リヴィング・カラー

アメリカ、ニューヨークで1983年に誕生したハードロック・バンド、リヴィング・カラー。ギタリストのヴァーノン・リードを中心に結成された彼らは、同時期に活躍したジェーンズ・アディクションやプライマス、フェイス・ノー・モアといったオルタナティブなバンド群と並び称される存在でした。また、リードが主宰した「ブラック・ロック・コーリューション」の活動を通して、他の黒人ロックアーティストを広く紹介する窓口としての役割も果たしました。

来歴

バンドの原型は、1983年にドラマーのロナルド・シャノン・ジャクソンが率いる「デコーディング・ソサイエティー」のメンバーであったヴァーノン・リードによって始動しました。当初はD.K.ダイソン（ボーカル）、ジェリ・アレン（キーボード）、JTルイス（ドラム）といった顔ぶれで、現在のサウンドとは異なる方向性を模索していました。

バンドの重要な転機が訪れたのは1986年頃。当時俳優として活動しており、オリヴァー・ストーン監督の映画『プラトーン』の撮影でフィリピンに滞在していたコリー・グローヴァーと運命的な出会いを果たします。同年、リードの妹のホームパーティーで披露されたグローヴァーの歌声に感銘を受けたリードは、彼をバンドに誘います。ここにウィル・カルホーン（ドラム）とマズ・スキリングス（ベース）が加わり、現在の核となるラインナップが確立されました。

ニューヨークのライブハウスCBGBでの精力的なギグが、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの目に留まります。ヴァーノン・リードがジャガーのソロアルバム『プリミティヴ・クール』のレコーディングに参加していた縁もあり、ジャガーのプロデュースで3曲のデモテープを制作。これが決め手となり、大手のエピック・レコードとの契約を勝ち取ります。日本の音楽ファンには、1987年頃にテレビ朝日の番組『ベストヒットUSA』でDJの小林克也が彼らを紹介したことでも知られています。

1988年にリリースされたデビューアルバム『VIVID』は、彼らの名を世界に知らしめることとなります。全米ビルボード・アルバム・チャートで最高6位という快挙を達成し、シングルカットされた「Cult of Personality」は1989年のグラミー賞ベスト・ハードロック・パフォーマンス賞を受賞しました。この楽曲の印象的なリフを中心としたサウンドは、当時「黒いレッド・ツェッペリン」と評されるほど注目を集めました。アルバムリリースパーティが開かれたニューヨークのクラブ「ザ・リッツ」は超満員となり、バンドの人気は確固たるものとなります。さらに、ローリング・ストーンズの「スティール・ホイールズ・ツアー」では、ガンズ・アンド・ローゼスと共にオープニングアクトを務め、MTVでの露出も相まって、彼らの人気は不動のものとなりました。彼らは、トーキング・ヘッズのカバー「Memories Can't Wait」や、社会的な不正を訴える「Open Letter (To A Landord)」、人種差別をテーマにした「Funny Vibe」ではパブリック・エナミーのチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴをゲストに迎えるなど、その音楽性とメッセージ性を明確に示していきました。ライブではトレイシー・チャップマンやレッド・ツェッペリンの楽曲をカバーすることも度々ありました。

続く1990年のセカンドアルバム『タイムズ・アップ』では、ヴァーノン・リードがキング・クリムゾンのアルバムのようなコンセプト性を追求したいと語っていた通り、ファーストアルバムのようなストレートさとはやや異なりますが、コンセプトアルバムとしての完成度を高めました。特に、クイーン・ラティファが黒人の歴史を語り、メイシオ・パーカーやリトル・リチャードが参加してロックン・ロールのルーツが黒人にあることを歌い上げる「エルヴィスは死んだ (Elvis is Dead)」などが収録され、バンドの社会的な姿勢は揺るぎませんでした。このアルバムもビルボード・アルバム・チャートで最高13位を記録し、グラミー賞でも再びベスト・ハードロック・パフォーマンス賞を獲得しています。

1992年には、音楽性の違いからベーシストのマズ・スキリングスが脱退。後任として、マーク・スチュワートやタックヘッドでの活動で知られるダグ・ウィンビッシュが加入します。ウィンビッシュ加入後、バンドのサウンドは次第に実験的な様相を深め、様々な要素がミックスされるようになります。1993年のアルバム『ステイン』は、当時のグランジシーンの流れを受け、より暗くヘヴィなスラッシュメタルやインダストリアル的なアプローチを取り入れ、批評家から高い評価を得ました。このアルバムもビルボード・アルバム・チャートで最高26位を記録しています。この頃には、On-Uサウンドのエイドリアン・シャーウッドやスキップ・マクドナルド、KMFDMのサシャ・コニエツコといったアーティストによるリミックスが制作されるなど、さらなる実験性が追求されました。

日本へも過去3度ほど来日公演を行いましたが、1995年に一度活動を休止し、メンバーそれぞれがソロ活動に専念します。2000年に単発の再結成ギグを行い、2003年からは本格的に活動を再開しました。

再始動後も精力的に活動を続け、2007年には音楽ゲーム『ギターヒーロー3 レジェンドオブロック』のために「Cult of Personality」を再録音しました。また、2013年現在（情報時点）、プロレスラーのCMパンクが入場曲として同曲を使用していることも、バンドが世代を超えて影響を与え続けている証と言えるでしょう。

メンバー

現メンバー

ヴァーノン・リード (Vernon Reid) - ギター
コリー・グローヴァー (Corey Glover) - ボーカル
ウィル・カルホーン (Will Calhoun) - ドラム
ダグ・ウィンビッシュ (Doug Wimbish) - ベース

旧メンバー

マズ・スキリングス (Muzz Skillings) - ベース

ディスコグラフィ (一部)

スタジオ・アルバム

『VIVID』 - Vivid (1988年)
『タイムズ・アップ』 - Time's Up (1990年)
『ステイン』 - Stain (1993年)
『コライドスコープ』 - Collideøscope (2004年)
The Chair in the Doorway (2009年)
『シェイド』 - Shade (2017年)

EP

『ビスケッツ』 - Buiscuits (1991年)

ライブ・アルバム

『ドレッド』 - Dread (1994年)
『ライヴ・フロム CBGB'S』 - Live from CBGB's (2005年)

コンピレーション・アルバム

『プライド』 - Pride (1995年)
Everything Is Possible: The Very Best Of Living Colour (2006年)

映像作品

Primer (1989年)
『タイム・トンネル』 - Time tunnel (1990年)
『パリ・コンサート』 - The Paris Concert (2008年)

参加サウンドトラック

『セイ・エニシング』 - Say Anything... (1989年) - "Cult of Personality"
『ジャッジメント・ナイト』 - Judgement Night (1993年) - Living Colour & Run-D.M.C. "Me, Myself & My Microphone"
『トゥルーライズ』 - True Lies (1994年) - "Sunshine of Your Love"

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