プトラナ台地

プトラナ台地：手つかずの自然が息づく世界遺産

プトラナ台地は、ロシア連邦の中央シベリア高原北西端に位置する広大な溶岩台地です。玄武岩質の地形で形成され、最高峰のカーメン山は約1,700メートルに達します。この台地は、シベリア・トラップと呼ばれる大規模な火山活動によって形成されたと考えられており、その歴史は2億5000万年前に遡ります。また、ロシアの地理的重心であるヴィヴィ湖もこの台地に存在します。

「険しい湖岸を持つ湖沼群の地方」

プトラナ台地には、数多くの湖が点在しており、その数は25,000以上にも及びます。これらの湖は、地元エヴェンキの言葉で「険しい湖岸を持つ湖沼群の地方」を意味する「プトラナ」という名前の由来にもなっています。湖の深さは180メートルから420メートルに達し、バイカル湖に次ぐロシア国内2番目の淡水貯蔵量を誇ります。氷河によって削られた渓谷には、ラマ湖やケタ湖などの深く細長い湖が形成され、フィヨルドのような独特の景観を作り出しています。

形成の歴史

プトラナ台地の形成は、2億5000万年前の地球史における大量絶滅期（P-T境界期）に、マントルプルームの上昇によって膨大なマグマが地表に噴出したことに始まります。その後、氷河による浸食作用が加わり、現在の特徴的な地形が形成されました。峡谷や滝、湖が織りなす景観は、自然の驚異を目の当たりにさせてくれます。

多様な生態系

プトラナ台地は、タイガ（針葉樹林）、ツンドラ、極地砂漠といった多様な植生が見られる地域です。植物では、カラマツを主体とするタイガが広がり、398種もの維管束植物が確認されています。また、地衣類も森林の地面を覆っています。

哺乳類は、シベリアビッグホーンなどの希少種を含む34種が確認されており、トナカイの移動経路にもなっています。鳥類は約140種が記録されており、豊かな生態系を育んでいます。

プトランスキー国家自然保護区

台地の中央部には、プトランスキー国家自然保護区が設定されており、18,872.51 km2もの広大な面積を誇ります。この保護区は、ロシアの自然保護区の中でも最大級のものであり、手つかずの自然が広大な面積にわたって保全されています。

世界遺産としての価値

プトラナ台地は、2010年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録名は「プトラナ台地」または「プトラナ高原」と訳されます。

世界遺産登録の基準としては、以下の点が評価されました。

基準(7): 渓谷、河川、滝、湖が織りなす絶景が、比類ない自然美を創出していること。
基準(9): 北極圏および亜北極の生態系と結びついた、重要な生態学的・生物学的プロセスを示す顕著な見本であること。

これらの理由から、プトラナ台地は地球上で最も貴重な自然遺産の一つとして認められています。

脅威と保全

プトラナ台地は、その秘境性から、人の手がほとんど入っていない地域です。しかし、近隣の閉鎖都市ノリリスクの鉱工業による大気汚染は、この地域における環境上の脅威となっています。世界遺産の緩衝地域でも汚染が確認されていますが、ノリリスク・ニッケル社は汚染物質の排出削減に向けた取り組みを表明しており、今後の環境改善が期待されています。

参考文献

IUCN (2010), Evaluations of Nominations on Natural and Mixed Properties (WHC-10/34.COM/INF.8B2)
World Heritage Centre (2010), Report of the Decisions Adopted By the world heritage committee At its 34th session (Brasilia, 2010) (WHC-10/34.COM/20)
UNEP-WCMC (2011), Putorana Plateau (World Heritage Information Sheet), UNEP-WCMC
フェン・モンテイン 著、八島玲子 訳「遥かなるシベリア - プトラン台地」『ナショナル ジオグラフィック日本版』
世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典〈下〉』
日本ユネスコ協会連盟『世界遺産年報2011』
* 古田陽久; 古田真美『世界遺産事典 - 2012改訂版』

プトラナ台地は、手つかずの自然が残る貴重な場所です。その美しい景観と豊かな生態系を守りながら、次世代に引き継いでいくことが重要です。

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