ホシムクドリ

ホシムクドリ（星椋鳥）

ホシムクドリ（学名：Sturnus vulgaris）は、スズメ目ムクドリ科に分類される鳥の一種です。その名の通り、暗色の体に星のような白い斑点が散りばめられているのが特徴です。

分布

ホシムクドリは、ヨーロッパ東部からロシア西部、バイカル湖周辺にかけての広範囲な地域で繁殖します。冬になると、中央アジア、イラン、アラビア半島、アフリカの地中海沿岸地域へと渡り越冬します。

また、北アメリカ、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国などには、人為的に持ち込まれた個体が外来種として定着しています。

日本では、亜種 S. v. poltaratskyi が冬鳥として稀に渡来します。主に西南日本での記録が多く、単独での渡来がほとんどですが、島根県や鹿児島県では少数の群れが越冬することもあります。

亜種

ホシムクドリには、以下の亜種が確認されています。

S. vulgaris granti - アゾレス諸島
S. vulgaris vulgaris - カナリア諸島、アイスランドからウラル山脈、ウクライナ北部、ヨーロッパ南東部（基亜種）
S. vulgaris faroensis - フェロー諸島
S. vulgaris zetlandicus - シェトランド諸島
S. vulgaris tauricus - ウクライナ東・南部、クリミア半島、小アジア
S. vulgaris purpurascens - 南コーカサス西部からグルジア、アルメニア
S. vulgaris caucasicus - ヴォルガ川デルタ、コーカサス北部からカスピ海、イラン南部
S. vulgaris nobilior - アフガニスタン、ザカスピ州、ホラーサーン
S. vulgaris poltaratskyi - ウラル山脈東部からバイカル湖、カザフスタン、モンゴル西部（亜種ホシムクドリ）
S. vulgaris porphyronotus - ジュンガル盆地、天山山脈からパミール高原、サマルカンド
S. vulgaris humii - ヒマラヤ西部（カシミールからガルワール）
S. vulgaris minor - パキスタン西部地方（シンド州）

形態

全長は約21cmで、ムクドリよりもやや小型です。くちばしもやや細いのが特徴です。冬羽は光沢のある黒色で、白い斑点が散りばめられています。足は赤黒く、嘴は黒色です。夏羽になると、斑点は目立たなくなります。雌雄同色です。

生態

農耕地、市街地、開けた林などに生息します。日本では、ムクドリの群れに混じって見られることが多いです。

淡緑青色の卵を4-6個産み、抱卵期間は14-15日です。卵の大きさは2.7-3.15cm × 2.0-2.3cmで、日本では繁殖しません。

人間との関係

ホシムクドリは、原産地のヨーロッパや、移入先の北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどで、集団就眠による騒音や糞害、果樹や野菜への食害を引き起こす害鳥とされています。日本では稀な冬鳥であり、被害は少ないものの、害鳥として扱われることがあります。

多様な環境への適応能力が高く、移入先では生態的に優位な位置を占め、在来鳥類の繁殖を阻害するため、IUCN（国際自然保護連合）によって「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。

北アメリカでの個体数は約2億羽と推定されています。これらの個体は、1890-91年にアメリカ順化協会の設立者ユージン・シーフリンがヨーロッパから輸入し、ニューヨークのセントラルパークに放った約100羽の子孫であると言われています。シーフリンがホシムクドリを移入した理由として、シェイクスピアの戯曲に登場する全ての鳥をアメリカに定着させたかったから、という説がありますが、確実な証拠はなく都市伝説の域を出ません。

作曲家のモーツァルトは、ホシムクドリをペットとして飼っていました。彼の作曲したピアノ協奏曲第17番の第3楽章には、そのホシムクドリのさえずりを基にした旋律が主題として用いられているという逸話が残されています。

関連項目

* 日本の野鳥一覧

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