ルキウス・コルネリウス・バルブス (紀元前40年の補充執政官)

ルキウス・コルネリウス・バルブス

ルキウス・コルネリウス・バルブス（生没年不明）は、紀元前1世紀の共和政ローマで活躍した政治家・軍人です。ヒスパニア出身でありながら、ローマ市民権を得て異例の出世を遂げた人物として知られています。紀元前40年には補充執政官（コンスル・スフェクト）を務めました。

生い立ちと出自

バルブスは、ヒスパニア・ウルテリオルのガデス（現在のスペイン・カディス）で生まれました。彼の家系はフェニキアに起源を持つ裕福な一族でした。彼はクィントゥス・セルトリウスとの戦争における貢献が認められ、ポンペイウスからローマ市民権を授与されました。紀元前72年頃、ポンペイウスから与えられたローマ市民権を正式に認める法律が制定された際、グナエウス・コルネリウス・レントゥルス・クロディアヌスの氏族名を自身の氏族名としたと考えられています。また、コグノーメン（第三名、家族名）として、元々の名前と類似した「バルブス」（Balbus、吃音の意味を持つアティリウス氏族が使用していた名前）を採用したようです。

経歴

青年期には、ポンペイウスの義兄であるガイウス・メンミウスの下で、マリウス派のセルトリウスとの戦いに参加しました。セルトリウスの反乱が鎮圧されるまで、ポンペイウス軍の一員として戦い抜きました。紀元前72年のゲッリウス・コルネリウス法（lex Cornelia Gellia）により、バルブスは父、弟プブリウス、甥ルキウスと共に正式なローマ市民権を獲得しました。その後、ルキウス・コルネリウス・レントゥルス・クルス（紀元前49年の執政官）と親交を深め、このことがローマ政界への進出のきっかけになったと歴史家は見ています。バルブスはプレブス（平民）でありながら、エクィテス（騎士階級）に所属していました。

紀元前69年から紀元前68年にかけて、カエサルがクァエストル（財務官）としてヒスパニアに赴任した際、バルブスとカエサルは友人関係を築きました。紀元前62年から紀元前60年には、カエサルの下でヒスパニア・ウルテリオルのプラエフェクトゥス・ファブルム（工兵隊長）を務めました。カエサルはバルブスを高く評価し、彼の故郷であるガデスに様々な便宜を図りました。

紀元前60年、カエサルがクラッスス、ポンペイウスと第一回三頭政治を結成すると、バルブスはカエサルの代理として、キケロに三頭政治を支持するよう交渉しました。紀元前59年には、ポンペイウスの支持者であるテオファネスという人物の養子となりました。同年、アシア属州総督ルキウス・ウァレリウス・フラックスが権力乱用罪（crimen de repetundis）で告訴された際には、バルブスはその告発人の一人となりました。以前にもバルブスはフラックスに対して民事訴訟を起こしていましたが、後にフラックスはバルブスを相続人に指名しました。

カエサルがガリア征服を開始すると、バルブスは再びプラエフェクトゥス・ファブルムとしてこれに従軍しました。紀元前58年にキケロがローマから追放された際には、バルブスはキケロの親族を支援しました。カエサルとポンペイウス双方と親交があったバルブスは、莫大な財産を手に入れることができましたが、それが妬みの対象ともなりました。紀元前56年には、出身地ガデスの住民から市民権乱用で告訴されましたが、ポンペイウス、クラッスス、キケロの弁護によって無罪となりました。

紀元前56年以降、バルブスはカエサルの側近として活躍しました。紀元前49年にカエサルとポンペイウスの内戦が勃発した後も、バルブスはローマに残り、カエサルのために外交活動を続けました。内戦とそれに続くカエサルのディクタトル・ペルペトゥオ（終身独裁官）時代、バルブスは騎士階級であり元老院議員ではなかったにもかかわらず、カエサルの代理人として事実上のローマの支配者として振る舞いました。この間、カエサルはほとんど外征でローマを離れていましたが、バルブスとは暗号を使って文通をしていたと言われています。紀元前48年から紀元前47年にかけて、ブルンディシウムに滞在していたキケロは、バルブスを通してローマへの帰還の可能性について交渉し、彼の許可を得ました。キケロはバルブスに、他のポンペイウス派の人々も帰還させるように働きかけ続けました。カエサルの代理として、バルブスは主に財政問題を扱い、キケロとのやり取りの仲介役を務めました。紀元前44年の初め、バルブスはカエサルに、元老院が派遣した特使に対して座ったまま面会するよう進言し、特使たちの間に深刻な不満を生じさせました。

カエサルの暗殺後、バルブスはカエサル派の会議で、暗殺者たちへの即時復讐を主張しましたが、マルクス・アントニウスはバルブスの意見を支持しませんでした。カエサルの後継者に指名されたオクタウィアヌスがイタリアに到着すると、バルブスは彼と会い、オクタウィアヌスに味方しました。間もなく、両者は共にローマへ行き、積極的に政治活動に参加し、アウルス・ヒルティウスに『ガリア戦記』の続編を書かせました。

紀元前41年から紀元前40年にかけて、バルブスは法務官代理権限で、オクタウィアヌスが管轄するヒスパニアの総督を務めました。紀元前40年には、ルキウス・アントニウス（マルクス・アントニウスの弟）の行動を監視するために、正式に彼の部下となりました。同年、バルブスは補充執政官に選出されました。これは、イタリア出身者以外が執政官になるという、当時としては異例の人事でした。フィリッピの戦いで三頭政治側が勝利すると、同じく補充執政官となったプブリウス・カニディウス・クラッススと共に、これを記念して感謝祭を実施しました。その後、バルブスはカプアのパトロネス（保護者）となりました。

参考文献

マルクス・トゥッリウス・キケロ『バルブス弁護』
Münzer F. Cornelius 69 // Paulys Realencyclopädie der classischen Altertumswissenschaft . - 1900.

関連項目

* 共和政ローマ執政官一覧

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