ピエール・カスト

ピエール・カスト（1920年9月22日 - 1984年10月20日）は、フランスの映画監督、脚本家であり、ヌーヴェルヴァーグの作家として知られています。彼の映画製作への情熱は、ソルボンヌ大学での文学研究から始まりました。1945年には「パリ大学シネクラブ」の共同設立者として映画界との関わりを深め、その後、アンリ・ラングロアが運営するシネマテーク・フランセーズで活動しました。

1948年、カストはジャン・コクトーを会長に、アンドレ・バザンらと共にシネクラブ「オブジェクティフ49」を設立しました。この活動を通じて、ルネ・クレマンやジャン・グレミヨンといった後の映画監督たちと親交を深めました。特に、グレミヨンの作品『白い足』では助監督を務め、その後、共同で短編映画『Les Charmes de l'existence（存在の魅力）』を制作し、ヴェネツィア国際映画祭で短編グランプリを受賞しました。この成功を足掛かりに、長編デビューまでの間に6本の短編映画を制作しました。

1951年には、映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の創刊に参加し、映画評論家としての活動も開始しました。1957年には『カイエ』誌上で、バザン、ジャック・ドニオル＝ヴァルクローズ、ロジェ・レーナルト、ジャック・リヴェット、エリック・ロメールらと共に「フランス映画についてのディスカッション」に参加しました。同年には、長編デビュー作となる『ポケットの恋』を発表しました。この作品には、ジャン・マレーやジャン＝クロード・ブリアリといった俳優に加え、アレクサンドル・アストリュック、クリスチャン＝ジャック、レオ・ジョアノン、ジャン＝ピエール・メルヴィルといった映画監督や、作家のボリス・ヴィアンまでがカメオ出演し、話題を呼びました。

1959年には、アルベルト・モラヴィアの小説を原作とした『Le Bel âge（美しい年齢）』をドニオル＝ヴァルクローズと共同で制作しました。この作品にも、ドニオル＝ヴァルクローズ、ヴィアン、ブリアリが出演しました。また、同年には『カイエ』誌上でのアラン・レネの映画『二十四時間の情事』に関する討論会に、ジャン・ドマルキ、ドニオル＝ヴァルクローズ、ジャン＝リュック・ゴダール、 リヴェット、ロメールらと共に参加しました。

カストは、1984年にローマでの映画撮影中に心臓病で亡くなりました。その死は、フランソワ・トリュフォーやパスカル・オジェの死と相まって、「フランス映画悲しみの一週間」として記憶されています。日本では、彼の監督作品が劇場公開される機会は少なかったため、ヌーヴェルヴァーグの作家として語られる機会は少ないですが、その才能は高く評価されています。

カストのフィルモグラフィーには、数多くの短編映画、長編映画、ドキュメンタリーが含まれています。特に、短編映画では、ジャン・グレミヨンとの共同監督作である『Les Charmes de l'existence』の他、『Les Femmes du Louvre』、『Arithmétique』、『L'Architecte maudit: Claude-Nicolas Ledoux』などがあります。長編映画としては、『ポケットの恋』、『Le Bel âge』、『Vacances portugaises』、『Le Grain de sable』などがあります。また、脚本家としても、多くの作品に携わっています。

カストは、助監督としても活躍しており、ジャン・グレミヨンの『白い足』、『L'Étrange Madame X』、ルネ・クレマンの『禁じられた遊び』、ジャン・ルノワールの『フレンチ・カンカン』など、名だたる監督の作品に参加しました。彼の作品は、その独特の視点と実験的な手法で、観客を魅了し続けています。

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