ベルトルト・ラウファー

ベルトルト・ラウファー：東洋研究の先駆者

ベルトルト・ラウファー（Berthold Laufer, 1874年10月11日 - 1934年9月13日）は、ドイツ生まれのアメリカの人類学者、東洋学者、そして博物館員として、20世紀初頭の東洋学研究に多大な貢献をしました。

生い立ちと学問

ケルンの中流ユダヤ人家庭に生まれたラウファーは、1893年にベルリン大学に入学し、東洋の言語と文化に関する幅広い知識を習得しました。オットー・フランケに仏教学を、ヴィルヘルム・グルーベに中国語を、ゲオルク・フォン・デア・ガーベレンツにマレー語を、ゲオルク・フートにチベット語を、ルドルフ・ランゲに日本語を学びました。彼はその才能を早くから開花させ、1895年には地元の新聞で日本の民話の翻訳を連載しています。

その後、ライプツィヒ大学に移り、アウグスト・コンラーディらの指導のもと、チベット語文献の批判的分析を行い、1897年に博士号を取得しました。彼の学問に対する情熱と卓越した能力は、早くから周囲の注目を集めました。

アメリカでの活動

1898年、ラウファーはフランツ・ボアズに招かれアメリカに移住し、ジェサップ探検隊に参加し、サハリンやアムール川河口一帯でアイヌ、ニヴフ、エヴェンキ、ナナイといった先住民族の調査を行いました。この探検は、彼のフィールドワーク研究の基礎を築き、その後の研究活動に大きな影響を与えました。

1901年から1904年にかけては、アメリカ自然史博物館の中国探検隊を率い、中国各地で貴重な文化財を収集しました。探検後、同博物館の民族学部門で職を得て、1905年にはコロンビア大学で人類学講師に就任しました。その後、1907年にシカゴのフィールド自然史博物館に移り、東アジア部門のキュレーターとして、博物館の東洋コレクションの充実に尽力しました。

1907年から1911年にかけて、ラウファーはチベット探検を試みましたが、入域許可を得られず断念しました。しかし、その代わりに中国各地で約8000点もの古物を収集し、博物館に納めました。1923年にも短期間中国を訪問し、約1800点の品々を入手しましたが、その多くは紫禁城から流出したものだったと伝えられています。1931年には、シカゴ大学から名誉法学博士号を授与されました。

研究内容と業績

ラウファーの研究は、中国とその周辺地域の文物に関するものが多く、当時のアメリカでは数少ない中国研究者として異彩を放っていました。450以上の著作を残し、その中でも『Chinese Clay Figures』や『Sino-Iranica』は、彼の代表的な業績として知られています。

Chinese Clay Figures: 漢代の陶俑（人形）を詳細に考察した研究。
Sino-Iranica: 漢籍をもとに、中国とイランの文化交流や関係について論じた研究。

これらの研究は、東西文化交流史における重要な貢献として高く評価されています。

突然の死

1934年9月13日、ラウファーは滞在していたホテルの8階から転落死しました。癌を患っていたことが原因で自殺したとされています。彼の死は、東洋学研究界にとって大きな損失でした。没後、彼の蔵書はフィールド自然史博物館に寄贈され、研究資料として活用されています。

ベルトルト・ラウファーは、その博識と研究への情熱によって、20世紀初頭の東洋学研究に多大な足跡を残しました。彼の業績は、今日でも多くの研究者に影響を与え続けています。

主要な著書

Jade: A Study in Chinese Archaeology and Religion (1912)
Notes on Turquois in the East (1913)
Chinese Clay Figures (1914)
The Diamond: A Study in Chinese and Hellenistic Folk-lore (1915)
The Beginnings of Porcelain in China (1917)
Sino-Iranica (1919)

これらの著作は、彼の研究成果を知る上で貴重な資料となっています。また、彼の手紙などは1970年代に編集出版され、研究者の間で広く読まれています。

武田雅哉、福屋正修、杉本剛らによって翻訳された日本語訳も出版されており、日本の読者にも彼の研究に触れる機会が与えられています。

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