リセ・コンドルセ

フランスの首都パリ、9区に位置するリセ・コンドルセ（Lycée Condorcet）は、パリに現存するリセの中でも特に長い歴史を持つ学府の一つです。サン＝ラザール駅と賑やかなオスマン大通りに挟まれたアーブル通り8番地にその門を構え、古くから多くの人材を輩出してきました。

沿革

創立から第二帝政期末まで

リセ・コンドルセの歴史は、1781年に建築家アレクサンドル＝テオドール・ブロンニャールによって建てられた、かつてのカプサン派修道院の回廊建築を利用して始まりました。ショッセ＝ダンタン地区のサント＝クロワ通りに設立されたこの学校は、1803年9月10日付の勅令を経て、1804年に正式に開校しました。これにより、リセ・コンドルセはパリを代表する、最も歴史のある4つのリセの一つとしての地位を確立しました。

19世紀の大半を通じて、このリセはセーヌ川右岸における「偉大なリベラル校」として知られました。比較的柔軟な教育システムを採用していたことから、進歩的な思想を持つブルジョワ階級の子弟たちから特に選ばれる学舎となりました。

しかし、学校の敷地は幾度かの変遷を経験します。1844年には、サン・ラザール通りの拡張工事に伴い、校庭の大部分を手放さざるを得なくなりました。同年、新駅へのアクセスを容易にするためにアーブル通りが開通。リセは敷地の一部を失う代償として、この新しい通り沿いへの拡張が認められました。約20年後に、この拡張された敷地に新たな校舎が建てられ、これが現在の学校の主要な入り口となっています。また、1853年には、リセの敷地に壮大な大聖堂を建設するという計画が持ち上がり、リセ自体が取り壊しの危機に瀕したこともありました。

19世紀において、当局はリセ周辺の環境保全に特別な配慮を払いました。危険視される要素や騒音源となりうる産業活動、学生寮、そして飲酒を伴う施設などから学校環境を隔絶しようと試みたのです。歴史家マルク・ル・クールが指摘するように、特に第二帝政期には、近隣のパッサージュ・デュ・アーヴルは「堕落した場所」と見なされており、学生たちが「菓子類、わいせつな絵、自由奔放な小説や政治的なパンフレット」を手にすることが可能であったとされています。

第三共和制期

第三共和制が始まり、1880年度を迎える頃には、多くの新入生が入学したため、リセは教室不足に直面しました。このため、ローマ通りに別棟を借りて初等クラスを開設したり、校内の検閲官の部屋や校長の執務室を教室に改修したりする対応が取られました。アーブル通りの本館は「グラン・コンドルセ」と呼ばれ、アムステルダム通りにあった小規模な別館は「プチ・コンドルセ」と対比されました。

この時期には学生の活動も活発化し、1894年には総合型スポーツクラブが設立されています。また、1904年には「タラマス事件」として知られる出来事が発生しました。リセの歴史教師が授業中にジャンヌ・ダルクを侮辱したとして訴えられたこの事件は、当時の教育界に波紋を広げました。

第三共和制下において、リセ・コンドルセはユダヤ人ブルジョワジーの社会統合において重要な役割を担いました。他の学校と比較して、アンリ・ベルクソン、ジョルジュ・マンデル、マルセル・プルーストといったユダヤ系の生徒の割合が高かったことが特筆されます。これは、リセが新しく都市化された地域に位置し、裕福なユダヤ系の人々が地方からパリ、特にこの地域や隣接するパリ西部の地区に移り住んでいたことに起因します。歴史家ピエール・アルベルティーニによれば、コンドルセは無宗派であったため、生徒たちは宗教に関わらず平等に扱われ、教育方法も「比較的オープンでリベラル」でした。ユダヤ系の生徒たちは多くのプロテスタントの生徒たちと共に学び、皆が共和主義を熱心に支持する姿勢を示していました。1930年代になると、中欧や東欧から多くの労働者階級のユダヤ人が移住してきたことで、学校の社会構成に変化が見られ始めました。

第二次世界大戦期

第二次世界大戦の勃発とその混乱は、リセ・コンドルセにも大きな影響を与えました。1939年から1940年の学年度中に、戦争の回避や安全を求めて、リセの生徒の約半数がパリ郊外や地方へと疎開しました。

ドイツ占領下の1940年から1941年にかけて、ヴィシー政権によるユダヤ人の地位に関する法律が施行され、リセのユダヤ人教師のうち5名が職を解かれました。その中にはジャン＝ミシェル・アトランやアンリ・ドレフュス＝ル・フォワイエが含まれていました。特にドレフュス＝ル・フォワイエの後任としてジャン＝ポール・サルトルが赴任したことは、後に激しい論争を引き起こしました。ユダヤ人の教え子たちとの連帯を示した歴史教師シャルル＝アンドレ・ジュリアンもいました。

