ハンカ湖

ハンカ湖

ハンカ湖（ロシア語: озеро Ха́нка、満洲語: hingka bilten）は、中国の黒竜江省とロシア連邦の沿海地方に跨る大規模な淡水湖です。中国側では興凱湖とも呼ばれ、鶏西市からは約120km離れた場所に位置します。

湖の概要

この湖は面積が4,190平方キロメートルあり、北側に1,160平方キロメートルが中国に、南側に3,030平方キロメートルがロシアに属しています。湖周辺は貴重な生態系を維持する重要な湿地帯で、中国側には興凱湖国家級自然保護区、ロシア側にはハンカ湖自然保護区が存在します。両国は1996年に共同で湖の自然保護に関する協定を結び、ロシア側は2005年、中国側は2007年にそれぞれユネスコの生物圏保護区に登録されました。また、両国の自然保護区はラムサール条約に基づく登録地でもあります。

湖の生態系には多種多様な植物が存在し、特にヒシやハス、オニバスが見られます。また、日本を含む太平洋地域から渡ってくる渡り鳥が生息しており、タンチョウやマナヅル、コウノトリなど、絶滅の危機に瀕している種も多く見られます。さらに、チョウザメや淡水魚類、ツキノワグマ、アムールトラもこの地域で見られ、かつてはトキが生息していたことも知られています。しかし、農地開発や環境汚染などが進行した結果、トキの最後の確認は第二次世界大戦後となってしまいました。

湖の水系と気候

ハンカ湖は中国の領土内にある高さ10メートルの砂丘によって、大小の湖に分けられています。湖岸の大部分は湿地であり、湖には23本の川が流れ込むことから、豊かな水系が形成されています。南側ロシアの湿地帯を経て流れ出る川は松阿察河のみです。湖の平均深さは4.5メートルで、最大深度は10.6メートルに達します。

年間の気温は最高21.2℃、最低-19.2℃で、降水は主に夏に降ります。年間降水量は約750ミリメートルで、湖水の滞留期間は約1年となっています。

歴史的背景

ハンカ湖周辺では新石器時代の遺跡が多数出土され、市場などの文化の影響を受けています。大祚栄によって建国された渤海国は、かつてこの湖周辺を領土としていました。やがて女真や満州族がこの地を占有し、1860年には清国の吉林将軍の管轄となります。その後、1861年に清露間で締結された興凱湖界約によって湖の大部分がロシアに譲渡されることとなり、現在の形に至ります。

湖の東側にはシベリア鉄道が通り、スパッスク＝ダリニーやチェルニゴフカなどの町が点在します。ウスリースクからは200km、ウラジオストクからは300kmの距離に位置しており、アクセスも便利です。

エコツーリズムと保護活動

ハンカ湖は自然保護やエコツーリズムとしての潜在力を有していますが、中国側の保護区の多くが国有農場に属し、農業や漁業の影響で自然資源が枯渇しつつあります。また、密漁や排水による環境悪化も深刻な課題です。今後の保護活動が求められる地域となっています。

もう一度検索