ポリュデウケース

ポリュデウケース：ギリシア神話の英雄、双子座の伝説

ポリュデウケース（古希: Πολυδεύκης, Polydeukēs, ラテン語: Pollux）は、ギリシア神話に登場する英雄であり、ボクシングの名手として知られています。長母音を省略してポリュデウケスとも表記されることがあります。父は神々の王ゼウス、母はスパルタ王妃レーダーという、神と人間の血を引く存在です。日本では、ラテン語形のポルクス、またはポルックスとしても知られています。

土星の第34衛星であるポリデウケスの名前は、この英雄に由来しています。

英雄としての活躍

アポロドーロスの記述によれば、ポリュデウケースはボクシングにおいて卓越した才能を持っていました。兄カストールと共に多くの武勲を立て、その名を歴史に刻んでいます。ポリュデウケースは不死の血を受け継いでいましたが、人間である兄カストールは戦で命を落としました。悲しみに暮れたポリュデウケースは、神々に慈悲を乞い、兄と共に天にいることを許されたと伝えられています。この逸話が、双子座の起源であるとされています。

双子としての複雑な関係

カストールとポリュデウケースは、共に母をレーダーとしますが、厳密には双子ではありません。カストールとクリュタイムネーストラーはスパルタ王テュンダレオースを父とする双子であり、ポリュデウケースとヘレネーはゼウスを父とする双子です。しかし、この説には異論もあり、ホメーロスの作品では二人は人間として描かれ、『イーリアス』においては既に亡くなった人物として言及されています。一方で、『ホメーロス風讃歌』では、二人は共にゼウスの子とされています。

ディオスクーロイ：ゼウスの息子たち

カストールとポリュデウケースの双子は、ディオスクーロイ（Dioskouroi）とも呼ばれます。これは、「ゼウスの息子たち」を意味する言葉です。ラテン語ではGemini（ゲミニー、ジェミニ）と呼ばれ、これは英語をはじめとする西欧の言語で双子を指す言葉として用いられることがあります。

アルゴナウタイの冒険

ポリュデウケースは、兄カストールと共に、イアーソーン率いるアルゴー船探検隊（アルゴナウタイ）の冒険に参加しました。ベブリュクスでは、旅人に拳闘試合を挑み、殺害を繰り返していた暴君アミュコスに挑戦し、見事に打ち倒しました。この航海中、嵐に見舞われた際には、オルペウスが琴を奏でて神々に祈りを捧げたところ、双子のそれぞれの頭上に星が輝き、嵐が鎮まったとされています。この出来事から、兄弟は航海の守護神として崇められるようになりました。特に、悪天候の際に船のマストの先端などにセントエルモの火と呼ばれる放電現象が同時に2つ現れると、嵐が静まると信じられ、これは双子が天から降りてきた姿だとされていました。

関連情報

ふたご座: ポリュデウケースとカストールが由来となった星座。
カストール: ポリュデウケースの双子の兄であり、共に英雄として知られています。
ポルックス (恒星): ふたご座β星で、ポリュデウケースの名前が付けられた恒星。
カストル (恒星): ふたご座α星で、カストールの名前が付けられた恒星。
* ポリデウケス (衛星): 土星の衛星で、ポリュデウケースにちなんで命名されました。


このように、ポリュデウケースはギリシア神話における重要な英雄の一人であり、その伝説は星座や衛星の名前にも受け継がれています。彼の武勇と兄弟愛の物語は、今日においても多くの人々に語り継がれています。

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