ホルミズド3世

ホルミズド3世：サーサーン朝の内乱に散った王

ホルミズド3世（在位：457年 - 459年）は、サーサーン朝の君主として、父ヤズデギルド2世の後を継ぎました。しかし、彼の治世は長くは続かず、兄弟間の争いによって幕を閉じました。

名前の由来

ホルミズドという名前は、ゾロアスター教の最高神であるアフラ・マズダーに由来します。アフラ・マズダーは、中期ペルシア語でホルミズド（Hormizd）、アヴェスター語でAhura Mazdaと呼ばれました。古代ペルシア語ではAuramazdāといい、ギリシア語ではHormisdasと音訳されました。

短命な治世

ホルミズド3世は、父ヤズデギルド2世の長男であり、後継者でした。父の治世中は、帝国の東方地域であるサカスタンを統治していました。サカスタンは首都クテシフォンから遠く離れており、アルダシール1世による征服以来、サーサーン朝の皇子が「サカンシャー（サカの王）」の称号を保持して統治してきました。

457年にヤズデギルド2世が死去すると、ホルミズド3世はシャフレ・レイで王位に就きました。しかし、彼の王位はすぐに脅かされます。弟のペーローズが、ミフラーン家の有力者ラハム・ミフラーンの支援を受けて帝国の北東方面へ逃亡し、自らの王位を主張するために軍隊を集め始めたのです。サーサーン朝は分裂し、王家内で争う状況に陥りました。

兄弟の母であるデナグは、首都クテシフォンから帝国の摂政として一時的に統治を行いました。東方地域に残る記録では、ペーローズは、不公正であるとみなされていたホルミズド3世よりも王位にふさわしいとされていました。ただし、『Codex Sprenger 30』という著者不明の記録文書には、ホルミズド3世を「勇敢でより優れている」と記述し、ペーローズを「より宗教に博識」であったと記されています。

また、ホルミズド3世とペーローズの従兄弟にあたるアルサケス朝カフカス・アルバニア王国の王、ヴァチェ2世は、ヤズデギルド2世によってゾロアスター教への改宗を余儀なくされていましたが、兄弟間の紛争に乗じて独立を宣言し、キリスト教へ再度改宗しました。

ペーローズは後にエフタルの領内へ向かい、エフタルの君主はペーローズの王位をめぐる争いに軍事的な支援をすることに同意しました。459年、エフタルとミフラーン家の協力のもと、ペーローズは軍隊を率いてホルミズド3世を打ち破りました。ホルミズド3世はペーローズによって赦されたという記録もありますが、ペーローズがホルミズド3世と家族三人を殺害したという記録もあり、前者の説は伝説である可能性が高いと考えられています。ペーローズ1世はカーレーン家の貴族をサカスタンの太守に任命し、サカスタンを完全にサーサーン朝の統治下に組み込みました。これにより、ホルミズド3世はサカンシャーの称号を名乗った最後の人物となりました。

ホルミズド3世の治世中に鋳造された硬貨は発見されていません。

家族

ホルミズド3世には、バレンドゥフトという娘がいました。バレンドゥフトは、イベリア王ヴァフタング1世の妻となり、後にイベリア王となるダチを産みました。

ホルミズド3世は、内乱の犠牲となり、短命に終わった王でしたが、その存在はサーサーン朝の歴史において重要な位置を占めています。

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