ポイント劇場

ポイント劇場（Point Theatre）は、1988年から2007年までアイルランドのダブリンに存在した、国内有数の規模を誇る多目的エンターテイメント会場です。リフィー川に面したダブリン・ドックランズ地区、ノース・ウォール埠頭に位置しており、その歴史は港の輸送を支える鉄道駅舎として、1878年に建設された建物にさかのぼります。このため、鉄道関係者からは「ポイント・ストア」とも呼ばれていました。

数年間利用されない時期を経て、1980年代末に地元の開発業者ハリー・クロスビー氏によって買い取られ、劇場としての改装が施されました。バルコニーやオフィス、舞台裏設備などが整備され、劇場のオープンに先立つ1988年には、U2がアルバム『魂の叫び』に収録された楽曲『ヴァン・ディマンズ・ランド』の一部をこの建物内で録音しています。同名の映画作品でも、この場所が使用されています。

1988年、ポイント劇場はヒューイ・ルイス＆ザ・ニュースの公演で幕を開けました。その後、ダブリンにおける主要なイベント会場として、多岐にわたる催しに利用されるようになります。コンサート会場としての役割はもちろん、スケートリンク、ボクシングやレスリングのアリーナ、さらには会議場、展示場、劇場、オペラハウス、サーカス会場としても機能しました。その柔軟な座席構成は劇場の大きな特徴の一つでした。

この劇場は国際的な注目を集めるイベントの舞台ともなりました。特に、1990年代にはユーロビジョン・ソング・コンテストの決勝が1994年、1995年、1997年と3度開催されており、これは同コンテストの決勝を最も多く開催した会場として知られています。1994年のユーロビジョンの中継では、幕間に出演した『リバーダンス』が世界初演を飾り、その後の成功のきっかけとなりました。また、1999年にはMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードも開催され、マライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストン、ブリトニー・スピアーズなど、当時の人気アーティストが集結し、華やかな授賞式となりました。

数多くの著名なアーティストがこの劇場のステージに立ちました。フランク・シナトラやカイリー・ミノーグ、ニール・ダイアモンド、シェールといったレジェンドから、U2、デフ・レパード、ニルヴァーナ、フェイス・ノー・モア、オアシス、ブリンク 182、パール・ジャムといったロック・バンド、そしてスパイス・ガールズやウエストライフ、ブリトニー・スピアーズといったポップ・スターまで、多様なジャンルの公演が行われました。特にウエストライフは2001年に13夜連続公演という記録を樹立しています。デフ・レパードは1992年のヨーロッパツアーで、アイルランド国外では初めてとなるセンターステージでのパフォーマンスを披露しました。ブリトニー・スピアーズのツアー「The Onyx Hotel Tour」は、ポイント劇場として史上最大の観客動員を記録した公演とされています。

また、ポイント劇場はライブ・レコーディングの場所としても活用されました。デヴィッド・グレイ、デヴィッド・ボウイ、R.E.M.、ブルース・スプリングスティーン、Bell X1といったアーティストが、ここでの公演を収めたライブアルバムや映像作品をリリースしています。

コンサートやエンターテイメントイベントだけでなく、スポーツ会場としても重要な役割を果たしました。ボクシングの試合が多く開催され、地元のスターであるバーナード・ダンをはじめ、レノックス・ルイスやナジーム・ハメドなども試合を行っています。また、プロレスリング団体WWEのイベントも度々開催されていました。

約20年間の運営期間中、ポイント劇場はその多機能性と多くの歴史的なイベント開催で広く知られましたが、一方で音響や観客席からの視界に関する批評や、トイレやカウンターでの混雑といった課題も指摘されていました。

劇場は200万人以上の来場者を迎えるなど成功を収めましたが、さらなる発展を目指し、2007年夏に大規模な改修のため閉館しました。翌2008年には「The O2」としてリニューアルオープンし、座席数は従来の約8,500席から14,000席へと大幅に増加しました。その後、2014年には運営会社の変更に伴い、「3アリーナ（3Arena）」と名称を改めていますが、現在もダブリンを代表する大型アリーナとして、様々なイベントの拠点であり続けています。

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