モーリッツ・フォン・デア・プファルツ
モーリッツ・フォン・デア・プファルツ（ドイツ語: Moritz von der Pfalz）は、英語名ではモーリス・オブ・ザ・ライン（英語: Maurice of the Rhine）としても知られる人物です。1620年12月17日に生まれ、1652年9月、おそらく13日から16日の間にその消息を絶ちました。彼はドイツのプファルツ＝ジンメルン家の公子であり、清教徒革命期のイングランド内戦において、王党派（騎士党）の重要な軍人として活動しました。
父はプファルツ選帝侯フリードリヒ5世、母はイングランド王・スコットランド王ジェームズ1世の娘であるエリザベス・ステュアートです。この母方の血筋を通じて、後のイングランド王チャールズ2世やジェームズ2世とは母方の従弟の関係にあり、またイギリス王兼ハノーファー選帝侯となるジョージ1世は彼の甥に当たります。
モーリッツは、プファルツ選帝侯フリードリヒ5世と妃エリザベス・ステュアートの間の第五子、四男として、キュストリン（現在のポーランド領コストシン・ナド・オドロン）で誕生しました。父が1618年にボヘミアの対立王に選ばれたことが引き金となり、プファルツ＝ジンメルン家は三十年戦争の渦中に巻き込まれ、故郷を離れて各地を転々とする亡命生活を送ることになります。若い頃には、一時期スウェーデン海軍に所属していた経験もあります。
イングランドへの渡航は、1636年に兄のルパート（ループレヒト）と共に実現しています。そして、1642年に第一次イングランド内戦が勃発すると、同年8月初めに再び兄ルパートと共にオランダからイングランドへ渡り、母方の叔父にあたるイングランド王チャールズ1世を支持する王党派に合流しました。彼は王党派の中でも熱心な一員として、陸上および海上での多岐にわたる戦闘に参加することになります。しかし、彼の長兄カール1世は、モーリッツとルパートが王党派に加わったことを強く非難しました。
エッジヒルの戦いやマーストン・ムーアの戦いといった主要な会戦にも従軍しました。特にマーストン・ムーアでは、国王軍が議会派（円頂党）の軍勢によって壊滅的な損害を被ったにも関わらず、彼は兄ルパートと共に奇跡的に無傷で戦場から生還するという幸運に恵まれました。
1643年には、王党派のラルフ・ホプトンが南西部のコーンウォールからデヴォンへと東進を開始した際、国王の命を受けてハートフォード侯ウィリアム・シーモアと共にオックスフォードから派遣され、6月にホプトンの軍勢と合流しました。7月には一時的に救援を求めるためハートフォード侯と共にオックスフォードへ戻り、ウィルモット男爵ヘンリー・ウィルモットやジョン・バイロンが率いる援軍を伴って再びホプトンと合流。7月13日のラウンドウェイ・ダウンの戦いでは、ウィリアム・ウォラーやアーサー・ヘジルリッジらの議会派軍に対して勝利を収めました。しかし、モーリッツが指揮する騎兵隊は勇猛さで知られる一方で、略奪行為で悪名が高く、これはホプトンにとって大きな悩みの種でした。
その後、兄ルパートとも合流し、ブリストルの包囲・陥落を成功させた後、彼は西部の指揮官を務めることになります。ドーセットを平定したカーナーヴォン伯爵ロバート・ドーマーの下へ派遣されましたが、彼の部隊が現地で略奪を行ったためにカーナーヴォン伯との間に不和が生じ、国王に訴えられる事態となりました。しかし、モーリッツが罪に問われることはなく、カーナーヴォン伯に代わってデヴォンの主要港湾都市の攻略を任されました（カーナーヴォン伯はグロスターを包囲中の国王軍に合流）。9月4日にはエクセターを占領し、プリマス攻略には失敗したものの、10月6日にはダートマスも降伏させるなど、重要な港湾拠点を次々と手中に収めていきました。1644年2月1日、チャールズ1世がモントローズ侯爵ジェイムズ・グラハムに宛てた任命状の中で、モーリッツは一時的にスコットランドにおける王党派の総大将に指名されますが（モントローズ侯は副将）、これは2月13日付の国王の手紙で取り消されました。
