ハードリドン

ハードリドン：アイルランドが生んだサラブレッドの英雄

ハードリドン(Hard Ridden, 1955-1981)は、アイルランドが生んだサラブレッド競走馬にして、名種牡馬として名を馳せたサラブレッドです。1958年にはアイリッシュ2000ギニーとダービーステークスを制覇するなど、華々しい競走馬時代を送ったのち、アイルランド、そして日本において種牡馬として活躍しました。その生涯を紐解きながら、その魅力に迫ってみましょう。

華麗なる競走馬時代

オリバー・ランバート卿によってアイルランドで生産されたハードリドンは、細身の体格の牡馬でした。1歳時にはダブリンのセリ市に出品され、ヴィクター・サスーン卿によって270ギニーという価格で落札されます。その後、カラ競馬場のミック・ロジャース調教師の管理下に置かれ、競走馬としてのキャリアをスタートさせました。

2歳時のデビューは2着という結果に終わりましたが、3歳時がハードリドンの真価を示す時でした。カラ競馬場での競走で2着と好走を見せると、続くアイリッシュ2000ギニーでは、後にアイリッシュダービーを制覇するシンドンを4馬身差で下し、圧巻の勝利を収めます。

そして迎えたエプソムダービー。約20万人の観衆、そして女王エリザベス2世もその目に焼き付けたこのレースは、出走馬21頭中、1番人気だったアルサイドの出走取消という波乱の幕開けとなりました。ハードリドンは、スプリンター血統であることを理由に18/1という低評価を受けながら、レースでは後方からじっくりと脚を温存するレース運びをしました。直線に入ると、鞍上チャーリー・スマークの巧みな騎乗により内側のコースを突いて先頭に躍り出ると、そのまま2着馬に5馬身の差をつけて優勝。1907年のオービー以来、実に51年ぶりとなるアイルランド調教馬によるダービー制覇という快挙を成し遂げたのです。51歳のベテラン騎手スマークは「やりました、最後のダービーに乗れました！」と興奮を語ったと伝えられています。

その後、ハードリドンはアスコット競馬場でのキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに出走しましたが、バリーモス相手に敗れ着外に終わりました。それでも、タイムフォームによるレーティングは131ポンドと、当時のヨーロッパのG1馬と比較しても高い評価を得ており、その能力の高さが伺えます。

種牡馬としての成功

競走馬を引退したハードリドンは、アイルランドで種牡馬としてのキャリアをスタートさせます。アイルランドでは、アイリッシュセントレジャー優勝馬のGiolla Mearや、シャンペンステークス勝ち馬のHardicanuteなど、数々の優秀な産駒を輩出しました。

1967年には日本へと輸出され、日本の競馬界に大きな影響を与えます。代表産駒として、東京優駿（日本ダービー）を制したロングエースや、優駿牝馬（オークス）を制したリニアクインなどが挙げられます。そのほかにも、タイムフォーム金杯を制したハーディカヌート、京都盃を制したハードイット、金鯱賞を制したスズカハードなど、数多くの活躍馬を送り出し、日本の競馬界に貢献しました。1981年、日本においてその生涯を終えるまで、ハードリドンは種牡馬として日本の競馬界に大きな足跡を残しました。

ハードリドンは競走馬、種牡馬として、日本とアイルランドの競馬界に大きな功績を残した、まさにサラブレッドの英雄と言えるでしょう。その血統は、現在でも多くの競走馬の中に受け継がれ、その偉大な功績はこれからも語り継がれていくことでしょう。

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