パラグアイの歴史

パラグアイの歴史は、先コロンブス期から現代まで、多様な民族と文化が交錯し、激動の変遷を遂げてきました。この項目では、その複雑な歴史を詳細に解説します。

先コロンブス期（紀元前1000年頃 - 16世紀）

現在のパラグアイに相当する地域には、紀元前1000年から500年頃にかけて、アマゾン地方からグアラニー族が到来しました。彼らは焼畑農業、狩猟、採集を行い、一夫多妻制に基づいた拡大家族を単位とする社会を形成していました。通貨は持たず、物々交換による経済が営まれ、階級のない平等な社会を築いていました。

グアラニー族以外にも、農耕を行わず、食料が不足するとグアラニー族を襲撃するチャケニョと呼ばれる人々もいました。両者は互いに敵対関係にありました。

スペイン植民地時代（1537年 - 1811年）

1537年、スペインの探検隊がパラグアイ川のほとりにヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオンを建設し、スペインによる植民地支配が始まりました。当初、グアラニー族はスペイン人と友好的な関係を築きましたが、1556年にエンコミエンダ制が導入され、グアラニー族がスペイン人に分配されるようになると、両者の関係は悪化し、各地で反乱が起こりました。

当初、先住民の労働力はヤナコナ制という形で生涯奴隷として酷使されていましたが、後にミタ制という一定期間の労働力提供へと変化しました。16世紀後半には、フランシスコ会とイエズス会が布教活動を開始し、特にイエズス会は先住民の保護に尽力しました。

1611年、インディアス審議会はエンコメンデーロによる奴隷労働からのインディオ解放を定めるアルファロの法令を発布し、これによりイエズス会の布教村落（レドゥクシオン）は大きく発展しました。イエズス会は、王室の保護の下、先住民の自治を認め、高度な社会を築き上げました。

17世紀には、ポルトガル領ブラジルからのバンデイランテによる奴隷狩りも激化し、イエズス会は先住民を率いて抵抗しました。1641年のムボロレーの戦いでは、バンデイランテを撃退し、先住民の保護に成功しました。

18世紀に入ると、イエズス会の布教村落は最盛期を迎え、「イエズス会国家」とも呼ばれる自治社会を形成しました。村落では、農業、牧畜、マテ茶栽培が行われ、経済的に自立していました。文化面でも、グアラニー語の辞典や文法書の編纂、ヨーロッパの音楽導入など、独自の文化が発展しました。

1750年、スペインとポルトガル間でマドリード条約が締結され、ウルグアイ川東岸の7つの教化村がポルトガルに引き渡されることになりました。しかし、住民は移住に抵抗し、グアラニー戦争が勃発しました。1767年、イエズス会はスペイン全土から追放され、布教村落の歴史は終焉を迎えました。その後、パラグアイはリオ・デ・ラ・プラタ副王領の一部となりました。

独立と経済発展（1811年 - 1865年）

1810年、スペイン本国でナポレオン戦争が勃発すると、南米各地で独立運動が起こりました。1811年5月17日、パラグアイはブエノスアイレスからの独立を宣言し、南米で最も早い独立国の一つとなりました。

1814年、ホセ・ガスパル・ロドリゲス・デ・フランシアが最高統領に就任し、鎖国政策と独裁政治を実施しました。反対派を徹底的に弾圧し、クリオーリョ層を解体し、インディオとの人種融合を図りました。1840年にフランシアが没した後、1844年にカルロス・アントニオ・ロペスが大統領に就任し、開国政策に転換しました。外国貿易を再開し、ヨーロッパの先進技術を導入し、工業化を進めました。また、ラテンアメリカ初の義務教育制度を導入するなど、社会改革も進めました。

1862年にアントニオ・ロペスが没すると、息子のフランシスコ・ソラーノ・ロペスが大統領に就任しました。

三国同盟戦争（1864年 - 1870年）

ウルグアイの内戦に介入したパラグアイは、アルゼンチン、ブラジルと対立し、1864年に三国同盟戦争が勃発しました。パラグアイは当初優勢でしたが、1865年以降は劣勢となり、1869年には首都アスンシオンが陥落しました。1870年3月、ソラーノ・ロペス大統領が戦死し、戦争は終結しました。

この戦争は、パラグアイにとって破滅的な結果をもたらしました。人口は激減し、国土の一部は失われ、経済は崩壊しました。また、イギリスからの借款によって、経済的な自立も失いました。

自由党とコロラド党

三国同盟戦争後、パラグアイは政治的に不安定な状態が続きました。1880年代には、軍事力を背景にした安定が確立され、コロラド党と自由党が結成されました。20世紀に入ると、自由党が政権を握りましたが、内紛が絶えませんでした。

チャコ戦争の時代

20世紀初頭には、チャコ地方を巡ってボリビアとの対立が激化し、1932年にチャコ戦争が勃発しました。パラグアイは勝利しましたが、多くの犠牲者を出し、国内の混乱も深まりました。戦後、軍部によるクーデターが起こり、ラファエル・フランコ大佐が政権を握りましたが、すぐに失脚しました。

パラグアイ内戦

第二次世界大戦後、軍政が敷かれていたパラグアイでは、民主化要求が高まりました。1947年、モリニゴ政権に対する反乱が起こり、内戦状態に陥りました。内戦は政府軍の勝利で終わりましたが、多くの犠牲者と亡命者を出しました。

ストロエスネル独裁政権時代（1954年 - 1989年）

1954年、アルフレド・ストロエスネル将軍がクーデターを起こし、長期独裁政権を樹立しました。ストロエスネルはコロラド党による一党制に近い体制を敷き、反対派を弾圧しました。経済政策では成功を収めましたが、周辺諸国が民主化に向かう中で、ストロエスネルの個人支配に対する反感が高まりました。1989年、クーデターによってストロエスネルは失脚し、独裁政権は崩壊しました。

民政移管以降（1989年 - ）

ストロエスネル失脚後、パラグアイは民主化への道を歩み始めました。1992年に新憲法を公布し、民主的な選挙が実施されるようになりました。しかし、政治的混乱は続き、クーデター未遂事件や大統領暗殺事件なども発生しました。2008年には、野党連合のフェルナンド・ルーゴが勝利し、61年続いたコロラド党政権は終焉しました。

パラグアイの歴史は、先住民文化、植民地支配、独立、戦争、独裁政権、そして民主化への歩みと、激動の変遷を遂げてきました。この歴史を理解することは、今日のパラグアイ社会を理解する上で不可欠です。

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