しかし、1644年3月中旬から始まったライム・レジスの包囲戦では、ロバート・ブレイクらの議会派守備隊に阻まれ、海上からのウォリック伯ロバート・リッチ率いる海軍による補給を阻止することもできず、6月15日に包囲を解いてエクセターへの撤退を余儀なくされました。同年10月27日の第二次ニューベリーの戦いでは、スピーンの村と丘の守備を任されていましたが、ウィリアム・バルフォアとフィリップ・スキッポンが率いる議会軍の襲撃を受け、スピーンを奪われてしまいます。戦闘自体は議会軍の連携不足により引き分けに終わりましたが、翌1645年2月には徴兵の中心地として利用していたシュルーズベリーを、彼の不在中に議会軍に奪われてしまいました。さらに3月には救援のために向かったチェシャーで略奪行為を働き、苦情が報告される事態となっています。これ以後、彼は兄ルパートと共に遊撃部隊を率い、ウェールズ地方の守備に尽力しました。
やがて、兄ルパートがチャールズ1世およびその側近であるディグビー男爵ジョージ・ディグビーと対立を深めると、モーリッツは兄の側に立って国王に抗議しました。このため、ネイズビーの戦いで敗北した後、国王はモーリッツが守備していたウスターを避けてニューアークへ向かうことになります。10月には兄ルパートと共にニューアークで国王に直接会って抗議しましたが、その訴えが受け入れられなかったためニューアークを去りました。そして、1646年6月に王党派最後の拠点であるオックスフォードが議会派に降伏したのに伴い、議会派からイングランドからの国外退去を命じられました。
1649年、チャールズ1世が処刑された後、モーリッツは兄ルパートと共に王党派によって海軍中将に任命されます。彼に任されたのは小規模な艦隊であり、その主な任務は成立したばかりのイングランド共和国と大陸諸国との通商を妨害することでした。これは実質的に海賊行為に等しいものであり、この小艦隊は1651年に議会派の提督ロバート・ブレイクによって壊滅させられてしまいます。その後、彼は兄と共に本格的に海賊行為を働きながら各地を転々とする生活を送るようになりました。
1652年9月中旬頃、モーリッツが率いる海賊船団は、西インド諸島沖で激しい暴風雨に見舞われました。この嵐の中で、モーリッツはそのまま行方不明となり、その後の消息を絶っています。彼の最期については別の伝説も存在します。それによれば、ペルーとメキシコの間に莫大な財宝が眠るという伝説を信じ、その発掘を目指してフランスの港を出発したものの、すぐにベルベル人海賊に襲われ、アルジェに連行された後、アフリカの奥地へと連れ去られたとも語られています。
父はプファルツ選帝侯フリードリヒ5世、母はイングランド王・スコットランド王ジェームズ1世の娘であるエリザベス・ステュアートです。この母方の血筋を通じて、後のイングランド王チャールズ2世やジェームズ2世とは母方の従弟の関係にあり、またイギリス王兼ハノーファー選帝侯となるジョージ1世は彼の甥に当たります。
モーリッツは、プファルツ選帝侯フリードリヒ5世と妃エリザベス・ステュアートの間の第五子、四男として、キュストリン（現在のポーランド領コストシン・ナド・オドロン）で誕生しました。父が1618年にボヘミアの対立王に選ばれたことが引き金となり、プファルツ＝ジンメルン家は三十年戦争の渦中に巻き込まれ、故郷を離れて各地を転々とする亡命生活を送ることになります。若い頃には、一時期スウェーデン海軍に所属していた経験もあります。
イングランドへの渡航は、1636年に兄のルパート（ループレヒト）と共に実現しています。そして、1642年に第一次イングランド内戦が勃発すると、同年8月初めに再び兄ルパートと共にオランダからイングランドへ渡り、母方の叔父にあたるイングランド王チャールズ1世を支持する王党派に合流しました。彼は王党派の中でも熱心な一員として、陸上および海上での多岐にわたる戦闘に参加することになります。しかし、彼の長兄カール1世は、モーリッツとルパートが王党派に加わったことを強く非難しました。
エッジヒルの戦いやマーストン・ムーアの戦いといった主要な会戦にも従軍しました。特にマーストン・ムーアでは、国王軍が議会派（円頂党）の軍勢によって壊滅的な損害を被ったにも関わらず、彼は兄ルパートと共に奇跡的に無傷で戦場から生還するという幸運に恵まれました。
