ベラサグン

ベラサグン：東西を結ぶ交易都市の興亡

ベラサグンは、10世紀から13世紀にかけて中央アジアに存在した都市であり、現在のキルギスのトクマク近郊に位置していました。この地は、カルルク、カラハン朝、そして西遼といった様々な勢力の中心地として繁栄し、東西の文化交流の拠点として重要な役割を果たしました。

都市の成立と繁栄

ベラサグンの起源は、7世紀から9世紀にかけて天山山脈北麓に栄えたソグド人の植民都市よりも新しいと考えられています。ウイグルの伝説では、始祖であるブク・ハンが征西の途上で建設したと伝えられています。唐代には突厥の拠点として繁栄し、地理学者・賈耽の『道里記』には、碎葉城（スイアブ）の東40里、熱海（イシク・クル湖）の西50里に位置すると記録されています。

10世紀の漢文資料には「裴羅将軍城」として登場し、11世紀にはテュルク語学者マフムード・カーシュガリーが著した『テュルク語集成』に、住民がソグド語とテュルク語を話し、「ベラサグン」と呼ばれる市街地と「クズオルド」という城砦が存在したことが記されています。11世紀中頃にカラハン朝が東西に分裂すると東部の首都となり、政治・経済の中心地として発展を遂げました。

西遼の首都として

1132年頃、耶律大石が西進して東カラハン朝を滅ぼし、ベラサグンを西遼の首都と定めました。この際、都市の名はクズオルド（グズオルド/フスオルド）と改称されました。ベラサグンは西遼の首都として、再び繁栄の時代を迎えます。しかし、13世紀にナイマン王国の王子クチュルクが西遼を乗っ取り、さらにモンゴル帝国の侵攻を受けると、都市は衰退の一途をたどります。

モンゴル帝国による征服後、ベラサグンは「グッズ・バリグ」と呼ばれ、モンゴル側からは「Gobalik（美しい都市）」とも呼ばれました。しかし、度重なる戦乱によって荒廃し、14世紀には歴史の表舞台から姿を消しました。

文化的な貢献

ベラサグンは、文化の面でも重要な役割を果たしました。テュルク文学の傑作『クタドゥグ・ビリグ』を著したユースフ・ハーッス・ハージブは、11世紀にベラサグンで生まれたと考えられています。また、市内にはネストリウス派キリスト教徒も多く居住し、彼らの墓地が現存しています。東西の文化が融合したベラサグンは、多様な文化が共存する国際都市でした。

ブラナ遺跡

現在のベラサグン村から西へ6km、トクマクの町外れに位置するブラナ地域は、かつてのベラサグンの西の端にあたります。ブラナ地域には、ブラナの塔や、突厥時代に建てられたバルバルと呼ばれる岩面陰刻の群などの遺跡が残されています。ブラナの塔は11世紀に建てられたミナレットで、地震による損傷を受けながらも、現在もその姿をとどめています。

ベラサグンは、東西を結ぶ交易都市として、また文化交流の拠点として、中央アジアの歴史において重要な役割を果たしました。その繁栄と衰退の歴史は、今日の私たちに多くのことを教えてくれます。

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