ヒシャーム (ウマイヤ朝)

ヒシャーム：ウマイヤ朝の再興を託されたカリフ

ヒシャーム（691年 - 743年）は、ウマイヤ朝の第10代カリフであり、724年から743年まで在位しました。父は第5代カリフのアブドゥルマリクであり、彼がカリフに即位した時代は、ウマイヤ朝にとって内外の困難が重なる時期でした。

外圧との戦い

ヒシャームの時代は、外からの圧力にさらされました。ホラーサーンとその東北部では、西突厥から自立した突騎施（テュルギシュ）の攻撃を受けました。また、イラン系の先住民であるマワーリーと土着化したアラブ人が結びつき、反政府運動を起こしました。さらに、権力をめぐる南北アラブの対立や抗争も激化しました。

740年から742年にかけては、ハワーリージュ派に扇動されたベルベル人の反乱が起こり、鎮圧に2年を費やしました。これらの外圧と内乱は、ウマイヤ朝の国力を大きく消耗させました。

内政の立て直し

ヒシャームは、内政の立て直しにも力を注ぎました。イラク総督のハーリド・アルカスリーの支援を得て、干拓や灌漑による農地の拡大を推進し、財政の再建を図りました。彼の努力により、ウマイヤ朝は一時的に安定を取り戻し、没落傾向にあった王朝に最後の安定期をもたらしました。

しかし、ヒシャームの治世の後半には、再び動揺の兆しが見え始めました。腹心であったハーリドがマワーリーの税制問題で失脚し、740年にはザイド・ブン・アリーがクーファのシーア派に擁立されて反乱（ザイド・ブン・アリーの乱）を起こしました。この反乱は鎮圧され、ザイドは処刑されましたが、ウマイヤ朝が末期的な状況に置かれていることを示す出来事でした。

その死とその後

743年、ヒシャームは54歳で死去しました。彼の跡を継いだのは甥のワリード2世でした。

ヒシャームの孫であるアブド・アッラフマーン1世は、アッバース革命の際にウマイヤ家の一族が皆殺しに遭った際、イベリア半島に逃れました。そして、後ウマイヤ朝を建て、初代アミールとなりました。彼の行動は、ウマイヤ朝の血脈を後世に伝えることとなりました。

まとめ

ヒシャームは、ウマイヤ朝の苦難の時代にカリフとして在位し、王朝の再建に尽力しました。外圧や内乱に苦しみながらも、内政の立て直しを図り、一時的な安定をもたらしました。しかし、彼の死後、ウマイヤ朝は急速に衰退し、アッバース革命によって滅亡することとなります。それでも、彼の孫であるアブド・アッラフマーン1世が後ウマイヤ朝を建てたことで、ウマイヤ朝の血脈は歴史に刻まれました。

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