リゾートあすなろ

リゾートあすなろは、かつて東日本旅客鉄道（JR東日本）が保有し、「のってたのしい列車」の一つとして運行していた鉄道車両の愛称です。本稿では、この特徴的な観光列車の概要、使用された車両、そして様々な運行系統やその沿革について詳しく解説します。

概要

この列車の運行は、2010年 12月4日の東北新幹線全線開業に合わせて始まりました。新青森駅で新幹線と接続し、青森県内の主要観光地へのアクセスを担う観光列車としての役割を期待されました。

愛称の「あすなろ」は、青森県の県木である青森ヒバの別名に由来し、「明日への希望」という前向きな願いが込められています。車両のカラーリングは、青森の情景を表現する3色で構成されていました。夏祭りの熱気を思わせる「赤」、下北半島に広がる菜の花畑の「黄」、そして豊かな森をイメージした「緑」が配され、青森らしさを鮮やかに彩っていました。

当初は複数の系統が設定されていましたが、次第に運行系統は整理され、末期は新青森駅を経由しない「リゾートあすなろ下北」（八戸駅 - 大湊駅間）が主体の運用となっていました。本系列は2両編成2本の計4両が製造されましたが、後継となる新たな観光列車「ひなび（陽旅）」および「SATONO」への改造が決定したことに伴い、2023年8月20日をもって惜しまれつつ運行を終了しました。

使用車両

リゾートあすなろとして運用されたのは、JR東日本が保有するHB-E300系気動車です。この車両はハイブリッドシステムを搭載しており、環境負荷の低減に配慮されています。

2両編成が2本製造され、当初は青森車両センターに配置されていましたが、2016年3月の北海道新幹線開業に伴う組織改編により、八戸運輸区へと転属しました。

車内は、観光列車らしく快適性を重視した造りとなっており、座席は2+2配列の回転式リクライニングシートが並んでいます。天井には観光案内用のモニターが設置され、運行区間の見どころなどが紹介されていました。また、運転台の後方には展望スペースが設けられており、前面展望を楽しむことができました。

運用

リゾートあすなろは主に臨時快速列車として運行されました。運行開始当初は複数の系統が存在し、発着駅によって列車名が異なっていました。

リゾートあすなろ下北: 八戸駅 - 大湊駅間を結んでいました。末期はほぼこの系統のみの運用でした。
リゾートあすなろ津軽蟹夫/竜飛: 弘前駅または新青森駅を発着し、青森駅、蟹田駅を経由して三厩駅まで運行されていました。蟹田駅発着時は「津軽蟹夫」、三厩駅発着時は「竜飛」を名乗りましたが、2018年度以降は設定がありませんでした。
リゾートあすなろ青森/八戸: 八戸駅と新青森駅の間を結んでいましたが、2017年度以降は設定がありませんでした。

これらの系統の他にも、かつて「Kenji」が担っていた釜石線の臨時列車「さんりくトレイン宮古」などで運用されることもありました。

青い森鉄道線内（青森駅 - 八戸駅間）のみを利用する場合でも、新青森駅発着となる指定席券の購入が必要となるなど、特有の利用条件もありました。

主な停車駅は以下の通りでした。

リゾートあすなろ下北: 八戸駅 - 三沢駅 - 野辺地駅 - 陸奥横浜駅 - 下北駅 - 大湊駅
リゾートあすなろ竜飛（末期）: 弘前駅 - 新青森駅 - 青森駅 - 蟹田駅 - 津軽二股駅 - 今別駅 - 三厩駅

沿革

リゾートあすなろの歴史は以下の通りです。

2010年 11月23日: 運行開始に先立ち、青森駅 - 上北町駅間で試乗会を実施。
2010年 12月4日: 東北新幹線全線開業と同時に「リゾートあすなろ津軽」「リゾートあすなろ下北」として運行開始。
2011年11月4日: 「リゾートあすなろ下北3号」が青い森鉄道線内で車両故障により逸走する事故が発生。
2012年10月: 「リゾートあすなろ津軽」の名称が蟹田駅の観光駅長にちなみ「リゾートあすなろ津軽蟹夫」に変更。
2015年7月: 「リゾートあすなろ下北」の一部列車を八戸駅発着に変更し、これに伴い「リゾートあすなろ八戸」を新設。また「リゾートあすなろ竜飛」が弘前駅発着となる。
2016年4月: 「リゾートあすなろ竜飛」が新青森駅発着に変更され、「リゾートあすなろ八戸」が増発。「リゾートあすなろ青森」を新設。
2017年度: この年度以降、「リゾートあすなろ青森」「リゾートあすなろ八戸」の設定がなくなる。
2018年度: この年度以降、「リゾートあすなろ竜飛」（津軽蟹夫含む）の設定がなくなる。
2020年4月: 新型コロナウイルス感染拡大防止のため長期運休。
2022年11月: 本系列を改造した新しい観光列車「ひなび（陽旅）」および「SATONO」の運行予定が発表される。
2023年8月20日: 後継車両への改造に伴い、この日をもってリゾートあすなろとしての運行を終了。

「のってたのしい列車」として親しまれたリゾートあすなろは、その役目を終えましたが、その車両は形を変えて新たな旅の舞台で活躍を始めています。

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