ラーダ・カリーナ

ラーダ・カリーナ：ロシアが生んだ小型車の歴史

ラーダ・カリーナは、ロシアのアフトヴァース社が2004年から2018年にかけて製造・販売した小型乗用車です。欧州のBセグメントに分類され、ロシア国内だけでなく、多くの西欧市場にも輸出されました。フィンランドでは、カリーナがフィンランド語で擬音語として用いられるため、販売名称を『ラーダ・119』として展開していました。

開発から生産へ：幾多の試行錯誤

カリーナの開発は1993年にスタート。VAZ-2110/2111/2112の後継車として、そして同時期に開発されていたオフロード車VAZ-2123のデザイン思想を反映したモデルとして構想されました。1998年には『カリーナ』と命名され、1999年には5ドアハッチバック、2000年には4ドアセダン、2001年には5ドアステーションワゴンのプロトタイプが発表されています。初期のプロトタイプは、革新的なバイパス技術を用いて製造され、量産モデルとは異なるヘッドランプが特徴でした。量産開始前に外装デザインが改良され、特にフロントグリルは「笑うイルカ」と呼ばれたデザインから、より落ち着いた雰囲気へと変更されました。2013年のフルモデルチェンジでは、初期プロトタイプに近いデザインが採用されました。このモデルチェンジでは初めてコンピュータ支援設計が導入され、ボディ寸法を最大限に活用した広々とした室内空間を実現しました。従来モデルであるVAZ-2110/2111/2112とは異なり、カリーナは曲線を基調としたデザインと高い全高が特徴です。

モデルバリエーションとパワートレイン

カリーナは、以下の3つのボディタイプで展開されました。

ラーダ・1117：5ドアステーションワゴン（2007年/2008年より生産開始）
ラーダ・1118：4ドアセダン（2005年/2006年より量産開始）
ラーダ・1119：5ドアハッチバック（2006年より量産開始）

搭載エンジンは、以下の3種類のガソリンエンジンが用意されました。

1.4 SOHC 16V 直列4気筒 1390 cc 67 kW (91 ps)
1.6 SOHC 8V 直列4気筒 1596 cc 60 kW (81 ps)
1.6 SOHC 16V 直列4気筒 1596 cc 72 kW (98 ps)

西欧市場向けには、運転席・助手席エアバッグ、ABS、電動パワーステアリング、エアコン、可倒式リアシートなどを標準装備。価格は約7,000～8,000ユーロと設定されていました。OEM供給車種であるmi-DOには4速ATが設定されており、カリーナにもAT車が選択可能でした。ただし、ESCやサイドエアバッグはオプションとして提供されませんでした。また、スポーティーモデルとしてカリーナGSスポーツも存在しました。2007年にはフランクフルトモーターショーで、スーパー1600仕様のコンセプトカー「カリーナスーパー1600」も公開されています。さらに、ロシア版『トップ・ギア』においては、その手頃な価格から定番車として使用されていました。

車名の由来：ロシアの自然へのオマージュ

カリーナという車名は、ロシア語で落葉低木であるガマズミを意味する「Калина（Kalina）」に由来しています。この植物は、ロシアの文化や文学において、美しさや故郷を象徴する存在として広く知られています。

トヨタ・カリーナとの違い

トヨタ自動車がかつて製造していた「カリーナ」との混同を避けるため、注意が必要です。トヨタのカリーナは「CARINA」と表記されるのに対し、ラーダ・カリーナは「Kalina」と表記されます。両者は全く異なる車種であることを理解しておくことが重要です。

まとめ：ロシアの国民車としての存在感

ラーダ・カリーナは、ロシアの国民車として長年にわたって愛され、親しまれてきたモデルです。手頃な価格と実用性を兼ね備えたその性能、そしてロシアの文化に根ざした車名など、多くの魅力を備えていました。その歴史は、ロシアの自動車産業の歴史の一端を垣間見せてくれると言えるでしょう。

もう一度検索