなんだ名前を持ち、金星や水星の軌道も横断する特徴的な軌道を持つ天体です。過去や将来にわたり地球に比較的近い距離まで接近する機会があるため、地球近傍天体の研究対象として注目されています。その接近時にはレーダー観測などが行われ、軌道や物理的性質の解明が進められています。

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