ベストラ (衛星)

ベストラ (Saturn XXXIX Bestla)

ベストラは、土星の第39番目の衛星であり、逆行軌道を持つ不規則衛星です。土星の周りを公転する衛星の中でも、特に特徴的なグループである北欧群に属しています。さらに、同じ北欧群に属するナルビとともに、ナルビ群というサブグループを形成していると考えられています。

発見の経緯

ベストラは、デビッド・C・ジューイット氏、スコット・S・シェパード氏、ブライアン・マースデン氏、ジャン・クレイナ氏らの観測チームによって発見されました。2004年12月13日から2005年3月5日にかけて行われた一連の観測で確認され、最初に観測されたのは2004年12月13日です。この観測には、すばる望遠鏡、W・M・ケック天文台、ジェミニ北望遠鏡といった、世界でも有数の大型望遠鏡が用いられました。

発見の報告は、2005年5月3日に小惑星センターのサーキュラーで、他の11個の土星の新衛星と合わせて発表されました。この際、ベストラには仮符号「S/2004 S 18」が与えられました。

名称の由来

2007年4月5日、ベストラは正式に命名されました。その名前は、北欧神話に登場する主神オーディンの母であり、霜の巨人の女性であるベストラに由来します。同時に、土星の第39衛星として「Saturn XXXIX」という確定番号が与えられました。

軌道と物理的特徴

ベストラは、土星からの平均距離約20,209,000kmを公転しています。その直径は約7kmと推定されており、比較的小さな天体です。また、軌道離心率が0.5を超える数少ない土星の衛星の一つであり、その軌道は非常に偏っています。

発見当初の観測データに基づく軌道要素の推定では、軌道離心率は0.77という非常に高い数値が算出されていました。これは、ベストラの軌道が非常に細長い楕円形であることを示しています。

多くの巨大ガス惑星の遠方に位置する不規則衛星と同様に、ベストラの軌道離心率や軌道傾斜角は、古在メカニズムという現象によって変動していると考えられています。古在メカニズムとは、重力相互作用によって天体の軌道要素が変化する現象であり、ベストラの軌道が長期的に見て安定しない可能性があることを示唆しています。

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