マルト神群

マルト神群について

マルト神群（マルトしんぐん）は、インド神話において暴風雨を象徴する神々の一団であり、別名ルドラ神群あるいはルドリヤ神群とも呼ばれています。この神々は美しい青年たちとして描かれ、インドラ神の従者として知られています。それぞれが兄弟であり、戦いを好む性格が強調されています。

親と数について

彼らの親に関する記述は異なる文献によって異なり、『リグ・ヴェーダ』ではルドラ神と牝牛プリシュニーの子供たちとしており、プラーナ文献ではカシュヤパ仙とディティの子供たちとして説明されています。また、マルト神群の数については、7、11、27、33、あるいは49といった複数の説が存在します。これにより、彼らの存在の神秘性がさらに高まります。

『リグ・ヴェーダ』における表現

『リグ・ヴェーダ』では、マルト神群に関する約40篇の讃歌が見られます。彼らは見た目において双生児のように似ており、金の武具や装飾品で華やかに装い、これが彼らの美しさを引き立てています。また、彼らは非常に力強く、山岳地帯に住み、武器や優れた馬を持っていることが特徴です。

金の車とローダシー

マルト神群が乗る金色の車はカモシカが引き、その車に同乗するのが彼らの愛人、ローダシーです。その車が走り出すと、その轍に沿って雨が降るとされています。この雨は彼らの力強さを示す現れであり、農業や生活にとって重要な自然現象をもたらします。

戦士としての彼ら

一方、マルト神群は恐るべき戦士としても知られており、その怒りは蛇のように鋭いと表現されています。彼らの影響力は自然界に強く、彼らの奔走によって木々が倒れ、山々が裂ける様子が描かれています。特に、インドラがヴリトラと戦う際には、マルト神群が彼に同行し、重要な役割を果たしています。

優れた援助者の側面

マルト神群は戦士としての顔だけではなく、友好的な一面も持っています。彼らは雨をもたらす以外にも、子孫や医薬、財宝、さらには詩的な霊感を与える存在とされており、これらの恩恵を通じて人々の生活に深く関与しています。また、音楽家や舞踏家としての顔もあり、芸術においても重要視されています。

宗教的、政治的儀礼の痕跡

近年の研究では、マルト神群がアーリヤ人の最古層に属する宗教的および政治的儀礼、特に男性結社の痕跡を残しているとの指摘もされています。これにより、彼らが古代の文化や社会においてどのような役割を果たしていたのかを考察することができます。

参考文献

• - 『リグ・ヴェーダ讃歌』辻直四郎訳、岩波書店
• - 菅沼晃 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版
• - 沖田瑞穂 著「マルト神群」、松村一男他 編『神の文化史事典』白水社
• - スティグ・ヴィカンデル『アーリヤの男性結社 - スティグ・ヴィカンデル論文集』言叢社

彼らに関する知識を深めることで、インド神話の複雑さや、神々がもたらす自然の力の理解を深化させることができるでしょう。

もう一度検索