マールワー

マールワーの地域と歴史

マールワー（Mālwā）は、インドの中部、特にマディヤ・プラデーシュ州の南西部に広がる地域です。この地方の具体的な範囲は、歴史を通じて変遷してきましたが、一般的にはグジャラートの東側、ラージプーターナーの南、ボーパールの西、そしてヴィンディヤ山脈とその北側のデカン高原の北端を指します。標高は約400メートルから600メートルの間で、地形は平坦で肥沃な農地が広がっています。

マールワーは、黒色綿花土に覆われており、ミレット（雑穀）、豆類、綿花、小麦などの主要な農産物を育てる土地として知られています。また、ガンジス川の中上流域とアラビア海、さらにはデカン高原を結ぶ重要な交通路が、この地域を通っており、特に中世の歴史においてはその交通の要所として重要な役割を果たしました。

歴史的背景

この地域の古い呼称はマーラヴァ（Mālava）であり、これはもともと地域に住んでいた部族の名前です。この名称は、古典文学『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』にも見られ、アレキサンダー大王の水軍に抵抗したパンジャブのMalloi族と関連付けられることもあります。マーラヴァは、ヴィクラマ暦（紀元前57年）の貨幣においても見つかり、古代の王朝における重要な存在であったことを示しています。現在のマールワーという名称が使われ始めたのは6世紀以降と考えられています。

玄奘（641年 - 664年）がインドを訪れた際、彼はこの地域を摩臘婆（マーラヴァー）と呼びました。これはおそらく先述の部族名に由来しています。10世紀ごろには、マーラヴァ、またはマールワーという呼称が確立されました。

王国の誕生と衰退

紀元前6世紀から紀元前5世紀にかけて、アヴァンティ王国がウッジャインを基盤として存在していました。アショーカ王が前270年頃にこの地の太守として知られ、続いてサータヴァーハナ朝の影響下に置かれることとなります。この地域は後にグプタ朝の重要な所領となり、特にチャンドラグプタ2世の治世下では天文学や占星術の発展が見られ、詩人カーリダーサがこの地から生まれたことでも知られています。

528年には、マールワー王ヤショーダルマンがエフタルを破ってカシミールに追放し、さらにプラティハーラ朝がこの地域を基に勢力を拡大しました。プラティハーラ朝がカナウジに遷都した際、この地域は北インドの政治的重要地域となりましたが、衰退後はパラマーラ朝が強力な王朝となりました。

13世紀以降は、イスラム王朝の進出が始まり、ウッジャインが攻撃されるなどして地域の景観が変わり、ムスリム王国が成立しました。ここはムガル帝国の領地となるも、18世紀から19世紀にかけてはマラーター諸族の抗争の地となり、最終的にはイギリスの植民地支配下に入ります。このように、マールワーは歴史的な背景が豊かで、多くの文化と影響が交錯した土地です。

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