カナウジ

カナウジ

カナウジ（ヒンディー語: कन्नौज, 英語: Kannauj）は、インド北部に位置する都市です。行政区分ではウッタル・プラデーシュ州に属しており、州の中央よりやや西寄り、工業都市カーンプルの北西約80キロメートル、聖なる河として知られるガンジス川の上流、その右岸に面しています。

古代より栄えた都

カナウジは、カーニャクブジャ（Kanyakubja）とも呼ばれ、古代から中世にかけて、北インドにおいて重要な政治・文化の中心として繁栄しました。その歴史は古く、多くの王朝がこの地を都と定めて広大な領域を支配しました。現在の人口は2001年時点で71,530人となっており、往時の規模ではありませんが、豊かな歴史を持つ都市として知られています。

名称の由来

カーニャクブジャという別名には、興味深い伝承が残されています。伝説によれば、ある仙人が、王の友人の娘たちに対して邪推から腹を立て、呪いをかけて彼女らをせむしにしてしまったとされています。この伝承に由来し、カーニャクブジャは「せむしの娘たちの町」という意味を持つと言われています。

歴史の変遷

カナウジの歴史は、北インドの王朝興亡と密接に関わっています。6世紀中頃に強大だったグプタ朝が衰退し、北インドが分裂した後、カナウジはマウカリ朝の都として一時的な繁栄を迎えました。しかし、7世紀初頭にマウカリ朝の王が後継者なく没すると、その義兄であったヴァルダナ朝のハルシャ・ヴァルダナはマウカリ朝を自らの王国に統合し、カナウジを新たな都としました。彼はここを拠点に周辺地域を制圧し、広大な領域を支配し、ヴァルダナ朝の最盛期を築きました。

同時代、中国からインドを訪れた高僧・玄奘は、その著書『大唐西域記』の中でカナウジを「曲女城」と呼び、その繁栄ぶりや当時の人々の正直で誇り高い気質、そして社会制度であるカーストについて詳細に記しています。

ヴァルダナ朝の衰退後、9世紀半ばから10世紀後半にかけては、プラティーハーラ朝がカナウジを都に定め、ガンジス川流域からインド西部にかけての広大な地域を支配しました。プラティーハーラ朝の王たちは文化を奨励し、ヒンドゥー教のみならず仏教も手厚く保護したため、カナウジはこの時代、北インドにおける文化の一大中心地として再び最盛期を迎えました。

しかし、このカナウジの支配権を巡っては、東方のパーラ朝（8世紀後半-12世紀前半）や南方のラーシュトラクータ朝（753年-973年）も獲得を目指したため、三つの王朝が互いに激しく争う「三朝抗争」と呼ばれる時代が長く続きました。

衰退、そして現在

11世紀に入ると、アフガニスタンを拠点とするイスラーム勢力の侵攻が始まり、カナウジはその影響を受け衰退に向かいます。1019年にはガズナ朝のマフムードに、1194年にはゴール朝によって相次いで襲撃・略奪され、往時の繁栄は失われていきました。13世紀以降はデリー・スルターン朝の支配下に入ったものの、かつての輝きを取り戻すことはありませんでした。

現在、市内には、往時の名残として、ジャイナ教の建築様式を取り入れた柱を持つモスクの一部や、ムスリムの領主マダン・シャーの墓廟建築などが残されており、この地の長い歴史を今に伝えています。

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