リセ・コンドルセにおけるユダヤ人生徒の数は、戦争の進行とともに壊滅的な減少をたどります。1938年から1939年の学年度には、全生徒約2,600人（グラン・コンドルセに1,400人、プチ・コンドルセに1,200人）のうち、少なくとも10～12％がユダヤ系でした。しかし、1943年4月までにはその数は90％も減少し、1942年6月7日から義務付けられた黄色い星を着用していた生徒はわずか23人でした。すでに1940年の段階で、政府による最初のユダヤ人排斥措置や家族の地方への流出により、ユダヤ人生徒数は40％減少していました。例えば、後の作曲家セルジュ・ゲンスブールは1941年にリセを去り、1944年に戻ってきています。学年度の終了から1942年の新学期にかけて、ナチスとヴィシー政府によるユダヤ人に対する一斉検挙や強制送還が激化する中で、学校に残っていたユダヤ人生徒の半数以上は学校に戻ることができませんでした。ベルトラン・ヘルツはトゥールーズに逃れましたが、2年後にそこで逮捕され、ブーヘンヴァルト強制収容所に送られました。逮捕されたコンドルセのユダヤ人生徒14名のうち、彼とロジェ・ペレルマンを含む3名だけが生き延びることができました。死亡または消息を絶った外国籍のユダヤ人生徒の数は、フランス国籍の生徒の数を上回っていました。ピエール・アルベルティーニは、公式なユダヤ人の学校からの排除措置は取られなかったものの、実質的な消滅が既に起こっていたと指摘しています。しかし、皮肉なことに、学校に通っていたユダヤ人生徒は潜伏している元生徒とは異なり、公然と移動する必要があったため、逮捕されやすい立場にありました。1943年12月にはコンドルセに残っていたユダヤ人生徒はわずか9人、1944年6月には4人となりました。戦争末期には、ドイツ国防軍がノルマンディー戦線へ向かう兵士たちのための宿泊施設として学校を利用する計画も立てられました。

戦後、リセの面会室には戦争で犠牲となった人々への追悼碑が設置されました。しかし、犠牲となった全てのユダヤ人卒業生の名前、特にヴィクトル・バッシュやジョルジュ・マンデルといった著名な人物の名前さえも、全ては記載されていないという課題が残されました。

女子の入学と男女共学化

リセ・コンドルセにおける男女共学化は、段階的に進められました。1924年には、グランゼコール準備クラスに女子学生を受け入れた最初の男子校の一つとなりました。そして、エコール・ポリテクニークが初めて女性に門戸を開いた1972年には、リセ・コンドルセの学生であったアンヌ・ショピネが同校の競争入試で1位となる快挙を達成しました。これにより、男女共学への流れが加速していきました。

1968年5月

1968年5月にフランスを揺るがした学生運動の期間中、リセ・コンドルセは学生たちによって非公式に「リセ・カール・マルクス」と呼ばれていました。当初、学生たちは学校名を革命家にちなんで変更したいと考えていましたが、ニコラ・ド・コンドルセ自身がフランス革命期の重要な人物であり哲学者、科学者であったことを知ると、学校名は元の「リセ・コンドルセ」に戻されました。

学校名の変遷

リセ・コンドルセは、その長い歴史の中でいくつかの名称を冠してきました。

ショゼ・ダンタンのリセ（1804年）
リセ・インペリアル・ボナパルト（1805年～1814年）
コレージュ・ロワイヤル・ド・ブルボン（1815年7月～1848年2月）
リセ・シャプタル、リセ・フルクロワ（1848年の一時期）
リセ・インペリアル・ボナパルト（1848年～1870年）
リセ・コンドルセ（1870年10月22日～1874年、ニコラ・ド・コンドルセにちなむ）
リセ・フォンターヌ（1874年5月1日～1883年1月27日、ルイ・ド・フォンターヌにちなむ）
リセ・コンドルセ（1883年～現在）

主な教師

多くの著名な思想家、文学者、学者、芸術家が教鞭を執りました。（一部抜粋）

哲学: アラン、ジャン・ボーフレ、ジャン＝マリー・ギュイヨー、ジャン・ジョレス、ジュール・ラシュリエ、モーリス・メルロー＝ポンティ、ジャン＝ポール・サルトル
歴史・地理: フェルナン・ブローデル、ジョルジュ・ユイスマン
英語: ステファヌ・マラルメ、マルセル・パニョル
ドイツ語: ジョルジュ・セデス
体育: アラン・ミムン

主な出身者

リセ・コンドルセは、フランス国内外の多分野にわたり、多くの著名な卒業生を輩出しています。（一部抜粋）

政治・官僚: バオ・ダイ（ベトナム皇帝）、マリー・フランソワ・サディ・カルノー（フランス大統領）、ジャン・カジミール＝ペリエ（フランス大統領）、ポール・デシャネル（フランス大統領）、ジョルジュ・オスマン（セーヌ県知事、パリ改造責任者）、アンドレ・タルデュー（フランス首相）、アン・ショピネット（エンジニア、官僚、女性初のエコール・ポリテクニーク入学者の一人）
実業: アンドレ・シトロエン（シトロエン創設者）、マルセル・ダッソー（ダッソー創設者）、ルイ・ルノー（ルノー創設者）
学術・文学・芸術: ウージェーヌ・シュー（医師、小説家）、マルセル・プルースト（小説家）、ポール・ヴェルレーヌ（詩人）、アンリ・ベルクソン（哲学者）、ジャン＝マルタン・シャルコー（神経学者）、ランツァ・デル・ヴァスト（詩人、哲学者）、レイモン・アロン（社会学者）、セルジュ・ゲンスブール（作曲家）、アルフレッド・ド・ヴィニー（詩人、劇作家）、ポール・ヴァレリー（詩人、小説家）、テオドール・ド・バンヴィル（詩人）、ボリス・ヴィアン（作家、音楽家）、ジュール・ロマン（作家）、ルイ・ド・フュネス（俳優）、ジャン・コクトー（芸術家）、アンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレック（画家）

リセ・コンドルセは、その長い歴史の中で、社会の変化、戦争の悲劇、そして教育の進歩を映し出す鏡のような存在であり続けています。自由でリベラルな精神を重んじる校風は、多くの個性的な人材を育み、フランスの知的な歴史に深く刻まれています。

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