1643年には、王党派のラルフ・ホプトンが南西部のコーンウォールからデヴォンへと東進を開始した際、国王の命を受けてハートフォード侯ウィリアム・シーモアと共にオックスフォードから派遣され、6月にホプトンの軍勢と合流しました。7月には一時的に救援を求めるためハートフォード侯と共にオックスフォードへ戻り、ウィルモット男爵ヘンリー・ウィルモットやジョン・バイロンが率いる援軍を伴って再びホプトンと合流。7月13日のラウンドウェイ・ダウンの戦いでは、ウィリアム・ウォラーやアーサー・ヘジルリッジらの議会派軍に対して勝利を収めました。しかし、モーリッツが指揮する騎兵隊は勇猛さで知られる一方で、略奪行為で悪名が高く、これはホプトンにとって大きな悩みの種でした。
その後、兄ルパートとも合流し、ブリストルの包囲・陥落を成功させた後、彼は西部の指揮官を務めることになります。ドーセットを平定したカーナーヴォン伯爵ロバート・ドーマーの下へ派遣されましたが、彼の部隊が現地で略奪を行ったためにカーナーヴォン伯との間に不和が生じ、国王に訴えられる事態となりました。しかし、モーリッツが罪に問われることはなく、カーナーヴォン伯に代わってデヴォンの主要港湾都市の攻略を任されました（カーナーヴォン伯はグロスターを包囲中の国王軍に合流）。9月4日にはエクセターを占領し、プリマス攻略には失敗したものの、10月6日にはダートマスも降伏させるなど、重要な港湾拠点を次々と手中に収めていきました。1644年2月1日、チャールズ1世がモントローズ侯爵ジェイムズ・グラハムに宛てた任命状の中で、モーリッツは一時的にスコットランドにおける王党派の総大将に指名されますが（モントローズ侯は副将）、これは2月13日付の国王の手紙で取り消されました。
しかし、1644年3月中旬から始まったライム・レジスの包囲戦では、ロバート・ブレイクらの議会派守備隊に阻まれ、海上からのウォリック伯ロバート・リッチ率いる海軍による補給を阻止することもできず、6月15日に包囲を解いてエクセターへの撤退を余儀なくされました。同年10月27日の第二次ニューベリーの戦いでは、スピーンの村と丘の守備を任されていましたが、ウィリアム・バルフォアとフィリップ・スキッポンが率いる議会軍の襲撃を受け、スピーンを奪われてしまいます。戦闘自体は議会軍の連携不足により引き分けに終わりましたが、翌1645年2月には徴兵の中心地として利用していたシュルーズベリーを、彼の不在中に議会軍に奪われてしまいました。さらに3月には救援のために向かったチェシャーで略奪行為を働き、苦情が報告される事態となっています。これ以後、彼は兄ルパートと共に遊撃部隊を率い、ウェールズ地方の守備に尽力しました。
やがて、兄ルパートがチャールズ1世およびその側近であるディグビー男爵ジョージ・ディグビーと対立を深めると、モーリッツは兄の側に立って国王に抗議しました。このため、ネイズビーの戦いで敗北した後、国王はモーリッツが守備していたウスターを避けてニューアークへ向かうことになります。10月には兄ルパートと共にニューアークで国王に直接会って抗議しましたが、その訴えが受け入れられなかったためニューアークを去りました。そして、1646年6月に王党派最後の拠点であるオックスフォードが議会派に降伏したのに伴い、議会派からイングランドからの国外退去を命じられました。
1649年、チャールズ1世が処刑された後、モーリッツは兄ルパートと共に王党派によって海軍中将に任命されます。彼に任されたのは小規模な艦隊であり、その主な任務は成立したばかりのイングランド共和国と大陸諸国との通商を妨害することでした。これは実質的に海賊行為に等しいものであり、この小艦隊は1651年に議会派の提督ロバート・ブレイクによって壊滅させられてしまいます。その後、彼は兄と共に本格的に海賊行為を働きながら各地を転々とする生活を送るようになりました。
1652年9月中旬頃、モーリッツが率いる海賊船団は、西インド諸島沖で激しい暴風雨に見舞われました。この嵐の中で、モーリッツはそのまま行方不明となり、その後の消息を絶っています。彼の最期については別の伝説も存在します。それによれば、ペルーとメキシコの間に莫大な財宝が眠るという伝説を信じ、その発掘を目指してフランスの港を出発したものの、すぐにベルベル人海賊に襲われ、アルジェに連行された後、アフリカの奥地へと連れ去られたとも語られています。
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