プラナコーンシーアユッタヤー郡

タイ中部、バンコクの北およそ50キロメートルに位置するプラナコーンシーアユッタヤー郡は、アユタヤ県の県庁所在地であり、一般にはアユタヤ郡としても知られています。

名称の由来と変遷

この地の名称については、インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場するラーマ王子の都アヨーディヤにちなんで「アユッタヤー」と名付けられたという説が広く知られています。インドネシアの古都ジョグジャカルタも同様の由来を持つとされます。

一方で、歴史学者の研究からは異なる見解も提示されています。著名な歴史家であるダムロン親王は、前期アユタヤ王朝時代には「アユッタヤー」ではなく「アヨータヤー」と呼ばれていたという仮説を提唱しました。この説は、その後の考古学的な発見や、王朝初期およびナーレースワン大王以降に記述されたパーリ語の歴史文献との比較検討により、決定的とは言えないものの、注目すべき学説の一つとなっています。この説を支持する歴史家の中には、プラヤー・ナコーンプララーム・ラームラチェーンらのグループや、ニティ・イアオシーウォンなどがおり、彼らは「アユッタヤー」という名称が、ナーレースワン大王がビルマからの独立を回復した際に、政治的な意図をもって新たに採用されたものだと論じています。

アユタヤ王朝が崩壊し、タイに近代的な地方行政制度が導入された後、この地は一時「ロープクルン」と呼ばれていました。その後、1897年に郡制が敷かれた際に郡として認められ、1917年には名称が「クルンカオ」（古都の意）に変更されました。そして、1957年に現在の正式名称である「プラナコーンシーアユッタヤー」となりました。タイでは通常、県庁所在地の郡には「アンプー・ムアン」（ムアン郡）という呼称が冠されますが、アユタヤの場合は例外的に「ムアン」の語を用いず、「アンプー・プラナコーンシーアユッタヤー」と呼ばれています。

歴史

プラナコーンシーアユッタヤーの歴史は古く、15世紀に成立したとされるパーリ語の北タイの歴史書『ムーラサーサナー』には、14世紀半ばにはスコータイの南に「アヨータヤー」という名の町が存在し、北タイの二人の高僧がそこで仏教を学んだという記録が見られます。これは、アユタヤ王朝が建国される以前から、この地に既に一定規模の仏教教育施設などが存在していた可能性を示唆しています。

その後、14世紀にアユタヤ王朝が建国されると、この地はその首都として大いに発展し、国内外からの交易船が行き交う国際都市へと成長しました。しかし、1767年にビルマのコンバウン王朝による攻撃を受け、首都は壊滅的な被害を受け、廃墟と化しました。この事態を受けて、後にタイ全土を再統一したタークシン王は、再建が困難となったアユタヤを放棄し、南のトンブリーに新たな王都を築きました。これにより、アユタヤは王朝の都としての歴史的な役割を終え、一時は歴史の表舞台から姿を消しました。

しかし、20世紀後半になると、アユタヤは再び脚光を浴びるようになります。近代化の波の中で工業都市としての発展が進み、特に日系企業をはじめとする多くの工場が進出しました。経済的な発展に伴い、かつてチャオプラヤー川に囲まれた「アユタヤ島」を中心としていた市街地は、川を越えて東側へと拡大しました。現在、旧市街地のエリアには、アユタヤ歴史公園を中心とする歴史的な遺跡群に加え、多くの教育機関や官公庁の建物が集まっています。

地理

郡の地理的な特徴は、チャオプラヤー・デルタの広大な平坦な湿地帯に位置することです。山や丘陵はほとんどなく、豊かな水資源と肥沃な土地は、タイの主要農産物である米の生産に非常に適しています。農業を支えるため、また水上交通網として、古くから多くの運河が掘削されてきました。現代においては、これらの地理的条件に加え、バンコクに近いという利便性から、前述のように多くの工業団地が造成され、日系企業を含む様々な工場の集積地となっています。

行政区分

プラナコーンシーアユッタヤー郡は、21の「タムボン」と呼ばれる行政村に分かれています。郡内には二つの主要な自治体、「テーサバーン」が設置されています。

一つは「テーサバーンナコーン・プラナコーンシーアユッタヤー」で、タムボン・プラトゥーチャイ、カマン、ホーラッタナチャイ、フワロー、ターワースックリーの全域と、タムボン・ハントラー、バーンコ、クローンスワンプルー、クローンサブワ、コリエンの一部を管轄しています。もう一つは「テーサバーンムアン・アヨータヤー」で、タムボン・パイリンの全域と、タムボン・ハントラー、クローンスワンプルーの一部を管轄しています。

以下は、郡を構成する21のタムボンの一覧です。

タムボン・プラトゥーチャイ
タムボン・カマン
タムボン・ホーラッタナチャイ
タムボン・フワロー
タムボン・ターワースックリー
タムボン・パイリン
タムボン・パーククラーン
タムボン・プーカオトーン
タムボン・サムパオロム
タムボン・スワンプリック
タムボン・クローンタキエン
タムボン・ワットトゥーム
タムボン・ハントラー
タムボン・ルムプリー
タムボン・バーンマイ
タムボン・バーンコ
タムボン・クローンスワンプルー
タムボン・クローンサブワ
タムボン・コリエン
タムボン・バーンポーム
* タムボン・バーンルム

教育

郡内には、アユタヤウィッタヤーライなどの教育機関が立地しています。

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