ピアノ協奏曲第2番 (チャイコフスキー)

概要

ピアノ協奏曲第2番ト長調 作品44は、ピョートル・チャイコフスキーが1879年から1880年にかけて作曲したピアノ協奏曲です。1882年5月22日にモスクワで初演され、アントン・ルビンシテインの指揮、セルゲイ・タネーエフのピアノで演奏されました。この作品は、ニコライ・ルビンシテインに献呈されています。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、未完のものも含めて全部で3曲ありますが、第1番が圧倒的に有名です。第2番は、楽譜の入手が困難であったことや、ピアノパートのカデンツァが非常に華麗であるため、LP時代には演奏される機会が稀でした。

チャイコフスキーは、第1番の献呈を拒否されたニコライ・ルビンシテインに、この第2番を改めて献呈しました。ニコライは、いくつかの控えめな助言をした上で、この献呈を受け入れました。初演では彼自身がピアノを担当する予定でしたが、腸結核のため1881年3月24日にパリで急逝し、実現しませんでした。

近年では、チャイコフスキー・コンクールなどで演奏される機会が増えてきています。

楽器編成

この曲の楽器編成は以下の通りです。

フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
ティンパニ（3個）
弦5部

演奏時間

原典版の演奏時間は約40分です（各楽章は約20分、13分、7分）。しかし、演奏者によって解釈が異なり、50分近くかかる場合もあります。

アレクサンドル・ジロティによる改訂版の演奏時間は約33分ですが、カットされた箇所によって演奏時間に開きがあり、ベンノ・モイセイヴィチの演奏では31分です。

世界初録音

原典版: タチアナ・ニコラーエワのピアノ、ニコライ・アノソフの指揮、ロシア国立交響楽団（1951年）。
ジロティ版: ベンノ・モイセイヴィチのピアノ、ジョージ・ウェルドンの指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団（1944年）。

最多録音記録

フェレンツ・フリッチャイの指揮、RIAS放送交響楽団による1951年の録音をはじめとして、シューラ・チェルカスキーは、DG（ジロティ版、Kraus指揮）、VoxBox（Susskind指揮）、Concert Hall Society（Rachmilovich指揮）と、異なる指揮者で再録音しています。NHK交響楽団との共演でもジロティ版を使用したため、NHKのアーカイブにもこの録音が残っています。

曲の構成

この曲は、以下の3つの楽章で構成されています。

第1楽章: ト長調 4/4拍子 Allegro brillante e molto vivace
ソナタ形式で、重厚なトゥッティと共にピアノが入ってくるダイナミックな楽章です。展開部が非常に長く、最後には79小節にも及ぶカデンツァが置かれています。ジロティ版ではe molto vivaceが削除されたため、テンポを大きく落とした演奏も少なくありません。
第2楽章: ニ長調 3/4拍子 Andante non troppo
3部形式で、冒頭はヴァイオリンとチェロによる長い二重奏で始まり、その後ピアノが入ってきます。中間部はロ短調で、管楽器が活躍します。
第3楽章: ト長調 2/4拍子 Allegro con fuoco
華麗なロンド楽章で、A-B-A-B-Coda(A)の構造をとっています。副主題(B)は、後半で変形されて扱われており、主要主題部(A)に比べて長めです。

校訂

初版は1881年に出版されましたが、チャイコフスキーの弟子のピアニスト、アレクサンドル・ジロティが、1897年に作曲者の許可を得て一部手を加えた『改訂版』を出版しました。この改訂版では、第2楽章の冒頭がカットされ、ピアノパートにも手が加えられていますが、チャイコフスキーの意図を大きく逸脱していたとされています（彼が認めたのは第1楽章と第2楽章のほんの一部カットのみでした）。

エディト・ファルナディとヘルマン・シェルヘンのコンビによる演奏では、ジロティ版が使用されました。

1955年、アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルが自筆譜を基に原典版を復活させて以降、ジロティ版が使われることは少なくなりました。チャイコフスキー国際コンクールでは、ゴリデンヴェイゼルによる原典版の使用が義務付けられています。

脚注

注釈

出典

外部リンク

Piano Concerto No. 2の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
Piano Concerto No.2, Op.44 - 『Musopen』より
* Piano Concerto No.2 - 『Tchaikovsky Research』より

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