モハーチの戦い (1687年)

第二次モハーチの戦い（1687年）

第二次モハーチの戦いは、1687年 8月12日に、オスマン帝国軍と神聖ローマ帝国軍の間で繰り広げられた戦いです。この戦いは、大トルコ戦争における重要な局面であり、オスマン帝国の衰退を加速させる一因となりました。

背景

1683年、オスマン帝国は第二次ウィーン包囲を敢行しましたが、ポーランド・リトアニア共和国と神聖ローマ帝国の連合軍によって撃退されました。この敗北を機に、戦局は神聖ローマ帝国側に有利に展開し始めます。ロレーヌ公シャルル5世率いる帝国軍は、オスマン帝国軍を次々と後退させ、エステルゴム、ヴァーチ、ペシュトなどの要塞を奪還しました。さらに、ブダを包囲して陥落させ、王領ハンガリーの旧首都を奪還するという大きな戦果を挙げました。オスマン帝国は和平を模索しましたが、神聖ローマ帝国はハンガリー全土の征服を目指し、和平を拒否しました。

1687年4月、神聖ローマ帝国はさらなる軍事行動を決定します。シャルル5世率いる本軍約4万はドナウ川に沿って進軍し、ドラヴァ川右岸のオシエクを目指しました。一方、バイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエル率いる別働隊2万はティサ川に沿って進軍し、ソルノク、ペトロヴァラディンへと進みました。両軍は7月中旬にドナウ川で合流し、オシエクへ進軍しました。

オスマン帝国側では、大宰相サル・スレイマン・パシャ率いる約6万の軍勢がオシエクのドラヴァ川渡河点に陣を構え、要塞化していました。神聖ローマ帝国軍が到着すると、両軍は川を挟んで対峙しましたが、帝国軍は7月末に河岸に橋頭堡を確保し、オスマン帝国軍を挑発しました。しかし、オスマン帝国軍は積極的な行動を避け、ドラヴァ川の堰や橋、河岸への砲撃にとどまりました。

シャルル5世は、要塞化された陣地から出てこないオスマン帝国軍への攻撃は困難と判断し、橋頭堡を放棄しました。この行動は部下や皇帝レオポルト1世から批判されました。一方、オスマン帝国の大宰相は帝国軍が戦意を喪失したと考え、追撃を命じました。その結果、オスマン帝国軍は帝国軍をモハーチまで追い返すことに成功しました。帝国軍は、近くにオスマン帝国の要塞化された陣地があることに気づかず、シャルル5世もオスマン帝国軍が近くにいるとは予想していませんでした。

戦闘の経過

8月12日朝、シャルル5世はシクローシュが戦場として適していると判断し、そこへの移動を開始しました。これにより、帝国軍の右翼は西へ移動し始め、密林地帯に突入しました。大宰相は好機と見て、全軍で帝国軍の左翼へ攻撃を仕掛けました。バイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエル率いる帝国軍の左翼はまだ行軍を開始しておらず、右翼に続いて西へ移動する予定でした。オスマン帝国軍はナジハルサニ付近で帝国軍を捕捉し、スィパーヒー騎兵隊が側面を攻撃しようとしました。マクシミリアン2世は直ちに危機を察知し、シャルル5世に救援を要請しました。帝国軍は防御陣形を敷き、エネア・シルヴィオ・ピッコローミニ将軍率いる騎兵連隊が反撃に成功し、スィパーヒー騎兵の進軍を食い止めました。

大宰相は予想外の抵抗に驚き、攻撃を停止させました。砲撃は継続されましたが、歩兵と騎兵は待機を命じられ、歩兵は要塞の後ろで守備に就くよう指示されました。オスマン帝国軍の動きが鈍くなったことで、帝国軍の右翼は元の位置に戻る時間を得ました。シャルル5世は守備に徹することも考えましたが、マクシミリアン2世とバーデン＝バーデン辺境伯ルートヴィヒ・ヴィルヘルムはシャルル5世を説得し、大規模な反撃を促しました。

15時、反撃の準備が整いました。大宰相もイェニチェリの指揮官テキルダール・ムスタファ・パシャと共に攻撃を再開しました。イェニチェリが正面から攻撃する一方、スィパーヒーは再び側面攻撃を試みました。ルートヴィヒ・ヴィルヘルムは歩兵中隊で攻撃を阻止し、続いてオスマン帝国軍が構築中の防御陣形を攻撃しました。ジャン＝ルイ・ド・ビュッシー＝ラビュタンとプリンツ・オイゲン率いる部隊が先頭に立ち、陣形に突入しました。オスマン帝国軍の騎兵は、斜面で馬が進むのが困難だったため下馬せざるを得ず、攻撃と防御の両方が失敗に終わりました。最終的に、オスマン帝国軍は撤退し、帝国軍の大勝利に終わりました。

戦闘の結果とその後

帝国軍の損害はわずか600人でしたが、オスマン帝国軍は約1万人の死者を出し、大砲のほとんど（約66門）と多くの装備を失いました。大宰相の豪華なテントや160本のオスマン帝国の軍旗が戦利品として帝国軍の手に渡りました。マクシミリアン2世が得た戦利品は、2百万金ドゥカート以上の価値があったと記録されています。

この敗北により、オスマン帝国は深刻な危機に陥りました。オスマン帝国軍では反乱が発生し、大宰相サル・スレイマン・パシャは軍に殺害されることを恐れて逃亡しました。イスタンブールでは、メフメト4世が廃位され、スレイマン2世が新たなスルタンとして即位しました。

オスマン帝国軍の解体により、神聖ローマ帝国軍は広大な領土を征服し、スラヴォニアやトランシルヴァニアの大半を支配下に置きました。1687年12月には、ヨーゼフ大公が初代世襲ハンガリー王として戴冠し、その後は神聖ローマ皇帝がハンガリー王を兼任することが定められました。オスマン帝国の行政機能は麻痺し、帝国軍はバルカン半島深くまで侵攻しました。

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