メトディウスの予言書

メトディウスの予言書

メトディウスの予言書は、7世紀に執筆されたとされる、キリスト教に基づく予言に関する作品です。本書は、キリスト教徒の多くが待望する終末の到来を描写しており、中世ヨーロッパにおいて非常に広く流布しました。著者は、4世紀のパタラの教父メトディウスであると伝えられていますが、現代の研究では偽書と見なされることが一般的です。そのため、この文書は「偽メトディウスの予言書」とも呼ばれています。

背景

本書は、イスラム勢力の進出によって近東のキリスト教国家が危機に直面している状況で書かれました。オリジナルはシリア語で記され、その目的はシリアのキリスト教徒を慰めることでした。書かれた後、すぐにギリシャ語に翻訳され、さらには8世紀にはラテン語へと翻訳されました。また、スラヴ語、ロシア語、アルメニア語、アラビア語など、様々な言語にも翻訳され、多くの人々に知られることとなります。正確な作成年は特定が難しいですが、歴史家たちは644年から691年の間での作成が推測されています。

内容と影響

メトディウスの予言書に描かれた終末のシナリオは、イスラムの脅威によってキリスト教国が苦しむ様子から始まります。しかし、「終末の皇帝」と呼ばれる救世主が現れ、平和をもたらすという希望の光も描かれています。その後、ゴグとマゴグが登場し、神の力によって滅ぼされますが、皇帝もまたゴルゴダの丘で死を迎える運命にあります。さらに、反キリストが君臨し、最終的にはキリストの再臨によって全てが清められるという、典型的なキリスト教的終末論が展開されるのです。

この作品は、キリスト教の終末説に関する多くの重要なテーマを提示しています。特に、反キリストの興隆とその最終的な没落、また世の終わりに先立つ数々の艱難が強調されます。加えて、『ティブルティナ・シビュラ』から着想を得た要素として「終末の皇帝」が挿入されています。このキャラクターは、中世の黙示的な文学において重要な役割を果たしており、メトディウスの予言書によって広く知られるようになりました。

そのため、本書は中世の多くの宗教的討論や思想に影響を与え、その後の黙示録的な文学や思想の重要な参考文献となりました。特に、終末への関心が高まっていた時期において、人々の不安や希望の象徴として、メトディウスの予言書はその存在感を強めていったのです。

脚注

この文書がもたらした影響については、様々な研究が行われています。関連項目としては、ティブルのシビュラ、全ての教皇に関する預言、そして「終末の皇帝」が挙げられます。

参考文献

• - ノーマン・コーン著 江河徹訳『千年王国の追求』紀伊国屋書店
• - ジョルジュ・ミノワ著、菅野賢治 平野隆文訳『未来の歴史―古代の預言から未来研究まで』筑摩書房
• - マージョリ・リーヴス著、大橋喜之訳『中世の預言とその影響』八坂書房

もう一度検索